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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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短編ホラー

梅雨明け

作者: 壱原 一
掲載日:2026/07/20

私が住まう生家は標高の高い山腹に建つ。


家の左斜め上へ回ると、山肌から突き出た空き地があり、一帯を広く見下ろせる。


毎年、梅雨明けのこの時期に、薄曇りの朝焼けの空が際立って濃く赤い日和がある。


その日は早く目が覚めて、自然に赤い空を見る。


朝の身支度もそこそこに、空き地へ登り、立っていると、間も無く赤い雲間から、つるつる人影が垂れてくる。


*


木々が湧き立つ山裾に、麓の原から田畑や家に。建物が増え出す道沿いに、そびえて込み入る市街地に。


見える限り四方八方に、まばらにつるつる垂れてくる。


手足をぎゅっと内へ畳み、身を守るように背を屈めた、黒くか細い影である。


家5、6軒分はありそうな、大人と見える人影が、丸まり、うつぶせで垂れ下がる。


恐らく“(そろ)う”のを待っている、静かな停滞の時間の後、おもむろに低い音が立つ。


年により、遠く近くから、多分、人影のそれぞれから、1人1人にともるように、密やかに、ぽつぽつ、鳴り始める。


稼働させた電子レンジの、マグネトロンの振動めいた、低い、ぶうん、と言う音である。


赤い、薄曇りの空の下、澄んだ赤い陽に照らされて、無数に垂れた黒い人影が、低い、ぶうん、を響かせる。


あちらこちらで鳴り出すと、聞き留めてかどうか知れないが、そこらで鳥が飛び立って、犬が激しく吠え立てて、何かしら、音の影響を、受けているように感じられる。


微かな、ぶうん、と言う重奏が、一頻ひとしきり、継ぎ目なく行き渡ると、やがて人影はつるつる昇り、何気ない朝が訪れる。


私は、空き地から家へ下り、何気ない朝を再開する。


*


1度、近くに1人が垂れ、まじまじ見上げた事があった。


朝焼けの、まばゆい陽の中でも、ほぼ真っ黒としか見て取れない、硬そうに、縮み上がったなりだった。


この朝を越すと梅雨が明ける。


真夏の訪れを告げられる。



終.

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