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探し物

「・・・。」


 自衛官は地図を持たぬまま、覚えていた 乾いた田畑 の感触を頼りに人里付近であると判断して、とりあえず人里を目指すことにした。


 ここは博霊神社付近にある、誰もが恐る獣道。

妖怪の襲われるリスクが非常に高い危険なところであるが、この男は全く知らない。


 仮に知っていたとしても、怯える余裕すらなかった。

あの夜、乾いていたがまだ使われている田畑である。


 さらに今朝見た人里は、人が住んでいそうだ。

ここから脱出する前に、里の被害状況も確認し、すぐに救援を要請しなくてはいけない。

だが、この地域は、自治体の災害マップには載っていない。


 お役所にはもう少し、こう言った山奥の地域も確認すべきだ。

見た感じは被害は薄そうだが、一自衛官として確認は怠れなかった。


 もしも、家屋倒壊が起こっていたら?の事態だって想定できる。

携行していたエンピでは掘り起こすのは足りない。 

そのために災害救命キットが必要だ、医療品一式から油圧カッターまで入っている


「待ちなさいよ!」


 何かと思って振り返ると、霊夢がは何かを叫びながらこっちに来る。

きっと何かがあったのだろうか?


 忘れ物がないかを確認したが、忘れうるものはベルトと水筒・エンピポーチのみだが、全て見についている。


「どうした!?」


 いそがなくてはいけないのは山々だが、この様子だとどうしても言いたいことが有りそうだ。


自衛官は追いついた霊夢に、何があったのだ?と聞いてみた。


「忘れ物でも?」


「違うわよ!」


 何やら感情的になって言い返す。

しばらく身をかがめて、息を切らしていた。


 やっと深呼吸して落ち着くと


「この先は危険よ。ここ幻想郷では妖怪と戦う力がなくては生き延びれないわ。

特にあなたみたいな外来人は・・・ね。」



 は?


「幻想郷?」


 妖怪の方は昨夜襲ってきた謎の敵のことか?と検討付いたが、幻想郷という言葉の意味が掴めなかった。


「ええ、結界で封じられた妖怪たちの楽園。自力では出られないし、入ることもできない。」


「・・・意味がわからんぞ?日本のどこかではないのか?」


 彼女の主張を聞く限り、まるでここが日本ではないどこかの異世界みたいな言い方をしている。


「結界で閉ざされた場所、というべきね。

まぁ、外の世界からくり抜く形で作られたから、ニホンという国の一部なのかもね。」


「・・・はぁ。」


 霊夢の言葉を真実として受け取るには、全くを持って根拠が無い。


「・・・わかった。とりあえず被害状況を確認しなくてはならん。とりあえず、危険なら安全なところまで行こう。」


 あまりにもしつこいので、とりあえず口先では信じることにして霊夢と共に移動することにした。


自然にできた道だな。

まるで木が開けてくれたように開いている道はやけに広く、車両一両くらいなら通れそうだ。


・・・しかし、インフラ整備されていないのが驚きだ。

日本は列島改造ブームを経て、最低でも全国どこcにでも道路が敷かれているはずだ。

人がいないのならまだしも、旅館近くの場所でかつ人が住んでいるのにも関わらず、歩道すらされていないのは、不思議である。・・・まあ、その分空気がいいし、自然の形が残されているのには越したことはない。

 気になるのは、この地域が地図に乗っていないこと。

山の頂上に神社があることも|(近辺では)そうだし、あの集落・・・いや、見下ろせるところ全体だな。


 観光やマスコミの的にされそうな赤い洋館まであるのに・・・。一体お役所はなにをやってんだ?

目立つ地域なのに。 


 しばらく西に進んでいくと、自然の道を抜け、一面が田畑で覆い尽くされていた。


「・・・人がいる!」


「なによ、当たり前じゃない。」


 いや、ここで 人がいる という発言をしたのは、やはり国民がいるということである。

使われている乾いた田畑の件があるので、確かに人がいると思っていはいたが田畑や人の数だと、大規模集落に違いない。


 しかも、服装は江戸時代から止まったような感じで、重機が使われていない。

これはどういうことだ?


