ランニングコスト
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてChatGPTを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
・ 世界観・キャラクター・ストーリーの基盤は完全オリジナル(整理や補助を行ってもらうことはあります)
・ プロットは自身で立案(ストーリー展開、キャラの行動、テーマ性などを自分で組み立てています)
・ 重要なセリフ・行動・心情変化はすべて文章で指示(キャラクターの一貫性を重視)
・ プロットをもとに叩き台の原稿を出力 → 30%以上の加筆修正(表現のブラッシュアップ・個性の強化)
・ 執筆の過程で違和感のチェック・校正を補助的に利用(つなぎの違和感や文章の整理)
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「ChatGPTをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
(……また、いる……)
世羅は意識を向けずにフォークを進めながら、視線の主の存在を感じ取っていた。
背後、建物の隅に立つ影。その制服――第八区第八学園のもの。
"彼女"は、店内でも不審な行動をしていた。
今こうして外に出ても、まるで意図的に"様子をさぐっている"かのように立っている。
防犯ドローンも、不審な"彼女"の動きには特に反応しない。
あくまで店外での人間同士のトラブル、そう判断している。
ヤミ子も、同じくそんな気配に気づいていた。
「……ねぇマスター、なんか見られてね?」
ヤミ子が世羅の肩越しに、ちらりと後ろを見やる。
「……気のせいだろ」
世羅は特に気にする様子もなく答える。
だが、ヤミ子は納得していなかった。
「いやいや、ぜってー気のせいじゃねーし! ほらほら、あそこ! 物陰からガン見してるんだけど!」
「わかってる」
「え、じゃあなんでスルー?」
「別に何かされたわけじゃない」
「いや、でもさぁ……」
ヤミ子が不満そうに唇をとがらせる。
世羅は軽くため息をつき、手を止めずに言った。
「店の中でも妙な動きしてた……でも、ただ見てるだけなら、こっちがどうこうする必要もない」
「はーん……ま、たしかに? ……でもなんか、すげー気になるんだけど」
ヤミ子が腕を組み、考えるようにうねる。
その視線の先、少女は"じっと見つめるだけ"で、近づいてくる様子はない。
だが―― スッ……
次の瞬間、気配が消えた。
「……は?」
ヤミ子は驚いたように目を凝らす。
だが、もうそこには誰もいない。
「えっ、マジで? 一瞬でいなくなったんだけど?」
「……あぁ」
世羅はわずかに目を細める。
「消えた? 普通に逃げたってレベルじゃなくね?」
「そうだな……」
ヤミ子は腕を組みながら、何かを思い出そうとする。
「……てか、あの制服……どこかで見たことあんな……」
そして、ひとつの記憶がよみがえる。
「たしか……あれ、第八区第八学園のじゃね?」
ヤミ子がぽつりと呟く。
第八区第八学園――。
このエリアに住む者なら、一度は耳にしたことがある名前だ。
規律が緩いどころか、"管理されていない"とすら言われる学校。
遅刻、サボりは日常茶飯事。教師は最低限の授業をこなすだけで、生活指導はほぼ皆無。
一説には"殺人"すら珍しくないと――。
"自由な学風"と言えば聞こえはいいが、実態はほぼ放任主義。
問題を起こしても限り、誰も何も言わない。
当然、通う生徒の質もバラバラだった。
単純に校則の厳しい学園が合わず、ここに流れ着いた者もいれば――。
そもそも"まともな教育を受ける気のない"連中が多い。
殴り合いの喧嘩が日常的に起こる環境。
制服の乱れ、ほつれ、汚れ――そんなものはこの学園では当たり前だった。
だが、彼女は違った。
少女の制服は、不自然なほどに綺麗なままだった。
ボタンの掛け違えすらなく、スカートのシワもない。
荒れた学校に属していながら、まるでそこに染まることを拒むような清潔さ。
そして、それが許されるということは――。
(……実力がある、ってことか)
世羅は少女の影を追いながら、ぼんやりとそう考えた。
荒れた学校で、制服を汚さずにいられるのは二種類の生徒だけ。
"誰にも手を出されない存在"か、"誰にも触れさせない存在"か。
そして、後者であるなら――彼女は、間違いなく強い。
「……かもな」
世羅はヤミ子の問いに答えながらも、それ以上は追求しなかった。
だが、一度意識してしまったせいか、脳裏に浮かぶ少女の姿を見ていた。
ふと、思う。
(……磨けば相当な"素材"だぞ……だったら手元に……?)
