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第八学園

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

 第八管理区第八学園へと向かう学生たちの集団があった。


 多湖を取り囲むように歩く五人の男子生徒。

 第八学園の制服を雑に着崩した彼らは、いずれも威圧的な態度を隠そうともしない。


「おら! さっさと歩け!」


 その様子は通学というより、連行と呼ぶほうが正確だった。


「くそっ! やめろっ……」


 男の一人に尻を蹴られ、多湖は声を上げた。

 発声の勢いこそ良かったが、言葉は途中で尻すぼみになり、濁される。

 これから待ち受ける過酷な運命を思えば、五人を相手にイキがる余裕など、あるはずもなかった。


「あっ? 多湖ぉ。ボスがお前を呼んでんだよ。お前がちんたらしてると、俺らまでボコられるんだわ」


 一人が(にら)みをきかしながら、ぞんざいに言い放つ。


「いっそ半殺しにして黙らせてから運ぶか? ひゃはははは!」


 別の男が肩を揺らして笑う。その目は冗談では済まされない色をしていた。


(ちくしょう……こいつら、楽しんでやがる……クズ野郎が……)


 多胡は歯を食いしばりながら、うつむいたまま歩を進めるしかない。

 脳裏には何度も“逃げる”という選択肢が浮かんでは消えるが、それでも彼はグッと堪えていた。

 いま逃げれば追いつかれ、捕まった瞬間にどれだけ殴られるか想像もつかない。


(怖ぇ……“ボコられる”のは絶対に嫌だ)


 危なっかしい言い訳でも、通じる可能性にしがみつくしかなかった。


(大丈夫、大丈夫なんだ……絶対に言い逃れできる、俺の言い訳は完璧だ)


