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四天王

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

「ぎゃあああっ!」


 男の悲鳴が工場内に響いた。

 声の主は、床に備え付けられた大型のロボットアームに捕まっていた。

 持ち上げられ宙づりの姿勢で、足をばたつかせている。


 すぐ隣にもう一本のロボットアームがあり、周囲を()ぎ払うように、ぐるんぐるんと回転していた。

 それを避けようとした別の男が、脇にあったベルトコンベアを飛び越えようと身を投げ出す。

 だが、足がレーンに触れた瞬間、搬送ベルトが音もなく起動した。

 驚く暇もなく、男の体は滑るように奥へと運ばれていく。


「うおおおあっ!」


 ベルトの速度は、通常では考えられない異常な速さだった。

 逃げる間も、体勢を立て直す暇も与えない。

 搬送ラインの先に設置されたスチームノズルが開いた。

 次の瞬間には高温の蒸気が噴き出し、男の全身を包み込む。


「あぢぃいいいいっ!」


 白煙の奥から悲鳴が漏れたが、それきりだった。


「おい! なんだよ! 何が起きてるんだっ!」

「わからねぇよっ! なんで機械が動いてるんだよっ!」


 ソフィアの事前の復旧作業により、廃工場の機械類は次々と再稼働を始めていた。

 加えて、管理システムは彼女のハッキングによって掌握されている。

 本来の作業を忘れたそれらは、ギャングたちを排除する“(トラップ)”へと変貌している。


「来たぞっ! ファントムだっ!」


 ここは、かつて缶詰の製造に使われていた広大な工場跡地。

 壁による明確な仕切りはすくないが、機械や資材棚、金属ラックが乱雑に並び、視界は悪い。

 ギャングたちが“ファントム”と呼ぶ男。世羅悠希は、その死角の数々を渡りあるく。

 静かに忍び寄り、隙を見ては奇襲をしかけていく。


「うぉ!」


 悲鳴がひとつ上がれば、ひとり倒れる。

 世羅の的確な打撃は、迷いなく急所へと打ち込まれた。


「くそっ! この!」


 ギャングたちはバールや木刀などの武器を手にしていたが、振り下ろす間もなく倒れていった。

 一呼吸でひとり、あるいはふたり。世羅は確実に仕留めては、すぐに遮蔽へと身を潜めた。


「あっち! あっちにいったぞぉ!」


 隠れつつも、完全には姿を隠さない。

 適度に目立つ立ち回りで、自らを(おとり)にする。

 釣られたギャングたちが、次々とそのあとを追ってくる。


「うおぉおお!?」

「なんだぁぁ!?」


 缶詰棚の脇をすり抜けようとした数人が、同時に叫び声を上げた。

 その直後、背後から押された金属ラックが音を立てて倒れる。

 中身の詰まったそれが、彼らを押し潰すように覆い被さった。

 ラックの陰から、ドローンがふわりと浮上する。

 ゆるやかな旋回ののち、世羅の方角へと向きを変える。

 操縦しているのは、ソフィアだ。


「ソフィア。いまの連中で何人目だ?」

『二十一人、まだ五分の一も削れていないわ』

「そうか。まぁ全滅させる必要はない……あのデカいのだけ、仕留めればいい」


 決闘(デュエル)の勝利条件は、相手のクランマスターの撃破だ。

 それ以外の敵を倒す必要はない。


『それは向こうにも言えることなんだから、私の仕掛けた罠で確実に減らす。勝負はそれからよ?』

「ああ、わかっている」


 世羅とソフィアのドローンは、大型機械と壁の隙間に身を潜めていた。

