仮病
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
変異島第八管理区、第三学園の学区内に、多湖弘樹の自宅はあった。
世帯主は父親で、弘樹は一人息子にすぎない。
学園の予鈴が届く距離にあるマイホームは、MONOLITHの管理が行き届き、無法地帯である変異島の中でも治安が比較的良好だった。
つまり、彼は比較的裕福な家庭に生まれ、甘やかされて育った典型的なお坊ちゃんだった。
「くそ! くそ! くそ! くそ!」
彼は布団にくるまりながら、声を押し殺すように叫んでいた。
顔を枕に押し付けていたせいで、その叫び声は布団と壁に吸い込まれ、かすれた 呻き声にしかならない。
厳格な父親に叱られるのを恐れての行動だったが、そんな小さな発散で癒せるような屈辱ではなかった。
「ちくしょう!」
もともと、キツネのような吊り目と細い口元をした顔立ちだが、今はさらに頬がこけ、陰気さが際立っている。
世羅宅に押し入って敗れてから三日、まともに眠れていない。
そのとき――部屋の扉がコンコンとノックされた。
「ひろちゃ〜〜んっ、もう登校の時間よ? ……今日は学校に行ったほうがいいんじゃない?」
ノック音に続いて、母親の声がかすかに聞こえてきた。
「うるせぇババア! 俺は腹が痛いんだっ! 傷ついてるんだ! 学校には休むって連絡しとけっ!」
多湖は布団を思いきり投げつけながら怒鳴った。
だが、言い終えてすぐにハッとする。
(しまった……親父、まだ家に居るよな?)
もし出勤前だったら、いまの怒鳴り声を問い詰められてしまう。
「ごめんね……ひろちゃんごめんね。お母さんが悪かったわ、学校には連絡しておくからね……朝ごはんはどうする? お腹痛いならいらないかな?」
親父は居ない、多湖はそう確信した。
「食べるに決まってんだろ! 飢え死にしろってのか? 俺のタイミングで食べるから残しとけっ!」
「うん、わかった。冷めるから早くしてね? お皿も洗いたいから」
トントントン……。
母親はそう言い残すと一階に降りていった。
「ヤミ子ぉ……」
多湖は投げつけた布団を拾い、もう一度、芋虫のようにくるまり直した。
朝日がわずかに布団を透過するだけの薄暗い空間で、彼はR.I.N.Gを操作し、ホロパネルを展開する。
「ヤミ子……お前だよ、悪いのはお前なんだよ……」
ヤミ子のSNS、MuTubeのチャンネル。
そのいずれも――コメント欄が荒れていた。
『百合営業で釣っといて結局男かよ? 裏切りにもほどがある』
『信じてたのに……マジで幻滅。もう推せねぇわ』
『アイドル名乗ってんのに、恋愛とかふざけんなよクソビッチ』
『アイドルってだけで恋愛禁止とか意味わからん』
『いや別に、彼氏いたってよくね? 人間だろ』
『これ叩いてるやつ、全員キモすぎて笑う』
罵倒と擁護、両方が無秩序に飛び交わっていた。
怒り、失望、冷笑、自己投影、無責任――誰も彼もが勝手な言葉でスレッドを汚している。
「悪いのはお前だ、お前なんだよ……思い知れよ、ヤミ子ぉ……」
発端は一枚の写真だった。
相手の顔はやや不鮮明だったが、仲睦まじい様子は隠しようがない。
ヤミ子の顔ははっきりと写っていた。
コンビニの前、アパートの階段――いずれも隠し撮りされたツーショットが、ヤミ子の投稿に紐づくかたちでネットに投下されていた。
その写真を撮影したのは他ならぬ多湖自身だった。
確かに誤解ではない。だが、そこに正当性はない。
もし、ヤミ子の隣にいたのが自分だったなら。
多湖は、こんなリークなど決してしていない。
奪われたのは“隣に座る資格”だった。
自分が座るはずだった場所に、別の男がいた。
ヤミ子が、自分以外の誰かを選んだ――だからこれは、報復だった。
「へへへ……もう終わりだなぁ? ヤミ子……もう謝っても許さねぇよ……なんで間違えたんだよ……間違えるなよ……
アイドルはもう終わりだな? ……思い知れよ……」
多湖は鼻をすすりながら、ヤミ子の過去配信を再生していた。
