オートマート
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてChatGPTを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
・ 世界観・キャラクター・ストーリーの基盤は完全オリジナル(整理や補助を行ってもらうことはあります)
・ プロットは自身で立案(ストーリー展開、キャラの行動、テーマ性などを自分で組み立てています)
・ 重要なセリフ・行動・心情変化はすべて文章で指示(キャラクターの一貫性を重視)
・ プロットをもとに叩き台の原稿を出力 → 30%以上の加筆修正(表現のブラッシュアップ・個性の強化)
・ 執筆の過程で違和感のチェック・校正を補助的に利用(つなぎの違和感や文章の整理)
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「ChatGPTをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
夜の帳がゆるやかに下りるころ、第八特別区の一角にあるMONOLITH経営のコンビニ『オートマート』は、変わらぬ光を灯していた。
ドアが開閉するたびに流れる機械的な音声、店内には人の気配はほとんどなく、天井を滑るように移動するドローンが規則的に巡回している。
無機質な店内。
天井にはいくつもの監視カメラが設置され、店内のあらゆる場所を死角なく映し出している。
棚に並ぶ商品は、規則正しく補充され、床には塵ひとつ落ちていない。
清潔で整然とした空間。それは、人間の手がほとんど入らないからこそ維持されているものだった。
"完全オートメーション"。
商品の陳列、在庫管理、補充、レジ会計――全てがAIとオートドローンによって処理される。
本来、この空間に"人間"が介在する必要はない。
それなのに――。
(こんな完璧な自動化があるなら、バイトなんて必要ないだろ)
レジカウンターにもたれながら、世羅は小さく息をついた。
彼の役割は、"形式的に"人が存在すること。
本来、客の応対も、補充も、会計すらも不要で、ドローンがすべてを完璧にこなす。
だが、"バイトがいる以上、バイトが仕事をすべき"というシステムの意向により、接客や対応を押しつけられる。
ドローンの方が正確で速いにもかかわらず、それでもこの"バイト"は存在している。
社会貢献をする事でスコアが得られる。単純な話ではあるが、社会的にはその労働自体が不要なのだ。
本来必要がない形だけの労働。それが、この島の異常性の一つ。
(それでも、スコアを得るには"働いている"という事実が必要だ)
店内のBGMが淡々と流れるなか、世羅はレジカウンターの上で腕を組む。
ディスプレイには、最新のスコア情報が表示されていた。
R.I.N.Gを介して家計アプリを開けば、そこには今月のクラン維持費が記録されている。
(50000……か。家賃や、あいつらの食費を含めると、ギリギリってとこだな)
月乃、ヤミ子、氷室――彼が抱えるクランの維持費は、ただ寝ているだけでは捻出できない。
食費、住居費、その他の管理コスト。
賞金稼ぎ――それが世羅の本業だった。
バトルには自信があるし、割のいい相手も多い。
だが、それだけでは食っていけない。
競争率が高く、いつでも安定して得物がいるわけではない。
どれだけ腕が良くても、得物がなければスコアは入らない。
だから、安定収入を得るためにコンビニで働いている。
決して効率がいい仕事ではないが、"決まった額が確実に入る”という点では悪くない。
現実問題として、クランの中で世羅のスコア残高は一番低い。
月乃は生徒会役員として、役職によるスコアを得ている。
ヤミ子はアイドル活動の収益、氷室は教師としての固定給がある。
彼女たちと比べれば、賞金稼ぎとコンビニの掛け持ちでは安定感に欠ける。
それでも、世羅がクランの費用を負担していた。いや、"全額"ではない。
クランの拠点は世羅のアパートだが、他の三人はそれぞれ実家や自分の住居がある。
だから、食費だけだが、それでも負担は多い。。
(男が女を養うのは当然だろ)
誰に言われたわけでもないし、論理的な理由もない。
ただ、それが当たり前だと思っているだけ。
だから、たとえ収入が一番少なくても、食費の半分は負担する。
どれだけ"効率が悪い"と言われても、世羅にとってはそれが"正しい"のだから。
指先でホロパネルを閉じ、世羅は天井を仰ぐ。
そんな彼のもとへ、店内の自動ドアが開き、ゆるやかな足音が近づいてきた――。
店内は静かだった。ドローンが"空中を"滑る"音と、たまに流れる機械的な音声だけが響く。
そんな無機質な空間に、妙に落ち着きなく動く影がひとつ。
レジカウンターの向こうから世羅はそれを捉えていた。
棚の間を行ったり来たりし、商品を手に取っては戻す。