 多胡がボスに呼び出された理由は明白だった。

 “アイアンメイデン”のメンバーを、許可なく動かしたこと。

 だが彼は、それに“正当な理由があった”とでっち上げるつもりでいる。


 最近、クラン内で(ささや)かれている名前がある。

 その名前は“亡霊”。

 ギャング狩りを繰り返し、懸賞金(バウンティ)を回収して回っている謎の存在だ。


 変異島において、賞金稼ぎ(バウンティハンター)は珍しくない。

 ルールを破った者には懸賞金(バウンティ)が課せられ、ギャングであれば自然とその対象になる。

 そうした賞金稼ぎ(バウンティハンター)に対しては、向かってきたところを返り討ちにするのが常。

 仮に逃げられても、見つけ次第追いかけ回して“ボコる”のが“アイアンメイデン”のやり方だった。


 だが“亡霊”だけは違う。

 その正体を誰も見たことがなく、尻尾どころか影すら掴めない。

 一人なのか複数なのかも不明だが、唯一わかっているのは“女”だということ。

 まさしく、亡霊のごとき存在だった。


 とはいえ、女にやられっぱなしで済ませるわけにはいかない。

 亡霊狩りがクラン全体の至上命題となっている今、

 このタイミングで動いた理由を“亡霊への対処”とすり替えることができれば、言い訳としては十分すぎる。


 そして多胡は、すでにその準備を整えていた。

 世羅を“亡霊”と見立てた偽情報。

 世羅の女顔という外見的特徴に、“亡霊”が女だという目撃情報をこじつける。

 あとは、ボスにそれが通じるかどうかだけだった。


 もちろん、真実かどうかなどどうでもいい。

 多胡にとって重要なのは、“言い訳ができるか”ただそれだけだった。


 世羅を亡霊に仕立てて、ボスへの言い訳も通して、ついでに仕返しもできる。

 世羅さえ消えてくれれば、ヤミ子も自分のモノになる――そんなふうに考えていた。


 一発逆転。

 なぜそんな都合のいい未来を信じられるのか、彼は自分でも理解できていない。


「おう、そこを右だ」


 ギャングの一人が言った。


「……うっ、なんだぁ?」


 荒れた廃墟(はいきょ)のような住宅地を抜けると、第八学園の校門が見えてきた。

 校舎を囲む壁には有刺鉄線が巻かれ、その外側にはびっしりと落書きが刻まれている。

 中には第八学園の生徒が描いたものもあるが、大半は、敵対する他校の生徒による罵詈雑言(ばりぞうごん)で埋め尽くされていた。


「うわ、ありゃなんだ? 人か?」


 校門をくぐったすぐ先に、無造作に立てられた丸太の柱がいくつも並んでいた。

 左右には携帯型のバスケットゴール、倒れかけの街灯の支柱、曲がった標識ポール。

 そのどれもが、人間を吊るすために“使われている”。


「う……うう……」


 顔がパンパンに腫れ、もはや原型を留めていない男がいた。

 おそらく第八学園の生徒なのだろうが、誰なのか判別できる状態ではない。

 ロープでぐるぐる巻きにされ吊るされたその姿は、まるでミノムシのようだった。


「おい……こりゃ、なんだ……?」


 多胡が立ち止まり、頭上を見上げる。

 吊るされた何かが、風に揺れていた。

 視界の隅でわずかに動くその影に、目を奪われる。


「あっ? 何って何だよ? ああ、こいつか?」


 先を歩いていた男が振り返り、肩をすくめる。


「理由なんて知らねーよ。こういう哀れな奴は、毎日いるんだよ」


 平然とした口調が、かえって多胡の不安を(あお)る。

 誰も気にしない。誰も助けない。

 ここでは“吊るされる”ことすら、日常なのだ。


 ゴクリ――。


 喉の奥が鳴った。もし、言い訳が通じなかったら? 

 そんな考えが、頭をよぎる。


「助けてーっ! 誰か助けてくれぇっ! 私が……私が何をしたって言うんだぁ〜っ!」


 吊るされていたのは、小太りのスーツ姿。

 頭頂部がつるりとハゲ上がり、顔は汗と涙でぐしゃぐしゃに濡れていた。


(なんだ……あのおっさん……教師か? いや、それにしちゃ情けなさすぎる……)


 多胡は思わず眉をひそめる。

 第三学園であれば、教師に手を出すなんて考えられない──というか、生徒会が黙っていない。

 だが、ここは違う。気に入らなければ、教師だろうが関係なく吊るされる。

 それが、この場所の“ルール”らしい。


 おっさんが吊るされた柱の下では、多胡とは別のグループの生徒たちがたむろしていた。

 勢いよく石を放り投げながら、まるで見世物のように騒ぎ立てる。


「ぎゃはははっ!! なにって、なぁ~にぃ~って~?」


 その中の一人が、吊るされたおっさんを指差し、けたたましく笑いだす。


「この界隈で、スーツなんか着て歩いてんじゃねーよ! “吊るしてくれ”って言ってるようなもんだろがぁっ!!」


 理由なんてなかった。ただ気に食わなかった。ただ目についた。

 それだけだ、教師ですらない、ただの通りすがりのおっさんだった。


 多胡はそっと視線を逸らし、足早に校舎へ向かう。

 だが、目に飛び込んでくる景色は、どこまでいっても異様だった。


 校舎は三階建て。だが、その外壁は、すべて落書きで覆われていた。

 赤、黒、白、スプレーの色と線が暴力的に交差し、言葉にならない怒りと恨みが塗りたくられている。

 しかも、三階部分までびっしりと書き込まれていた。

 どうやってあんな高所に落書きしたのかもわからない。


 内容はほとんどが校門と同じく、罵倒と怨嗟(えんさ)

 個人名をあげた恨み言、学園全体への呪詛(じゅそ)

 それらが塗り重ねられ、上塗りされ、もはや判読不能なほどに積み重なっていた。


 窓はひとつもなく、全てに重たそうな鉄格子が()められている。

 学校というより、監獄のようだった。


「ボスはあそこで待ってる」


 ギャングのひとりが顎をしゃくった先。

 そこにあるのは、校舎三階の一番奥の教室だった。


 本来、二年生の教室は二階に割り当てられる。

 だが、アイアンメイデンのボスは、その“規則”を力で捻じ伏せた。


 暴力で三年生を排除し、暴力で三階を乗っ取ったのだ。

 今では、あの教室こそがボスの“玉座”となっている。


 ドガーーーーンッ!!


 突如、校舎三階の壁が、爆音とともに内側から弾け飛んだ。

 粉塵(ふんじん)と破片を巻き上げ、人影がひとつ、宙へと投げ出される。

 そのまま地面に落下し、鈍い音を立てて叩きつけられた。

 (うめ)き声を漏らしながら、地面でもがく。即死は免れたが、もう立ち上がれそうにはない。


 校舎を見上げれば、壁のあちこちに人ひとりが通れるほどの穴が空いていた。

 そのひとつから、何か巨大なものが、ゆっくりと顔を覗かせている。

 影に包まれた輪郭は曖昧だが、並外れた質量だけは嫌でも伝わってくる。

 穴の奥にあるのは形ではなく“圧”。

 それが、空気を重く染めていた。


 視線も、言葉もない。ただ、そこに“いる”というだけで、場が支配される。

 異常な沈黙が流れる中、多胡を囲んでいた五人の男たちが、同時に背筋を伸ばした。


「ボスッ! 多胡を連れてきましたぁっ! “押忍”!!」


 その声はそろっていて、異様なほど大きかった。

 場に響くその音圧すら、ボスへの“捧げもの”のように感じられた。


「うああ……やべぇ……“殺される”」


 多胡の脚が、がくがくと震える。

 喉が渇く。逃げ出したいのに、体が動かない。

最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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