 そこは外から見えず、ギャングたちの位置も音や隙間からのぞく程度でしか把握できない。

 だが、ドローンには複数のセンサーが備わっている。

 それを活用すれば、敵の位置を正確に、しかも一方的に把握できた。


 工場内は、機械の残骸や資材棚が入り乱れ、足場も視界も悪い。

 加えて、あちこちに仕掛けられた(トラップ)が混乱を助長する。

 こうした環境では、人数の多さはかえって足枷(あしかせ)になる。

 連携は乱れ、仲間同士が動線を塞ぎ合うからだ。


 その中で世羅は、物陰をすり抜けるようにひとり動いていた。

 敵の位置は、ソフィアが逐一知らせてくれる。

 姿を見せずに、先に見つけ静かに撃破する。

 ゲームに例えるなら“スニークプレイ”。

 それこそが、ソフィアが導き出した、対ギャング戦の“戦術”だった。


 この廃工場は、いまやギャングたちにとって何が起こるかわからない“お化け屋敷”だった。

 だが、ここにでるのは、仮装のバイトでも、驚かすだけの人形ではない。

 意思を持ち、一撃で仕留めにくる“ファントム”だ。

 本当にこわいのはお化けではない。

 生きた人間なのだから。


「うげっ!」

「ぐぁあっ!」


 世羅はまたたく間に孤立した二名を打ち倒す。

 的確に急所を貫く打撃。受け身を取らせない投げ技。

 弱肉強食の変異島で欲しいものを手に入れる。

 その為に研ぎ澄ました技術を発揮していた。


「ビビるなっ! 数で押し潰せっ!」


 ギャングたちもただ棒立ちでやられ続ける程バカではない。

 一対一で分が悪いのならば数で押し潰す。

 数人が同時に世羅へと飛びかかる。

 組み伏せ、地面に押し付けてしまえば、あとは殴る蹴る。好きにすればいい。


「ぶっころせー!」

「いけー!」


 その瞬間、彼らの足元で何かが光を反射した。

 踏み込んだ男たちが、一斉に足を滑らせ無様に転倒する。


「うぉぅ!」

「なんだぁ!?」


 何が起きたのか解らぬまま、彼らはすぐさま立ち上がろうとする。

 だが、そのたびに足元を滑らせ、再び転ぶ。

 体勢を立て直すこともできず、四苦八苦していた。


「なんだこりゃ! 滑るっ! 立てねぇっ!」

「何やってんだっ! これくらい……うぉおおっっっ!」


 世羅は、滑って転がる男たちの様子を油断なく見守っていた。

 同時に、肩越しに浮かぶドローンへ視線を送る。


「ソフィア……あれはオイルトラップか?」


 転び続けるギャングたちの足元には、透明な液体がうっすらと広がっていた。


『そうよ』

「悪くないが……随分と古典的だな?」

『新しければいいってものでもないでしょう? 違う?』

「たしかにそうだが……ものたりないな。火でも点けるか?」


 やりとりが聞こえたのか、転がっていたギャングのひとりが顔を上げて叫んだ。


「うわっ、火ぃ!? バカかおまえ、死ぬぞっ!?」

「ふざけやがって! おとなしくやられろやっ!」


 ソフィアの操るドローンが、わずかにスピーカーの音量を上げる。


『心配しなくてもそんなことしないわよ。火なんて野蛮、それこそ古典的よ』


 足を取られたまま、もがき続けるギャングたち。

 転び、滑り、互いに絡まり合う。そして、また転ぶ。


「はっ? 女の声……ドローンだと!? マジで火つけんなよっ!」

「うぉおおおおおっ! 滑るぅ~~!」


 さらに数人のギャングたちが、遅れて合流してくる。


「おいっ! おまえら何やってんの!?」

「ファントムが目のまえに居るんだぞっ!? 遊んでんじゃねぇよ!」