まるで何かを探しているようにも見えるが、目的ははっきりしない。
(……また、来てるのか)
この少女はよくこのコンビニに来る。
世羅の記憶が正しければ、もう何度目になるだろうか。
痩せ気味の体型に、肩より少し長めの黒髪。伏し目がちで表情は読めず、声もほとんど聞いたことがない。
制服を見る限り、第八特別区第三学園の生徒ではない。
第八区の学園のひとつ、第八学園の制服――比較的治安の悪いエリアにある、規律が緩いことで有名な学校。
(なんでまた、こんなところに……)
怪しさはあるが、明確にルール違反をしているわけではない。
ただ――。
天井に取り付けられたドローンのカメラが少女をじっと捉えていた。
本来なら、立ち読みは禁止行為だ。
だが、ドローンは注意をしない。
理由は明白。
世羅がいる以上、接客は人間が行うべきだというシステムになっているのだ。
通常、無人時は完全自動で対応するが、社会貢献によるスコアを稼ぐためにバイトが入ると、できるだけバイトに仕事をさせる仕組みになる。
ピッ。
世羅のR.I.N.Gが軽く振動し、通知が浮かび上がる。
『店内ルール違反検知:立ち読み/対応推奨』
(……はいはい、めんどくせぇ)
世羅は内心で嘆息しながら、レジカウンターを離れる。
「お客様、店内での立ち読みはご遠慮ください」
できるだけやわらかく声をかけたつもりだった。
「ひゃっ! ひゃあああっ⁉」
少女は過剰なほどの反応を見せた。
手に持っていた商品を危うく落としそうになり、慌てて両手で抱え込む。
キョロキョロと店内を見渡し、ドローンのカメラをちらりと気にしたかと思えば、今度は世羅の顔を見て「す、すみませっ……!」と、小声で口走る。
しかし、次の瞬間、何かを振り払うようにブンブンと首を振り、バタバタと棚の奥へと逃げていく。
(……あれ、なんか挙動おかしくないか?)
明らかに警戒している。
不審者を問い詰めるつもりはなかったが、どうにも挙動が目についてしまう。
少女は遠目に世羅をうかがいながら、店内をふらふらと徘徊していた。
何かを探しているのか、もしくは迷っているのか。
何度も棚の間を行き来し、商品を手に取っては戻す。
時折天井のドローンの視線を意識するように、肩をすくめていた。
世羅が気配を向けると、少女は一度足を止める。
そして、すぐに目を伏せ、意を決したようにレジカウンターへ向かってきた。
「…………」
無言のまま、震える手で商品を置く。視線は伏せたまま。
世羅がレジを打ち、商品のバーコードをスキャンすると、少女はぎこちない動きでR.I.N.Gをかざした。
ピッ。
決済完了の電子音が響く。少女はレジ画面を確認するでもなく、そわそわと指を動かしながら、落ち着きなく世羅の顔を盗み見た。
(……何だ?)
ちらちらと視線を向けたり、逸らしたりを繰り返し、挙動が明らかに不審だった。
顔を確認しているのか、それとも声を気にしているのか――目的は分からないが、妙に意識しているのは確かだった。
それでも、何かを言うことはなく、少女は受け取ったレジ袋をぎゅっと抱え込む。
その瞬間、店の奥の防犯カメラが小さく駆動音を鳴らした。
「ひゃっ……!」
肩を跳ねさせた少女は、レジ袋を抱えたまま、世羅を見ずに小さく頭を下げた。
「す、すみませんっ……!」
「あっ……」
それだけを言うと、パニックのように足早に出口へ向かう。
まるで追い立てられるように、自動ドアが開ききるのを待たずに外へと駆け出していった。
世羅は小さく息をつき、レジカウンターにもたれかかる。
(……今の、なんだったんだ?)
世羅は少し考えたが、すぐに思考を切り替えることにした。
ドローンが店内を巡回し、再び静寂が戻る。
ほんの数分後、今度はまた別の客が店に入ってきた。
ウィイイン――。
軽い電子音とともに、自動ドアが開く。
それに続いて、「いらっしゃいませ」と無機質な合成音声が流れる。
入ってきたのは、黒ギャル――ヤミ子。
だが、いつもの制服やアイドル然とした姿とは違う。
今日は オーバーサイズのパーカーをワンピースのように着こなし、ショートパンツを合わせたストリート系スタイル。
裾から覗くスラリと伸びた生脚が、ラフな服装とは裏腹にいやに目を引く。
銀髪のウェーブヘアは、無理やりフードに押し込まれているが、完全には隠れず、肩のあたりでふわりと揺れていた。
そして、何より目立つのは――。
「……いや、意味ないだろ」
世羅は軽く眉をひそめた。
フードの内側で押しつぶされた角が、ぼこっと浮き上がり、シルエットが不自然に膨らんでいる。
どうにか隠そうとしたのは分かるが、むしろ逆効果だった。
しかし、ヤミ子はそんなことを気にする様子もなく、店内を見渡し――。
「あ、マスターいたじゃん!」
と、あっさり変装をやめた。
フードをぐいっと下げ、堂々と世羅へ向かってくる。
さっきまでの慎重な動きはどこへやら、歩き方までいつものノリに戻っている。
(……変装とは?)
