【2分】ほのかな痛みが溶けるとき【ほんのり】
ある所に中学生の女の子たちがいました。
美樹、加奈子、汐里の仲良し三人組です。
三人は学校帰り、公園の近くでキッチンカーを見つけました。
ソフトクリーム屋のキッチンカーです。
季節は夏、とても暑い時期です。
三人はたまにキッチンカーでミニソフトを買うようになりました。
ミニソフトを買い、近くの公園で食べるのは学校帰りの小さな楽しみでした。
「おじさーん! いつものね!」
「あたしもいつもの!」
美樹と加奈子は元気よく言います。
「ええっと……君がチョコで、そっちの君はミックスだっけ?」
おじさんも嬉しそうに頷きます。
「正解!」
「やるじゃんおじさん!」
美樹と加奈子が笑うと、おじさんも頬を緩めます。
「おじさん覚えたよ。君たちよく来てくれるので」
おじさんは美樹と加奈子に、チョコとミックスのミニソフトを渡します。
次は汐里の番です。
「……あの……バニラをください」
小さな声で注文を言います。
「バニラですね。少々お待ちください」
「………」
汐里は少し胸が痛くなります。
美樹と加奈子はおじさんと仲良くなってるのに、自分だけは仲良くなれないのです。
自分に対してだけは、おじさんはいつも他人行儀です。
(わたしだけ、いつまで経っても仲良くなれない……)
美樹と加奈子の、おじさんとの楽しそうなやり取りはいつもまぶしく見えます。
汐里は自分だけ、おじさんとの間に大きな壁があるような気がしました。
近くのベンチに並んで座り、三人はミニソフトを食べます。
ミニソフトは美味しいけど、汐里は胸に小さな痛みを抱えていました。
自分だけ、仲間外れのような気がしていたのです。
それはとても些細なことでしたが、切なくなる痛みでした。
ベンチでミニソフトを食べてる女の子たちを、おじさんはそっと見守ります。
(元気な子たちの賑やかさには、いつも元気をもらっている)
(でも、あの大人しい子がいつもくれる『ありがとうございました』という丁寧な会釈は、俺の心をほっこり温めてくれるんだ)
おじさんは汐里のミニソフトだけ、いつもほんのちょっぴりサービスしています。
その小さな『特別』に汐里が気づいた時、胸の痛みはアイスと一緒に溶けてなくなるのかもしれません。