 滑る仲間を助けようと、ひとりが手を差し伸べる。


「おら! 掴まれっ! ……って、うぉおおおーー!」

「あっ! バカ抱きつくなっ! 離せぇ!!」


 助けようとしたはずが巻き込まれ、混乱がさらに広がっていく。

 それでも、オイル溜まりから脱出しようともがく男たち。

 世羅は肩をすくめて眺めていた。


「おもしろい余興だが。元気いっぱいだぞあいつら」


 その言葉に応じるように、ドローンがふわりと移動する。

 スッと物陰に消え、すぐに姿を現した。

 丸型のドローンの下部には、マニピュレーターが展開されている。

 その先には、バチバチと火花を散らす漏電中の電線。


『もちろん転ばせるだけで済むわけないでしょう? マスター、あなたはさっきこれをオイルだって言ったけど……不正解よ』

「ほう?」


 世羅の視線が、ドローンの下部にちらりと向いた。

 何が始まるのかを察したように、わずかに口角を上げる。


「うんっ⁉ おいドローン! おまえ何するつもりだよっ!」


 気づけば、くんずほぐれつのうちに、男たちは全員びしょ濡れになっていた。


『知ってる? オイルは絶縁体、つまり電気を通さない。純粋な水も案外そうなのよ……でもね? あなたたちが浴びてるそれは違う』


 世羅が察したように、ギャングたちもようやく気づく。


『塩化ナトリウム水溶液……つまり“導電液”に少量のオイルをブレンドした特別製よ』


 ドローンが、導電液の中心へと電線を滑らせる。


「やめっ……うぎゃああああああっ!!」

「うぐぉおおおおおおおあああっ!!」


 凄まじい火花が一閃(いっせん)し、感電の衝撃が男たちの全身を跳ね上げさせる。

 悲鳴が、廃工場にこだまする。


『どう? 火だるまよりは進んでるでしょう?』

「たしかに現代的だな――」


 ――ガンッ!!


 突如、乾いた打撃音が、耳の奥に響いた。

 世羅の視界が、一瞬だけ黒く塗りつぶされる。

 足元がふらつき、視線も定まらない。

 ひどい頭痛のような感覚とともに、ようやく頭部に何かが当たったのだと理解する。


『世羅くんっ!』


 ソフィアのドローンが、反射的に前方へ滑り出た。

 その動きで、世羅は“何かの攻撃”を受けたのだと気づく。


「チッ……!」


 視界が揺れる。

 さきほど頭部に受けた一撃の影響がまだ残っていた。

 鋭い痛みと眩暈(めまい)に耐えながら、世羅は周囲を見渡す。

 周囲にいるのは、感電で気絶したギャングたちだけ。

 だがいまの攻撃が、偶発的な事故ではないことは確かだった。

 世羅はすぐさま近くの機械と機械の隙間に滑り込み、姿を隠す。

 冷静に状況を整理しながら、口を開いた。


「どこからだ? ……ソフィアっ!」

『近くには誰もいないわ』

「あいつらか?」


 遮蔽物の陰から、倒れた男たちを見やる。


『いいえ。電圧は落としてあるから死にはしないけど、意識が戻る状態じゃない』

「だったら……誰が――」


 ――ズドッ!


「ぐあっ!」


 肩口に、鋭く突き刺さるような衝撃。

 その直前、背筋を走った悪寒に従い、世羅は身をひねっていた。

 反応が一瞬でも遅れていれば、それは頭部に命中していたはずだ。


「ソフィアッ!」

『ええ! わかってる!』


 ソフィアの操るドローンが、センサーを全開にして周囲をサーチする。

 次の一手を逃さないため、わずかな兆候すら見逃さない。


 ビュンッ!


『きたっ!』

「ッ!」


 ソフィアの合図と同時に、世羅は別の遮蔽へと身を(おど)らせた。


 メキィッ!