ほんの一瞬、そんな考えがよぎる。
だが、それもすぐに振り払った。
(バカか)
少女は世羅のクランとは無関係な存在。ただのコンビニの客。
世羅が手を伸ばすには、まだ理由が足りない。
「ねぇ、マスター」
ヤミ子は世羅を覗き込むように顔を近づけた。
「なんかさぁ~……あーし、ちょっとお腹空いたかも?」
世羅はフォークを置き、ヤミ子のほうをちらりと見た。
「お前、飯食えないだろ?」
「いや、まぁ、そうなんだけどさぁ……」
ヤミ子はクスクス笑う。
「あーしが満たされんのは、精気ってしってるっしょ?」
世羅は半目になり、静かにドリンクを指差した。
「とりあえずそれでも飲んでろよ」
「ん~、水くらいなら飲むけど、これはやだよ」
いやだ――? 世羅はその言葉に引っ掛かりを覚える。
「じゃあ、我慢しろ」
「我慢できないから言ってんじゃん」
ヤミ子はボトルを傾け、透明の液体をちらつかせながら、世羅をじっと見つめる。
「……マスターがさぁ、くれるってのはどう?」
世羅はフォークを指で回しながら、淡々と聞き流す。
「どうせ、女と遊んできただろ」
ヤミ子はクックと笑った。
「おっ、さすがマスター、正解~♪」
ヤミ子はボトルを軽く振りながら、楽しそうに目を細める。
「でも、全然足りなかったんだよねぇ……」
世羅は眉をひそめる。
「足りない……?」
「やっぱ、女の子からちまちまもらっても、効率悪いんだよねぇ~」
ヤミ子はボトルをトントンと叩きながら、軽く息を吐いた。
「やっぱ、男のじゃないとダメみたい?」
世羅は静かにため息をつき、ヤミ子をじっと見た。
「お前、それ、本気で言ってるのか?」
「んー?」
ヤミ子は考えるフリをしながら、指でボトルをコツコツと叩く。
「まぁ、そう思うなら、そうかもねぇ?」
「……男とはしてないんだろ?」
「しないねー。てか、したいと思ったことないし」
ヤミ子は肩をすくめながら、世羅の胸元を指で突く。
「でも、マスターは別でしょ?」
世羅が何か言おうとした瞬間――ヤミ子は身を寄せ、世羅の耳元でささやいた。
「……キス、しちゃおっか?」
世羅はわずかに身を引き、冷静な表情を崩さない。
「お前、男は興味ないって言ってただろ」
「そだね~? だって、女の子が好きだもん?」
ヤミ子は肩をすくめながら、世羅の顔をまじまじと眺めた。
「でも……マスターはギリいけるっしょ?」
「は?」
「いや、だってさぁ? マスター、普通に可愛くね?」
ヤミ子はニヤッと笑い、世羅の顔を指でつつく。
「ちょっとクマひどいけど、顔立ちだけ見たら完璧美少女じゃん? てか、アイドルやれるレベルでしょ」
「……」
「ぶっちゃけ、パッと見。男ってわかんないし」
世羅はヤミ子を無言で見つめる。
「そーいや、あの時もさぁ? ギャングに間違われてたよね?」
ヤミ子は思い出したように笑う。
「なに? あのへんの連中って、そんなに女顔の男が珍しいわけ?」
「どうでもいい……だがこれだけは言っておく、私は男だ」
世羅はフォークを置き、軽く息をつく。
ヤミ子はニヤリと笑い、世羅の顔をじっくりと眺める。
「へぇ~……男……ねぇ?」
「なんだ」
世羅が眉をひそめると、ヤミ子は肘をつきながら、ニヤリと笑う。
「いやさ~、黙ってれば完全に美少女なのにね?」
世羅は無言でフォークを回す。
「髪も肩まであるし、適当に結んでるから余計にそれっぽいし? でも、脱いだら結構ガッチリしてんだよね~」