ホロパネルに映るのは、まだ"自分だけのヤミ子”だと信じていた頃の動画。
いくつも保存したアーカイブの中でも、お気に入りの一本だ。
「あの頃は……笑ってたよな、お前……」
滲んだ涙がホロパネルをぼやかし、画面はまともに見えていない。
それでも彼は見続ける。
まるで、そこにしか“真実のヤミ子”がいないとでも言うように。
――ピキーン。
唐突に、R.I.N.Gが鋭い通知音を鳴らす。
彼が所属するギャングクラン、“アイアンメイデン”のクランチャンネルからの、冷たい現実を叩きつけるメンションだった。
「うわ……」
通知が鳴った瞬間、多湖は短い悲鳴を漏らした。
メッセージの内容を確認するまでもなく、脳が“最悪”を察知する。
「……殺される」
奥歯がカチカチと鳴り、全身が小刻みに震えだす。
ついさっきまで「腹が痛い」とか言っていた仮病とは違う。
これは正真正銘、“死を覚悟したときの震え”だった。
「勝手に兵隊を動かして……しかも負けちまったんだ……殺される」
彼の脳裏には三メートルの巨漢。
岩のような大男の姿が浮かぶ。
その男に捻り潰される無惨な自身の姿も。
カチカチ……カチカチ……。
「どうする? どうする? どう言い訳する?」
焦りで思考が空回りしていた。頭の中を、同じ言葉がぐるぐると回る。
「言い訳? できるわけねぇ……“目”が合った“瞬間”に殺される」
冷静になろうとすればするほど、恐怖が膨れ上がる。想像が暴走し、最悪の展開ばかりが浮かぶ。
「何とか、何とか、ごまかさねーと……無理なら逃げるしか……」
手は震え、喉はカラカラに乾いていた。現実的な逃走手段など何ひとつ思いつかない。
「ヤミ子ぉ……俺を助け……ん?」
その時、多湖の脳裏に電流が走る。
「まてよ……この写真じゃダメだ……もっと写りの良いやつ……」
世羅とヤミ子が並んだ隠し撮り。
リークに使ったのは、世羅の顔がぼやけて写っているものだった。
ハッキリ写ってしまうと、女に見えてしまうからだ。
「あった! あったぞ! これなら!」
多湖はそう言ってホロパネルに映した写真には、世羅の顔がハッキリと写っていた。
「これだ……世羅の顔が、はっきり写ってる……!」
そこには、まるでアイドルか何かのような一見して、美少女としか思えない世羅の姿。
「そうだ、そうだよ! 最近、俺らを狩ってる奴は“女”だって噂だった……だったら、これが犯人ってことにしちまえばよくね? なあ? そうだよな!? いけるよな!?」
多湖はギャング狩りの真犯人に辿りついていた。
だがそれは、推理でもなければ、偶然ですらない。
ただ、自分の保身のために――なんの確証もなく、それっぽいものを都合よく結びつけただけ。
プラグの形が似ていたから、なんとなく差し込んでみた。それだけの話だ。
結果として、世羅はたまたま本当に犯人だった。
だが多湖にとっては、そんなことはどうでもよかった。
“ボスに言い訳が立つかもしれない”
それだけで、もう頭の中はいっぱいだった。
「多湖ぉっ!!」
窓の外から怒号が響いた。
そっとカーテンの隙間から覗くと、軒先には第八学園の制服を着た数人が肩をいからせている。
その顔には笑みひとつなく、全員の手には警棒、スタンガン、チェーン。
誰がどう見ても、ただの“友達”ではない。
「多湖ぁ!! いんだろコラァ!? 逃げても無駄だっての! さっさと顔かせやァッ!!」
あきらかに“教育的指導”の域を超えた声。
殺意すら含んだ威圧感に、ガラスがわずかに震える。
「ひろちゃん!? なに、どうしたの!? なにがあったのよ!?」
慌てて階段を駆け上がってきた母親が、多湖の部屋の扉をガンガン叩き始める。
「ママうるさいよ!! いまは黙っててよっ!!」
多湖は布団の中で耳を塞いだ。
毛布のぬくもりだけが、まだ自分を肯定してくれているような気がした。
最後までお付き合いいただき、感謝です!
「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!
今後の励みになりますので、もしよろしければ……!




