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16話 第3試合 伊吹ソーマ

『続いて第3試合!

 Aクラス伊吹ソーマと、Dクラス首席・高橋ナオト!』


 歓声の中、二人が向かい合う。

 高橋は、伊吹を見て――笑った。


「……正直、あんたは俺と当たって運が悪いと思ってるだろ?」


 伊吹は答えない。


「俺はあんた程度で運が良かったと思ってる」


 その言葉に、伊吹の眉がわずかに跳ねた。


「あんたはAクラスだ

 負けても“次”がある」


 「――俺には、ねぇんだよ」


 高橋の声が低くなる。


「運が良かった?次がある?笑わせるなよ」


「こちらとら

 ――――負けたら、首が飛ぶんだよ」


 観客席がざわつく。

 白崎が呆れた顔をした。


『おっと……これはAクラス伊吹、ただの試合ではないようです!』


 伊吹は、ようやく視線を正面に据えた。


『さぁ、間もなく試合開始です!』


 合図と同時に、高橋が動く。

 距離は詰めない。

 正面にも来ない。


『高橋、下がる!距離を保った!』


 三重魔法陣。

 牽制と制圧を兼ねた、生き残るための配置。


「来いよ、Aクラス!」


 魔弾が放たれる。

 角度をずらした連射。


 伊吹は避けながら前へ進んでいく。


『伊吹、この猛攻を躱す!躱す!しかし高橋はいい距離で戦っている。素晴らしい戦術!これを崩すのは難しいか?』


 魔弾が肩を掠める。

 制服が裂け、血がにじむ。

 それでも、止まらない。


「この魔弾がいつまで続けれる?そろそろ尽きてくるだろ!」


 伊吹が言う。


「どれだけでも!」


 高橋の不敵な笑み。


『Dクラス高橋、凄い魔力量だ!』


「いいや。お前はもう限界のはずだ」


 伊吹の声は、荒れていない。

 戦っている最中とは思えないほど、冷静だった。


「なぜなら――

  お前の魔弾は、威力を落としてない」


 高橋の笑みが、一瞬だけ固まる。


『……?』


「牽制用なら、出力を落とせばいい。

 でもお前は、最初から“当たれば致命傷”の威力を維持してる」


 魔弾が、再び放たれる。

 伊吹はそれを最小限の動きでかわす。


「理由は簡単だ」


 伊吹は続ける。


「威力を落とした瞬間、俺が前に出るって分かってるからだ」


 観客席がざわつく。


『伊吹、相手の選択肢を……潰している!?』


「だからお前は、

 ――高出力・連射・距離維持」


「全部同時にやってる」


 伊吹の目が、完全に“解いている目”になる。


「魔力量が多いのは分かる。

      ーーーーー  でもな」


 一歩、また一歩。


「これは長期戦じゃない」


「英雄制度の試合は、

 “短時間での最大成果”を前提に設計されてる」


 高橋の歯が、きしむ。


「結界、審判、制限時間、観客……

 全部含めて――」


「お前は、全力を出し切る前提で走らされてる」


『……なるほど!

 高橋は、最初から“引けない戦い方”を強いられている!』


 伊吹は、踏み込む。


「魔力が尽きるか、

 集中が切れるか、

 どっちかが先に来る」


「……黙れ!」


 高橋が叫ぶ。


 魔弾の密度が、わずかに――乱れた。

 伊吹は、それを見逃さない。


「ほらな」


 低い声。


「くそっ!」


 伊吹は淡々と続ける。


「“俺を止められない威力”で

 “距離だけを維持する”」


『伊吹、完全に相手の意図を読んでいます!』


 高橋は舌打ちした。


「だったら――!」


 防御魔法を厚く展開。


『防御を選んだ!

 正面衝突を受けるつもりだ!』


「チェックメイトだな!!」


 伊吹が魔法を展開して前に出る。


「それはお前の方だ!(バカめ、ここまでが俺の作戦なんだよ。お前はこう思ってるはずだ、かっこよく魔法を撃ち込んで世界にアピールしてやるってな)」


「魔法防御展開!(だが、俺が展開してるのは物理防御魔法。おそらく直前で魔法をキャンセル、殴ってくる。それをパリィしたら魔弾を撃ち込んでやる)」


「……いい判断だ」


 伊吹が言う。

 その瞬間、魔法をキャンセル。


「もらった!!」


 踏み込む。

 拳が、防御魔法の正面へ叩き込まれる。


「(勝った!!!)」


 高橋が勝利を確信した。


 ーー?!


 貫かない。

 伊吹は止めた。


「は?」

『止めた!?』


 防御が、正面に集中する。


 その“下”――

 重心の死角。


 次の瞬間。


 伊吹の膝が、防御の内側から顎を打ち抜いた。


「がっ―!!」


『なっ、飛び膝蹴り!

 防御四角からの攻撃!これは盲点だ!』


「飛び膝…だと…」


 高橋の身体が浮く。

 着地の瞬間。


「……終わりだ」


 床を踏み砕く。

 衝撃波。


 高橋は、結界ごと吹き飛ばされた。


『決着!!

 伊吹ソーマ、勝利!!』


 会場が爆発する。


『こ、これは力押しではない!

 相手に“選択させた”末の勝利だ!!』


 高橋は仰向けに倒れ、苦笑した。


「……くそ……Aクラスは……

 やっぱ、遠いな……」


 伊吹は、手を差し出す。


「英雄制度じゃ、

 その選択は“正解”じゃない」


 会場は拍手で包まれる。

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