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15話 第2試合 リゼル

第2試合

リゼル vs Dクラス相良リョウ


『第2試合――  Aクラス代表、一条リゼルVS相良リョウ』


 観客席が、わずかにざわめく。


『神代レイの補佐役として知られる生徒ですが、戦闘スタイルはほとんど明かされていません!』


 リゼルは、静かに演習場へ歩み出た。

 剣は持たない。

 大きな魔力の波動もない。


『これは予想外の静かな立ち上がり』


 あるのは、無音。


 対戦相手のDクラス相良は、戸惑った様子で構える。


「……補佐役だろ? 悪いけど、遠慮なく行かせてもらう」


 開始の合図。

 相手が魔法陣を展開する――


 その瞬間。

 リゼルの姿が、消えた。


『――え?』


 次の瞬間、演習場の床に“影”が落ちる。

 視界が一瞬、歪む。


「っ!?」


 背後。

 気配が――ない。


 相手が振り向いた時には、すでに遅かった。


 首元に、冷たい感触。


 刃ではない。

 だが、魔力が“喉を締めている”。


「……っ、な……!?」


 声が出ない。

 呼吸ができない。


『これは決まったか?!回避出来るか?』


 リゼルの声が、耳元で、囁く。


「……動かないでください」


 静か。

 感情がない。


「抵抗すれば、気絶では済みません」


「このっ!!」


 次の瞬間。

 魔力が、点で爆ぜた。


 衝撃は最小。

 だが、神経だけを断つ。


 相良は、そのまま崩れ落ちた。

 音すら、ほとんどない。


 数秒。

 審判が、遅れて我に返る。


『……し、試合終了!  勝者――一条リゼル!!』


 観客席が、ざわつく。


『は、速い……!』

『いや、見えなかったぞ今の……』


 リゼルは、倒れた相手を一度だけ確認し、  軽く頭を下げた。


 殺していない。


 だが――

 殺せた距離だった。


「実力差が分からないようでは、一生Dクラスのままね」


 リゼルは、冷たい視線を残し控え席へ戻る。


 観客席の一角。


「……あれは英雄向きじゃないな」

「だが、現場じゃ一番厄介だ」

「正面戦闘じゃなく、“消す”動きだ」


 来賓席では、また違う声が上がっていた。


「派手さは無いが、無駄が無い」

「神代レイの“背後”を任せられる人材だな」

「前に出る英雄と、

 後ろを切り詰める者――

 役割分担が完成している」


ーーーー


 Aクラスの席。

 白崎が、目を見開いたまま呟く。


「……リゼルさん、すごい……」


 言葉を失ったままの声だった。

 伊吹は、喉を鳴らしてから一言。


「今の……結界なかったら、首、飛んでたよな……?」


 誰も否定しない。

 灰谷が、ぼそっと言う。


「なぁ……俺たち、いつも睨まれてない?」


 伊吹が即座に返す。


「それはお前だろ。俺じゃねぇ」


「いやいや、今の目、絶対“全員まとめて消せますけど?”って顔だったぞ」


「被害妄想だ」


「じゃあ、もし何かあったら――」


 灰谷は、真顔で言った。


「ソーマの首、先に差し出しとくか」


「はぁ!? なんで俺なんだよ!!」


「一番丈夫そうだから」


「理由が雑すぎるわ!!」


 白崎が慌てて割って入る。


「ちょ、ちょっと二人とも! 試合前に縁起悪いこと言わないで!」


「いや、縁起はもう――」


 灰谷が演習場をちらっと見る。


「――さっき消えた」


「やめろぉ!!」


 伊吹が頭を抱える。

 そのやり取りを、少し離れた場所からリゼルが一瞥した。


 視線は一瞬。

 感情はない。


 だが。

 灰谷と伊吹は、なぜか背筋に寒気を覚えた。


「……ほらな」


「だからそれ被害妄想だって!」


 白崎が、ため息をつく。

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