「痛ってぇっ!」


 見えたわけではない。だが、何かが飛んでくる気配は感じていた。

 だから移動した。避けたつもりだった……にもかかわらず、胸に裂けるような衝撃がはしる。


「どこからだっ! ソフィア!」


 世羅の問いに応じるように、ドローンが正面にライトを照らす。

 その光線は真っ直ぐに伸び、三十メートル先の金属ラックを照らし出した。


『あそこっ! あの裏側よっ!』


 世羅は遮蔽物から半身だけを乗り出す。


「届くか……? 衝撃破(ブラスター)ッ!」


 腕から放たれた衝撃破が、ライトが差す一点を叩いた。

 爆ぜる音と共に、金属ラックがひしゃげ、積まれていた資材が宙を舞う。


「おーっとっと、バレちまったかぁ」


 破壊されたラックの向こうから、ふたりの男が姿を現す。


「油断するなよ。女みてーな顔してるが、アイツはつえーぞ?」


 石と鉄の(よろい)をまとったボスほどではないが、他のギャングに比べれば体躯(たいく)のいい男がそう言った。

 肩には青白く光る金属バットを担いでいる。

 その青い輝きは、“異能(ドライブ)武器強化(ブーストギア)”の効果によるものだ。


「そーか? 俺にはそうみえねーけどな? まぁいいべ……既に“ロックオン”済みだからよ? さっさと決めちまおーぜ?」


 もうひとりの背は低く、横幅はやや広め。小太りと言って差し支えない体格だった。

 その手には、ゴムの弾性で小石や鉄球を射出する“スリングショット”が握られている。


「だから油断するなって……うぉっと!」


 ――ドンッ!


 突如、バット男の目の前で衝撃破が炸裂(さくれつ)した。

 ふたりの無警戒な会話に乗じて、世羅が撃ち込んだ二発目だった。

 バット男は咄嗟(とっさ)に金属バットを振り上げ、その一撃を受け止める。

 弾けた衝撃が周囲の工具や部品を吹き飛ばし、屋根を震わせた。

 舞い上がった(ほこり)や紙片、袋に残っていた小麦粉までもが宙を漂い、視界をまるでカーテンのように覆っていく。


「あのときのバット男か? 面倒だな……」


 世羅は、その顔に見覚えがあった。

 美少女ならともかく、男の顔など普段はいちいち覚えていない。

 だが……数日前、多胡にアパートを襲撃された時にも居た奴。

 最も手強かったのがこの男だった。それだけは記憶に残っていた。


「ソフィア、いまのうちに移動を――」


 先程からの攻撃。それは、小太りの男が放つスリングショットによるものだった。

 銃器ほどの威力はないが、当たれば十分に“痛い”。

 当たり所が悪ければ致命傷もあり得る。何発も食らえば、それだけで危険だ。

 だが、もとより世羅に正面から撃ち合う気などない。

 今回は多勢を相手取るため、徹底して奇襲に徹するつもりだった。

 そのため、粉塵(ふんじん)にまぎれ、別の遮蔽へと滑り込もうとした。


 ――その刹那。


 ドグァッ!


「くあぁっ! なんでだよっ! くそったれっ!」


 視界は完全に塞がれている。そのはずだった。

 スリングショットによる一撃は、まるで見えていたかのように世羅を撃ち抜いていた。


『世羅くんっ! 隠れてっ!』

「わかってるっ!」


 言われるまでもなかった。

 世羅は痛みをこらえながら、素早く別の遮蔽へと身を滑らせた。

 スリング男との間には、まだ粉塵(ふんじん)のカーテンがかかっている。

 射線も通っていない。

 本来なら、正確な射撃など不可能な状況のはずだった。


 バグゥ!


「がぁっ!」


 眉間に鈍い衝撃。血飛沫が視界を染める。


『世羅くんっ!』


 白い粉塵(ふんじん)がゆっくりと晴れていくなか、ふたりの影が現れた。

 バット男とスリング男。

 その足取りはゆるやかで、勝利を確信しているかのようだ。


「ファントムだっけ? オマエのことは“ロックオン”済みだって言ったろぉ? 隠れても無駄だぞぉ?」


 にやにやと笑うスリング男が……叫ぶ。


「四天王登場だよバカヤローッ!」


最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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