演説
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
『で? 世羅……悠希くんだっけ? “亡霊”のクランに関する情報教えてよ。名前は? 規模は?』
“アイアンメイデン”のボスはくぐもった声で質問した。
圧を込めて畳みかけるように話すボスに、多胡は返事のタイミングを計るのに苦労する。
「えっ? ……いや知らないっす」
とはいえ、彼は有益な情報を持ち合わせてはいなかった。
『はぁ? 同級生だって言ったじゃないか? 嘘ついたの?』
「嘘なんてついてないっすよっ! 同級生だけど、友達じゃあないし……」
恋敵にもなれず、喧嘩にも勝てない。
多胡の方から絡みに行かなければ相手にもされない。
同級生であること。ただそれだけが、彼と世羅の唯一の繋がりだった。
『ふぅん……まぁいいや。名前が分かってるなら、MONOLITHに聞けばいいんだから』
ボスは何も言わずに多胡を見つめていた。
その表情は岩と鉄に覆われて読めないが、どこか“期待”のような沈黙が伝わってくる。
多胡は戸惑った。何かをしろという無言の圧を感じながらも、何をすればいいのかがわからないのだ――教室の空気がじわりと淀み、変な間が流れた。
『何やってるの? はやくMONOLITHに聞きなよ?』
「えっ? 俺っすか? 自分でやれば……」
ドゴンッ!
轟音とともに、分厚い岩の腕が壁にめり込む。
教室と廊下を隔てるコンクリが爆ぜ、音を立ててヒビが広がった。
壁には、丸太を打ちつけ、くり抜かれたような穴が開いている。
『ボクはいまこんな状態なんだけど?』
ボスの腕は、“異能:着岩”によって岩と鉄に包まれていた。
変異体に共通して装着されているR.I.N.Gも、その“肉体”にすっかり埋もれており、表面からは欠片すら見えない。
「わかった! わかりました……いちいち脅さなくても口で言ってくれりゃあ……」
多胡がブツブツと独り言のように言葉を発すると、不意にボスの顔が至近距離に寄せられる。
『はぁ?』
「すいませんっ! MONOLITHっ! 世羅悠希のクラン情報を知りたい」
数秒の沈黙の後、R.I.N.Gから電子音声が発せられた。
『……照会には、五万スコアの支払いが必要です』
機械的なアナウンスを聞き、多胡はおそるおそるボスに確認した。
「ボス、クラン口座からの支払いでいいんすよね?」
『ふぅ~……仕方ないなぁ』
ボスは肩をすくめ、あっさりと許可を出す。
そのため息さえも、岩と鉄に阻まれてくぐもっていた。
クラン口座――クランマスターが管理するクランに紐づく、スコアの口座である。
クランマスターのみが自由に引き出すことができ、許可された範囲であればメンバーも利用可能だ。
「MONOLITH、“アイアンメイデン”のクラン口座から支払う」
多胡がR.I.N.Gに向かって発声すると、即座に機械的な声が返ってきた。
『照会中……世羅悠希のクラン情報を返答します。クラン名……未定、保留状態です。クランマスターは世羅悠希』
「はぁ? 保留? なんだぁそりゃ?」
多胡の戸惑いに被せるように、ボスのくぐもった声が重なる。
『しっ! 黙って多胡。クランが存在して、彼がクランマスターなのは確定したんだから』
ボスの声には明らかな苛立ちが混じっていた。
多胡は思わず身構えるが、殴られるほどではないようだ。
さらに、R.I.N.Gからの無機質なアナウンスが続く。
『クランメンバー……不明、データベースの情報が一部改竄されています』
目を丸くした多胡の呟きに、ボスは首を傾げたまま低く応じる。
「まじか……? こんなことってあるのか?」
『変だね。ボクはいくつものクランを潰してるし、その度に問い合わせしてるけど、こんなのは初めてだよ。MONOLITH、世羅悠希がスコアを支払って情報をブロックしてるんだろ? ボクはその倍のスコアを払うよ、情報を頂戴』