「んだ?あんなどこに変な服着たやつおるべ。」


「妖怪巫女と一緒にいるがな。」


「あーあ・・・。」


「~~~~・・・。」


 はっきりと聞こえて来るものから全くわからない訛りだらけの独り言が聞こえてくる。

こういった農村は苦手である。


 よく見ると、既に田畑には水が入っていっているので、もう一晩くるのが遅かったら確実に溺死するところだった。


・・・!


 うっかりしてた。


 あまりにものどか|(?)な風景だったので、自分が災害派遣でここにいることを忘れていた。

手をメガホンのようにして叫んだ。


「陸上自衛隊です!!!!

一日前に起こった地震による負傷者、並びに倒壊家屋はありませんかぁあ!!!!????」


 送まで聞こえるような大声で、呼びかける。

今の自分では無力だが、呼びかけとりあえず被害状況を把握しておくことにした。


 水筒があるし、最悪布を借りて包帯替わりに使うことができる。


「はぁ!?」


 近くにいた霊夢は、目を丸め半歩引いていた。

間違いなく引かれていただろう。


 農夫の視線がかなり冷たい。


 しかし、こんなことなど迅速な展開を売りにする自衛隊に遅れを出してしまったことに対する、責任に比べればはるかに軽いものだった。


「もう一度言います!!!地震による負傷者、並びに家屋倒か・・・!!!!!」


 ごん!!!!!


 激しくも鈍い音がした瞬間、突然中帽を通り越して脳全体が揺れた。

脳が揺れると同時に、視界も揺れ動く。


「うるさいっ!!!」


 どこかで聞いたことあるような怒鳴り声が聞こえてきた。


 しかし、先ほどの意味不明の衝撃で完全に意識を失い、そのまま地面にバタッと倒れた。




「・・・いだだだ・・・。」


 次に気付いたときは、またもや激しい頭痛が伴うものだった。

死ぬほど痛いが、叫ぶわけにもいかない。


正直忘れきれないほど強烈だった。


「あ、起きた?」


 霊夢は他人事のように見向きもしないで、お茶を飲んでいた。

横を見れば霊夢のスカート|(または足)がものすごく近いので、やっと自分が仰向けになっているとわかった。

 なにせ激しい衝撃の後にこれである。

混乱しててよく把握できなかった。


「ねぇ・・・あんまりジロジロ見つめないでくれる?気持ち悪いわ。」


「ああ、すまん」


 自衛官はすぐに天井を見つめた。

あ、肝心なかと聞き忘れてた。


 何があって、ここにいるのか。

最低でも博麗神社ではない。

霊夢のくつろぎ具合で、なんとなく親しそうな人の家にいるのだろうから、聞いてみよう。


「先程は済まなかった。

ここ最近キリキリしていることがあってな・・・。」


 中性口調の女性が入ってきた。

青基調の服に帽子と若い外見に合わず髪が白い。


「寺子屋で教師をしている 上白沢慧音(かみしらさわ けいね) だ。」


「えーと・・・陸上自衛隊の 朝霧琢也 です。

災害発生により出動してきたのですが・・・。わけがありまして一人ですがここまできました。」


「さい・・・がい?」


「昨日に起こった震度7近くの地震です。」


けいね という人物は、災害・震度といった用語はよく理解できていないようだが、地震だけは伝わった。


「揺れなど感じなかったぞ?」


「多分外の世界の話じゃないのかしら?」


 また 外の世界 というキーワードが出てきた。


・・・けいねが大真面目に霊夢の話を聞いている限り、何か妙だ。

最初は中二病かなんかだったのでは?と見ていたが、どうもそうではないらしい。

一刻も早く、背嚢を探して・・・。


「あ・・・話を戻してしまうが、あの時お前に頭突きして申し訳なかった。」


「さいですか。お怪我のほうは・・・」


「霊夢いわくなにか探し物をしているそうだと・・・。お詫びと言っては難なのだが、手伝ってあげよう。」


「いえ・・・とんでもありません。けいねさんこそお怪我は・・・。」


「大丈夫だ。」


「これは私の任務ですので・・・。」



「 大丈夫だ!! 」




 断るたびに近づいてくるほど強引だったので、とりあえずは力を借りることにした。

とは言っても、あんなでかい背嚢などすぐに見つかるはず|(盗られなければ。)だ。


 

