【2分】モンスター製造工場【寓話】
その国では、最近モンスタークレーマーが問題になっていた。
怒鳴り、脅し、理不尽な要求を突きつける客たち。
人々は言った。
「最近の客はおかしい」
「クレーマーは人間じゃない」
「出禁にしろ」
国は対策部を作り、役所にも張り紙をした。
───モンスタークレーマーは許しません
その標語が貼られた役所の向かいの通りには、こんな店が並んでいた。
《上げ底容器を使う弁当屋》
《包装詐欺をするコンビニ》
《安い価格だけを大きく書き、会員限定の注意文を小さく書く店》
《無料点検から高額修理に変わるリフォーム店》
《写真と全く違う料理を出すレストラン》
《法外な値段を要求する、ぼったくり店》
実店舗だけじゃない。
ネットの中にも、同類の店がたくさん並んでいる。
《星5レビューだけ大量表示し粗悪品を売りつけるネットショップ》
《本当に欲しい人の邪魔をする転売屋》
《商品は安いが、送料が超高額なネット商品》
《初月無料だが解約がわかりにくい、または電話のみの解約受付にもかかわらず決して電話が繋がらないサブスク》
《閉じるボタンが極小の誤タップ誘導商品》
《残り3分が永遠に表示される広告》
どの店も合法だった。
そして、どの店も謝らなかった。
人々は、少しずつ怒りを溜めていった。
最初は怒りを飲み込み、黙っていた。
次にため息をついた。
次に声を荒げた。
最後に、怒鳴るようになった。
ある日、老人が店員に叫んだ。
「私は怪物じゃない! あなたたちが私を育てたんだ!」
ニュースがいつものように報じる。
『モンスタークレーマー、また発生』
国の偉い人が会見で言う。
「我々は断固としてモンスタークレーマーを許さない」
だが誰も、怪物を育てる餌については語らない。
役所の張り紙に、誰かが別の標語を書き足した。
───モンスタークレーマーを叩くなら、同じ拳で製造工場を叩くべきである
しかしその言葉は、別の誰かの手によって翌朝には塗りつぶされていた。