世羅の脳裏に疑問が浮かぶが、もはや考えるだけ無駄だった。
「やっほー、マスター。お仕事ちゅう?」
軽い調子で話しかけながら、レジのカウンターに肘をつく。
「見ればわかるだろ」
「そだねー。でも、バイトっていうより、"いるだけ"って感じ?」
「否定はしない」
ヤミ子はくすくすと笑いながら、チラッとドローンの方を見やる。
ドローンは、"仕事をしている"世羅を見届けると、再び天井の巡回に戻っていった。
「ふふ、バイトしてるふりも楽じゃないっしょ?」
「おまえが言うな」
世羅は軽く肩をすくめる。
ヤミ子はアイドルとして活動しているが、その活動の裏には精気を吸収するという本来の目的がある。
ファンの歓声、視線、期待――そうしたものから、彼女は"栄養"を得ている。
彼女にとっての"仕事"は、あくまでも"効率よく生きる"ための手段に過ぎない。
「んでさ、これ。持ってきたんだけど?」
ヤミ子は世羅の目の前に、可愛らしいランチボックスを差し出した。
「弁当?」
「そ! マスターのために、手作りだぞ☆」
「……」
「なにその顔? 頑張ってるカレシに弁当作るのって、普通じゃん?」
「カレシじゃない」
「じゃ、ご主人様ってこと?」
「……」
「うわやっべマジかよー! メイド服でも着るぅ?」
「……食う」
「ナイス判断!」
ヤミ子は満足げに笑い、世羅は小さくため息をついた。
「……シフトが終わるまで待て」
「えー? いーじゃん、いま食べちゃいなよー」
「ダメだ」
「ケチっ」
ヤミ子はぷくっと頬を膨らませるが、結局世羅の意見に従うように、一歩引いた。
「しょーがない。じゃ、終わったら一緒に食べよ?」
軽く肩をすくめたヤミ子は、適当に雑誌コーナーへ向かい、ファッション誌を手に取ると、そのままパラパラとページをめくる。
その瞬間――。
ピッ。
世羅のR.I.N.Gが軽く振動し、ホログラムに通知が浮かび上がった。
『店内ルール違反検知:立ち読み/対応推奨』
(……めんどくせぇ)
世羅は無言でため息をつき、ちらりとヤミ子の方を見やる。
ヤミ子は完全に立ち読みをする気満々だった。
雑誌を片手で持ち、もう片方の手は腰に当て、リラックスした態勢。
そのまま「ふーん、今年のトレンドはこれなんだー」なんて呟きながら、ページをめくる手が止まらない。
(いや、堂々としすぎだろ)
世羅は仕方なく口を開く。
「お客様、店内での立ち読みはご遠慮ください」
ヤミ子の手が止まる。
「……は?」
ゆっくりと世羅の方を振り向き、目をまたたかせる。
「え、マスター? あーし、いま悪いこと何もしてなくない?」
「してるだろ。ほら」
世羅は無言でR.I.N.Gの通知を見せる。
『店内ルール違反検知:立ち読み/対応推奨』
「うっわ、マジかぁ……」
ヤミ子は雑誌を閉じて、しぶしぶレジへ向かう。
ピピッ――。
「お買い上げありがとうございます」
無機質な音声が響き、世羅はレジを操作しながら、ため息交じりに呟く。
「買うなら、ごねるな」
「だって~、タダがいいじゃん?」
ヤミ子はケラケラと笑いながら、雑誌を受け取った。
その時――。
店の外、ガラス張りの向こうから、じっと視線を送る影があった。
街灯に照らされた小柄な人影。
暗がりから店内を窺いながら、ヤミ子の方に向かって小さく体を傾ける。
(……?)
一瞬だけ世羅は目を向けたが、影はすぐに視線を逸らし、店の外れへと歩き去っていった。
気のせいかもしれない――そう思いながら、世羅は手元のディスプレイを確認する。
シフトが終わるまであと少し。
店内に流れるBGMは、無機質なシンセサイザー音。
どこかの誰かが作った"購買意欲を高める周波数"らしいが、世羅にはただのノイズにしか聞こえない。
「いらっしゃいませ」
客が入るたび、機械音声が流れる。
感情のこもらない声が一定のピッチで響くたび、妙に現実感が薄れていく気がした。
レジの奥で、ドローンがゆっくりと旋回する。動きはスムーズで、音もほとんどしない。
(本当は……人間の仕事なんて必要ないんだよな)
商品補充、レジ会計、清掃――すべてが自動化され、完全オートメーションで管理される空間。
それでも、バイトが存在するのは、"人間が働く"こと自体に意味があるからだ。
社会貢献によるスコア。
この島で"まとも"に暮らしたいなら、"価値のある人間"であることを"証明し続け”なければならない。
「もう少しの辛抱だ」
世羅はぼんやりと、ヤミ子の後ろ姿を眺めながら言った。
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