 自衛官は村人から被害状況から背嚢を目撃していないかまで情報を集めた。

被害状況については、なんともないということで安心したが、背嚢の話ではどれもわからないとばかりに首を横にしか振らなかった。


 だが、一番端っこの他畑を耕していた農夫が


「ああ、魔理沙ってやつが持って行っちまっただがな・・・。」


 マリサ・・・。


場所を聞こうとすると


「魔理沙!?なら話は早いわ!」


「おう!巫女もおったか。なら連れてってくれんか!?」


 霊夢は自信満々な顔で連れてってくれると言った。

農夫も頼むくらいなので、きっと相当詳しいのだろう。


「捕まって!」


 急ぐ霊夢はこのあと何をしたかというと、自衛官を掴むなり軽々と空を飛んだ。


「お・・・おい!!なにを・・・て・・・て・・・ええええええええ!!!!!!????」


「うるさいわね!!叫ぶことないじゃない!」


「いやいや!!空飛べる人間なんて!!!」


 ただでさえ飛ぶ人間なんて見たことないし、体重が70近い男性を掴んだままで・・・なんて少女がいたら見てても驚く。


 しかし、こんなすごい人いるのになぜマスコミが来ない。

それに里もろくに舗装されていなかったような。


 やっぱり、ここは彼女の言うとおり、異世界なのだろうか・・・。


 そしてそれを裏付けてしまったのは、上空をからしたを見た時だ。


「構造物がない!!」


 近くに住宅街どころか、廃れた集落すらない。

遠くを見回しても木や山ばかり。


「あ、した見ちゃったのね。怖くないの?」


 それどころではない。

やはり異常事態だ。


逆に怖い。

ここが異世界なら補給や救援は絶望的だ・・・。

どうしようかと計画練らねば。


 その時


 グイ。


「あ・・・ちょ!バカバカバカバカ!!」


 ガクッと後ろから斜め向くなり、グーーーーーっ急降下。

Gすら感じるこの瞬間、一般人なら失神どころの話ではない。


 ついつい叫んでしまう。


「わかったわよ・・・。」


 すると霊夢は残り3メートルのところで自衛官の体を横にして、抱きかかえた。


「ちょ・・・やめなさい!!危ないから!!」


「・・・さっきからうるさいわね、今回だけよ。」


「いやいやいやいやいや!!!!!」


 霊夢は割れ物のを扱うように、自衛官をゆっくり下ろした。

先ほど述べたとおり、自衛官は体重は70近い。それはあくまで裸の時の状態であり、被服や装備などで少し増えている。


 ある程度力持ちでも慣れていない方にはお勧めできない抱き方である、腰や腕は傷めないだろうか心配だ。


「ついたわ。まーりーさぁ!!!」


 自衛官にも負けない声で呼び出す。

だが、誰も出ない。


 創作活動によくありがちな、誰もいないパターン である。


「・・・、時間泥棒なんていう言葉もある。ここは諦めたほうがいいのでは?」


 自衛官は先程から感じる 妙な寒気 に耐えながら言う。

ただ、今言った言葉は寒気からくるものではなく、待っていても無駄だし用事があるだろうという事を伝えたかっただけである。


 しかし寒い


「どうしたの?震えてるわよ?」


 ひと目でわかるほど震えていることがわかるほど、激しいのだろう。

風邪ひいたか?