ボスの質問の直後、再びR.I.N.Gの電子音声が返ってきた。
『照会中……世羅悠希によるブロックではありません。……データベースから情報を引き出すことができません』
「うう……ボス。どうするんすか?」
思わず上目遣いになる多胡。
『マヌケ面しないでよ』
ボスから多胡に向けられた声は冷たい。
「とりあえず、集めれるだけ兵隊集めて“ボコ”します?」
多胡は恐る恐る提案する。だが、その答えはすぐに飛んできた。
『多胡ぉ、それを決めるのはボクだよ? 舐めてるの?』
「すいませんっ!」
反射的に謝罪する多胡。返すボスの声は、少しだけ静かだった。
『ボクはね、別に喧嘩が好きなわけじゃないんだよ』
「……」
多胡は何も言えず、ただうなだれる。
『一方的にボコボコにするのが好きなの。だから、油断はしないよ、情報がないのに突っ込むなんてバカのすることだよ』
「じゃあ、どうするんすか……うわぁああ!」
多胡が言い終える前に、彼の視界に天井が迫った。
首根っこをつかまれ、体ごと持ち上げられたのだ。
『足を使えばいいでしょ?』
「あ、足……? ボ、ボス苦しいっ! 俺の足、地面についてないっ! おろしてくれぇ!」
*
それから数分後。多胡はステージに立っていた。
「えっ? 俺っすか? 俺がやるんすか? ……なぜ??」
多湖は恐る恐る質問した。
『なぜってうちのサブリーダーは外で寝ているからね』
それは“あんた”がぶっ飛ばしたからだろ――多胡はその言葉をぐっと飲み込んだ。
ついさっき、サブリーダーは教室で殴り飛ばされ、壁を破壊して校庭の向こうまで吹っ飛んでいた。
誰かが助けに向かった形跡もなく、生きているかも定かではない。
『ほらうちのメンバーはほとんどがこの第三学園の生徒でしょ? 決闘のルールなんて知らないし、段取りなんて組めるわけないじゃない。バカだから』
「……」
『まさかクランマスターのボクに雑用やらせる気? キミの学校は偏差値高いんでしょ? 説明してやってよバカ共に』
この場所は第八学園の体育館という名の廃墟だ。
バスケットコートを横に二面並べる広さはあるが、四基のゴールにはリングがなく、黒ずんだ板がむなしくぶら下がっているだけ。
泥と砂にまみれた床には紙屑や空き缶、謎の布切れが散乱し、もともと存在していた白線の痕跡が僅かに残っている。
体育館の端。鉄製の大型ボール籠にはサッカーボール、バレーボール、バスケットボールがぎっしり詰められている。
だが、それらはすべてナイフで切り裂かれ、空気の抜けたゴム屑と化していた。
そもそも、この学校では土足が当たり前だった。
それは制度でも方針でもない。ただ、誰も靴を脱がなかっただけ。
下駄箱は最初に破壊され、修復される気配すらなかった。
靴のまま過ごすことが当然になり、靴を脱ぐという文化は風化している。
器具庫もロッカーもすでに崩れ、跳び箱やマットなどの用具は分解され、遊び半分で破壊されたまま。
体育館だけではない。教室も廊下も、校舎のあらゆる場所が破壊され、汚れ、修復されずに放置されている。
ここはもはや“学校”ではなかった。
“第八学園”という名前と、学び舎という“概念”の残骸。
バカ共の“檻”。
「あーあー……」
体育館の正面ステージ。
そこにぽつんと立たされた多胡が、手にしたマイクを握りしめる。
目の前には、百名を超えるギャングたちが肩を寄せ合い、ガヤガヤと騒ぎながら詰めかけている。
座る者もいれば立ち上がって、拳を振っている者もいて、視線の熱気だけで押しつぶされそうだった。
「……あー……あー、マイク入ってる?」
その瞬間、スピーカーが「キィイィィッ!」と甲高い悲鳴をあげた。
ハウリングの不快な音に、ギャング数人が「耳が割れるわ!」と文句を飛ばす。
多胡は思わず肩をこわばらせ、マイクを遠ざけた。
