夢を見るのは嫌いだ
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてChatGPTを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
・ 世界観・キャラクター・ストーリーの基盤は完全オリジナル(整理や補助を行ってもらうことはあります)
・ プロットは自身で立案(ストーリー展開、キャラの行動、テーマ性などを自分で組み立てています)
・ 重要なセリフ・行動・心情変化はすべて文章で指示(キャラクターの一貫性を重視)
・ プロットをもとに叩き台の原稿を出力 → 30%以上の加筆修正(表現のブラッシュアップ・個性の強化)
・ 執筆の過程で違和感のチェック・校正を補助的に利用(つなぎの違和感や文章の整理)
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「ChatGPTをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
「せ……ら……く……せらくん……起き……」
(夢を見るのは嫌いだ。思い出したくないものばかりだから)
「世羅くん」
(でも、起こされるのはもっと嫌いだ。なぜなら、ただ眠いからだ)
「世羅くんっ、起きてください!」
(この声なら、まあ許せる。だが"いつものように"もう少し優しくできないものか?)
変異島第八特別区第三学園一学年、世羅悠希は、心の中でそう毒づいていた。そして、目を開けることなく、無意識に状況を探っていた。
彼の瞳の裏に光が差し込む、午前の授業中。彼は机に突っ伏して寝ていた。
(ああ、そうか……まだ授業中か……まだ眠いな……)
世羅は再び眠りに落ちようとした。
「おい世羅! てめぇ調子乗ってんのか? せんせーが困ってんじゃねぇの? 起きろよ、舐めてんのか?」
ガッ!
椅子が激しく揺れる。
(……チッ)
「多湖くんっ、やめなさい!」
多湖弘樹は世羅の席の真後ろの席にすわっている。赤髪短髪。シルバーのピアスが耳と唇に。赤いスニーカーを履いた足を伸ばし、世羅の席を蹴飛ばしていた。
「はっ? なんで? せんせーの味方したんじゃん? 何で俺が怒られるの?」
「席を蹴る、それは立派な暴力です」
「はっ? だから何?」
多湖は語気を強めた。担任である氷室の注意は逆効果のようだ。彼は頭を下げる気がない。
氷室のスレンダーでありながらメリハリのついた肉体、大人の色香――それを無視するほど大人でもなければ、簡単に屈するほどガキでもないが……ただ、"舐められたくない"という意地が勝る。
「せんせー、こいつになんか甘くねえ? なんか特別扱いしてるよなぁ?」
彼は片肘をつき、ニヤリと笑う。まるで氷室の反応を試すように。
ギャングの一員としてのプライドか、それともただの苛立ちか。その視線の奥には、教師に対する"対等な立場"という錯覚が見え隠れする。
「……」
しかし、氷室の曇り眼鏡越しの視線にも、一切の動揺はない。
ふたりの間に流れる緊張、教室にも不穏な空気が張りつめた。しかし、誰も止めようとはしないし、おびえた様子もない。ここで教師が何を言おうと、力関係が変わることはないと理解しているからだ。多胡にその気があり、力を示すことができるなら。氷室を屈服させることも、手に入れることもできる。それが変異島のルールなのだ。
授業が続くか、それとも新たなヒエラルキーが生まれるか。生徒たちは、椅子に座ったまま"ショーの続きを待つ"ように静観していた。ここでは、"教師の権威"など存在しない。あるのは、力こそが正義という現実。
ガタッ!
椅子を引く音がした、教室内の張りつめた空気が崩れる。
「世羅ぁ……」
「すみません、氷室先生。ついウトウトしました」
世羅は立ち上がるとそう言った。
「黒板に書かれてる問題……"解答"ばいいですか?」
氷室は少し動揺まじりに答えた。
「いえ……そういう訳では。授業中なのに世羅くんが居眠りしていたから」
その返答を聞き終わる前に世羅は動いていた。彼の席は教室に入って一番奥、黒板の前にある。つまり彼は担任の目の前で眠っていたのだ、堂々と。
黒板の前にたどり着くと、世羅は電子ペンを手に取り、スラスラと複雑な計算式を板書し始めた。 迷いもなく、まるで手癖のように――いや、それ以上の精度で式を並べ、計算を進めた。関数を展開し……一息に書き上げる。数式の流れは滑らかで、思考の間がまるでない。
「これが変異のプロセスとなります」
その場にいた誰もが息をのんだ。
世羅は授業を聞いていなかった。少なくとも、ついさっきまで眠っていたはずだった。なのに、まるで教科書の内容などとうに知っていたかのように、答えを導き出した。しかも、その解法は教科書レベルを超えている。授業で扱う範囲を超越し、理論を応用し、専門分野の解析技法すら織り交ぜたものだった。
「……正解です」
氷室が、静かにつぶやくように言った。
しかし、明らかに戸惑いを含んでいた。教師として、生徒の"知識"を評価するのは当然のこと。だが、今目の前で起こったことは、単なる"知識"の域を超えていたからだ。
「でも、それはハイスクールの範囲ではないわ。アカデミーで習う応用理論だもの……そこまでの答えは必要ないの」
氷室がそう言うのも当然だった。誰も、こんな解法を求めていない。だが、それでも世羅は最適解を選び取った。
……。
教室は静まり返る。
生徒たちは、まるで"異物"を見ているような視線を世羅に向けていた。
「ちっ!」
多湖の舌打ちが部屋に響く。隠す気のない、むしろ聞かせたくて仕方がない。大きな舌打ち。
(こいつ、普段はボケっとしてんのに、たまにこういうの出してくるんだよな……マジで気に食わねぇ)
多胡は歯ぎしりしながら、机をコツコツと叩いた。
(中身も"見た目通り"なら、まだマシだったのによ……)
多胡の脳裏にこの考えがよぎった瞬間、さらに苛立ちが増す。認めかけている――そう思った時点で負けた気がした。
「ありがとう。もういいわ、とりあえず席に戻って……世羅くん! どこに行くの?」
世羅は自席の反対、廊下に繋がるドアに向かって歩いていた。
「すみません。急に頭痛と寒気が、腹も痛いし、バカの声も聞こえるんで、保健室に行ってきます」
「てめぇ! 世羅ぁ!」
多湖は立ち上がった。ギャングの一員とは言え、偏差値高めの第八特別区第三学園の生徒である。皮肉を理解する知能は持ち合わせている。
すかさず氷室が多湖の行く手を遮った。
氷室のくり色の髪がさらりと揺れ、わずかに甘い香りが漂う。その動きには、一切の無駄がない。まるで、自分がどう見られているのか、計算し尽くしたかのように。
タイトスカートのスーツは、控えめながらも彼女の体のラインを浮かび上がらせる。だが、それを"武器"にする気配はない。彼女にとって、それは"戦略"ではなく、ただの"事実"でしかない。
「お……? おおお……う……」
多湖の喉が無意識に鳴った。反射的に立ち上がりかけた体が、勝手にブレーキをかける。まるで、支配するものと支配されるものが本能的に決まっているかのように――。
彼は股間に思春期を感じて、着席した。
「世羅くん!」
氷室は多湖の動きには一切の関心を持っていない、視線はあくまでも世羅に向けている。
「大丈夫? ひとりで行ける? 保健室」
世羅は振り向きもせずに返す。
「行けますよ。先生と違って、子供じゃないんで」
氷室は曇り眼鏡をクイっと持ち上げる。無言で。
ピシャ!
教室のドアが閉まった。
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