「・・・今日は下がりましょ。外来人に魔法の森の瘴気はきついわ。」


「瘴気で正気を保てないってか?」


 突然聞こえた寒い言葉に二人は上を向く。


「よぉ、ナイスジョークだろう?」


 いかにも魔女という格好をした少女が箒にまたがりながら、空中で静止していた。


「ええ、とっても寒かったわ。」


「マジで寒い・・・。」


「あ?」


 自衛官はかなり青ざめ、肩を丸めながら言った。

魔女は箒から飛び降りた。


「誰だコイツ。ガチで震えてやがる。そんなに私のジョークが寒か・・・。」


「ったのよ。きっと。」


「ちょっとまて、こりゃあマジだ。寒いんじゃなくて、変な胞子でも飲み込んだな。」


「誤魔化さないでよ。」


「いや、妖霊茸なんて変なきのこがあるんだが、そいつがばらまく胞子を飲み込んでしまったかもしれないぜ。」


 ようれいだけ?

胞子って聞いたからキノコの一種と見たが・・・。


「どちらにしろ瘴気で正気を失っちまう前にさっさと入ろうぜ。」


魔女は魔理沙の家を指差した。


「・・・じゃあ君が魔理沙か?」


「ぁん?」


「あ!そうよ!!ちょっとあなたに用があってきたのよ。」


 霊夢は今更思い出したように、言う。

だが、今は聞くべき時ではなかろう。


「まぁ,用事は後で聞くわ。それより早く入ろうぜ。」


 魔理沙は二人を自宅に入れた。



「イタタタ・・・・全身が痛いな・・・。」


 筋肉痛以上にきつい痛みに耐えながら、つぶやいた。

ここに来てからやたらと耐えることが多いので、慣れはしたが。


 だからこそ冷静でいられるので、ようれい茸とはなんぞやと聞いてみた。


「・・・。たしか、さまよう幽霊が化け茸に取り付いたもので、胞子を介して生物にとり憑く・・・だとさ。急に寒気を覚えて全身が軋むように痛む。これが初期症状さ。」


 魔理沙は本をパラパラめくりながら答えた。

初期症状ならまだいい。早く治す術がないか・・・。


しかし、いくつか気になる用語を耳にしたが、幽霊がきのこを通して憑依するものであるということはわかった。


「博麗、お祓いって出来るのか?」


 幽霊に取り憑かれたなら、宗教関連の専門内だろう。

特に現実ではありえないことが実在するこの世界なら。




「無理、わかんないもん。」



「はい?なんと?」



「幽霊が茸を通してとり憑くなんて聞いたことないわ。お祓いって言ってもどうやって?」



 やはり無理か・・・。


「聞いた話だと、治療方法はないらしいぜ?最終的にはその霊に全てを乗っ取られる・・・かもってな。」


 魔理沙は容赦なく言う。


「・・・・・・。もし乗っ取られて・・・なんか悪い奴に乗っ取られたら、君たちはどうするんだ?」


「・・・容赦なく消すわ。」


「そうか・・・。」

 

 自衛官は稚拙かつ甘い考えを捨て、新たな対処法を考えた。


「あ!!居るかもしれないぜ?」


「!?」


 魔理沙が突然思い出すように言った。

驚いた自衛官は、半信半疑になりながら魔理沙の耳に傾けた。


「困ったときは、助けてえーりん だろ!?

あの八意永琳なら治せるかもな。」


 助けてえーりん・・・?

謎のフレーズに戸惑いながらも、助かる手段ができたなら・・・と


「よっしゃ!早速呼びに行こーぜ!?」


 魔理沙は霊夢を連れて、家を出た。


「ちょい待ってろ、今連れてくるから。」


「留守番ヨロシクね。」


 バタン・・・。


と戸が閉まると、急に静まり返った。


 自衛官は少しだけホッとすると、急に眠くなった。


「ふわぁ~~・・・。少し寝よ。」


 あまりにも急すぎて心が休まる暇がなかったので、今のうちにとばかりに椅子に座って目を閉じた。

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