その手のひらは、じっとりと汗ばんでいた。
彼はひとつ息を吐き、マイクを持ち直すと――やるしかない。そう自分に言い聞かせて、口を開いた。
「まず決闘ってのはただの喧嘩じゃねぇ。カツアゲとも違う。MONOLITHに届けでが必要なクラン同士の“正式な戦争”だ」
マイクを通した多胡の声が体育館に響く。
一瞬の静寂の後、ギャング達からガヤが返る。
「えっ、そうなのか?」
「それくらい知ってるわ! 馬鹿にしてんのか!?」
「モノリスって何だ? リスの種類か?」
こいつらにまともに話が通じるのか――多胡はそんな気持ちを押し殺す。
「決闘を申し込む側は、相手の規模に応じたスコアの支払いが必要になる」
説明を続ける多胡。そのたびに騒音のような声が押し寄せる。
「はぁ? なんだそりょ!」
「なんで喧嘩するだけで、スコアを払わないならねーんだっ!」
「俺……今月スコアが全然なくて、飯も食えない」
黙って話を聞く、ただそれだけの事が彼らには難しい。
「理由はしらねーよ、MONOLITHの手数料じゃねーの? だが、勝てばいい。勝てば総取りだ」
その言葉で、群衆が色めき立つ。
「総取りってことは全部か?」
「スコアも、女もか!?」
「焼きそばパンも貰えるのか?」
全員が阿呆だが、三番目は特に阿呆だ。
「全部だよ。相手のメンバーも、スコアも、拠点も、総取りにする“権利”が得られる!」
多胡は語尾を強めて締めくくった。
「権利ってあれか? 俺のものってことか!?」
「ずるいぞ俺にも寄越せっ!」
「権利って食えるのか?」
(なんだこいつら……頭悪すぎるだろ?)
多胡は説明するたびに脳の体力が削られていく感覚を覚えた。
だが、ギャング達のテンションは妙に高い。
「だったら早く“ヤろう”ぜ!」
「そうだ! いますぐだっ!」
「なんかわかんねーけど! うぉおおおおおっ!」
何がどう伝わったのかは謎だが、もう暴動の一歩手前だった。
『ファックユー』
くぐもった声が、体育館のスピーカーから静かに響き渡った。
ボスは、多胡が持っていたマイクを無造作に奪い取っていた。
『ホントにバカだねキミ達は。ボク以外の雑魚共だったとはいえ、何人ものメンバーがやられているんだよ?』
その声音は淡々としていたが、語る内容は鋭く、的確だった。
三メートルの体躯、岩と鉄でぶん殴る――ごり押しだけではない。
相手の戦力を“ちゃんと見ている”者の言葉だった。
『相手は闇に潜む“亡霊”――だけど“霊”と喧嘩をするんなら、せめて陽のあたる場所に引きずり出さないとね』
体育館に一瞬の静寂が訪れる。
「……えっと、なに、どういうこと?」
「さぁ?」
「オバケ怖いっ!」
ガヤの返答は最初から最後まで的外れだった。
『ったく……ホントにバカなんだから。多胡くん、キミが説明してよ』
ボスは肩をすくめるように呟くと、マイクをふわりと放り投げた。
慌てて手を伸ばす多胡。
マイクを間一髪でキャッチし、手の中のそれを見つめる。
同時にボスに首を掴まれて吊り上げられた記憶が、脳裏に過る。
あの恐怖――言われたら、やるしかない。
「まずは“亡霊”を尾行して情報収集だ。いいか? 絶対に手をだすなよ? ボスに“殺さ”れるぞ」
体育館にざわつきが走る。
今まで浮かれていた空気が、一気に緊張へと切り替わる。
「“亡霊”は俺の同級生だ。そいつを徹底的にマークして、住処、交友関係、ケツの毛の本数まで全部洗い出せ」
多胡の言葉を受ける彼らは、内容を理解してはいない。
だが、“ヤらなきゃ、殺られる”、ケツの毛を毟られるのは自分達だということだけは、痛いほど“理解”していた。
多胡の演説がどこまで届いていたかは怪しい。
だが、ボスの恐怖だけは確実に、全員の“骨の髄”にまで染みこんでいた。
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