一人
戦争が続いているこの国で生まれたからには、この国のために生きていくと誓った。
陸軍特殊砲兵科第3大隊最後の一人となった、俺、岩内兼久は、最後まで残った一丁の銃を持ち、敵を倒し続けていた。
敵を倒すと持っている糧食や、銃を補充し、バッテリーがあればそれも取り、ラジオ用の充電池とした。
夜闇に乗じて、敵の懐深くへ忍び込み、手榴弾を投擲しそして戻ってくるという日々を繰り返しているうちに、はたしてこれは正しいことだろうかという疑問がわいてきた。
敵は倒さなければならない、それは間違いないが、相手ははたして本当に倒すべき敵なのだろうかという気持ちがわいてきたのだ。
しかし、ここまで来たからには、どうしようもない。
自軍からの撤退命令も出ず、敵軍からの降伏勧告もことごとく無視を続け、俺はただ、敵を倒し続けた。
朝が来て、俺が見つかりそうになると、すぐに移動を始める。
極限の緊張状態で、俺は戦い続けていた。
「朝日……か」
目が覚めると、目の前には、戦場の跡がありありと映し出されていた。
しかし、そんな中でも朝日は、何事もなかったかのように昇ってきていた。
その中、ラジオでは終戦を迎えたということを繰り返しがなっていた。
「…そうか、俺たちは負けたのか」
ラジオを土の上に置き、俺は草原に横たわって笑いだした。
涙までこぼれだした。
でも、なぜかわからないが、悲しくはなかった。