「だから女扱いするな」
世羅が眉をひそめると、ヤミ子はニヤリと笑う。
「おこんないでよ~」
軽い口調で言いながら、ヤミ子は世羅の手の甲を指でなぞる。
「でもさぁ、見た目がこんなに可愛いんだもん。つい忘れちゃうっていうか?」
世羅は無言でヤミ子の手を払いのける。
「そうか」
「まっ、マスターなら男だろうが、女だろうが……あーしは気にしないけどね?」
ふわりと微笑み、ヤミ子は世羅を上目遣いで見つめる。
「だって、マスター、"初めて"だったよね? なのに最初っから、うまかったしさぁ……」
口元に指を当て、いたずらっぽく唇を舐める。
世羅はフォークをくるりと回しながら、淡々と否定する。
「初めてじゃない」
「え? マジで? 月乃っち? ソフィアせんせー? 誰?」
「おまえ、普段から氷室のことをソフィア先生って呼んでるのか?」
ヤミ子はニヤリと笑うと言った。
「マスターの真似♪」
世羅は軽くため息をついた。
「くだらん」
ヤミ子は肩をすくめると、弁当の蓋を指でポンとはじいた。
「へぇ~……じゃあさ、経験豊富ってわけ?」
「どうだろうな……お前ほどじゃないだろ」
世羅がさらりと流すと、ヤミ子は世羅の肩に寄りかかるようにしながら、くすくすと笑った。
「ふーん? でもさ、男はマスターが初めてだったよ?」
世羅は軽く肩をすくめる。
「当然だろ」
「お、やっぱそこは気にする? やっぱカレシみたいじゃん?」
ヤミ子はからかうように微笑みながら、世羅の顔を覗き込む。
「だからカレシじゃない」
「ご主人様~♪」
ヤミ子は満面の笑みを浮かべ、世羅にぴとっと身を寄せた。
「やめろ」
「ふっふ~ん♪ ご主人様ったら、ほんとクール~♪」
「殴るぞ」
「お許しください! ご主人様~♪」
ヤミ子はクスクスと笑いながら、世羅に腰を寄せた。
「そんでさー、基本的に男はちょっと苦手なんだよねぇ。雑だし、ガツガツしてるし、距離感バグってるし?」
ヤミ子は指をくるくる回しながら、考え込むような仕草をする。
「でも、女の子はいいよね~。柔らかいし、匂いもいいし、話してて落ち着くし、可愛いし!」
そこでヤミ子はふと、世羅を見上げてニヤリと笑う。
「……なんだけどさ、マスターって男なのに何か違うんだよね~」
「は?」
「ほら、見た目美少女だし、普通にいい匂いするし、話しててもなんか落ち着くし……」
ヤミ子は世羅の肩に軽くほほを乗せて、くすくすと笑う。
「それにさ、マスターって、なんか落ち着きすぎてない?」
「普通だろ」
世羅は淡々と流す。
「いやいや、マジでさ? 他の男ってさ、もっとこう、焦ったり、テンション上がったりするじゃん?」
「私はガキじゃない」
「それそれ!」
ヤミ子がすかさず指をさす。
「マスターってさ、子供じゃないんだよねぇ。……てか、基本ソフィアせんせーより大人っぽいし?」
世羅は軽く息をついた。
「当たり前だろ。アイツはまだまだ子供だ」
「あれぇ~? それって学園生の発言としてどうなの~?」
ニヤニヤしながら顔を覗き込むヤミ子。
世羅は流すようにフォークを置き、淡々と言った。
「……精神年齢の差だろ」
ヤミ子はクスクスと笑いながら、肩をすくめる。
「ま、マスターはマスターってことでいっか♪」
ヤミ子は満足げに笑い、軽く伸びをする。
そして、ふと世羅を見つめ、いたずらっぽく微笑んだ。
「ねぇ、マスター。ちゅーしよ?」
急にふわっと顔を近づけてくる。
目を細め、いたずらっぽく笑いながら、世羅の首元に指をはわせた。
「やっぱさぁ、ちょーっとお腹すいたし? 我慢できないんだよねぇ~?」
甘ったるい声でささやきながら、世羅のほほを指でトントンとつつく。
銀髪がゆるく揺れ、褐色の肌に月明かりがはえる。
引き締まりながらも女性らしい、完璧な肉体。
変異体――肉体のピークで老化が止まる存在。
それは神が与えた奇跡か、あるいは呪いか。
美しさは衰えず、若さは変わらず、時の流れをただ傍観者として見送る。
だが、"永遠"というものは、往々にして代償を伴う。
この奇跡の肉体が維持されるためには、精気という名の燃料が不可欠だった。
そして、その最適な供給源は――ほかでもない、世羅悠希だ。
彼女が生きる限り、彼は"果てることなき収奪"にさらされる。
"ハーレム"とは本来、至高の園である。
だが、楽園は維持することの方が難しい。
"美少女に永遠に求められる" という現象は、幸福であると同時に、圧倒的な現実としてのしかかる。
本来なら、もっと色々楽しめるはずだった。
副生徒会長、女教師、これから手にする女たち――。
選び放題のはずが、現状はヤミ子ひとりで手一杯。
(これが……ランニングコストか……)
世羅の視界には、"ハーレムライフ" という理想がどんどん削られ、"無限に続く労働契約書" だけが脳内にチラついていた。
しかし、それでも手放す気は一切ない。
勝者はすべてを得る。
――それが、この島に課せられた絶対のルールである。
一度でも自分のものにしたからには、絶対に手放さない。
どれほど代償が高くとも、どれほど負担が大きくとも。
副生徒会長も、女教師も、アイドルも――。
手にした者は、最後まで面倒を見る。
美しさも、弱さも、欠点すらも、すべてを含めて。
"変わる"必要などない。
ありのままのそのままを、すべて奪い取る。
それが、世羅悠希の流儀だった。
メリットもデメリットも丸ごと引き受けてこそ、本当の意味での「独占」だ。
それが彼の、欲望。
だからこそ、手放さない。
彼の決意は揺らぐことなく、ひたすらに深く、強く、そして徹底していた。
「帰ってからにしろ」
「えー? ここじゃダメ?」
ヤミ子はわざと唇をとがらせ、すこし不満そうに顔を近づける。
「ダメだ」
世羅は淡々と答え、さらっとヤミ子の額を指で押し戻す。
「誰も見てないっしょ? いいじゃん、ちょっとくらい~?」
ヤミ子は軽く首を傾げ、上目遣いで世羅を見つめる。
世羅はコンビニの隅、壁の向こうに目をやる。
見てはいる――が、排除するほどでもない。
その逆サイドにも、世羅は気配をひとつ感じていた。
(なんだ? 不審者ばかりだな)
すぐさま襲ってくる訳でもなさそうだ。
だからこそ世羅はその気配を捨て置いた。
「……帰ってからだ」
世羅はヤミ子の肩を軽く押し返した。
するとヤミ子は 「はぁ~い、はぁ~い」と手をひらひら振りながら、世羅から離れる。
「んもぉ~、マスターってば! マジで意地悪~! そんなんだから、モテないんだよぉ~?」
事実とは異なる台詞。そんなことはヤミ子にもわかっている。
だからこそ、その口元には相変わらず楽しげな笑みが浮かんでいた。
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