シャワー
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
シャアァァァ……。
飛沫が、床を打つ音が聞こえる。
世羅の背中越し、曇り硝子の向こうの人影が動くたび、水の音が変わる。
まるで、楽器みたいだな……世羅はそんなことを思う。
「リズムも何もあったもんじゃない……適当なことが頭に過ぎるってことは疲れてるな"俺"……」
世羅はゴロリと横になる。
天井には薄くシミが浮き、端の壁紙は剥がれかけていた。
壁にもいくつか穴が開いているが、世羅の仕業ではない。
前の住人が暴れたのか、あるいは喧嘩でもあったのか。
気にしなければ支障はなく、スコアを払って補修するほどではなかった。
家具は最低限。寝具とテーブル、調理家電がひとつふたつ。テレビはないが、電子レンジはある。
それでも最近はだいぶ小綺麗になった。
気づけば窓にカーテンが付いていたが、誰が付けたかは聞いていない。月乃か、ヤミ子か、それとも氷室か。三人のうちの誰かだろう。
かつてはもっと酷かった。
ゴミも洗濯物も放置され、風呂にはカビが沸き、床には砂が溜まって、足音が立つほどだった。
共同の洗濯機をうっかり壊したせいで、思わぬ出費を強いられたこともある。
「ん~……いまからするのか……」
極上の淫魔との逢瀬。
楽しみでない訳がない、しかし、彼は疲れている。
土日返上でのギャング狩り、昼は通学、夜は深夜までバイト。
目の下のクマが一層深くなる。
「まぁ……ヤミ子が相手なら何とかなる」
淫魔との交配は、通常の"ソレ"とは違う。
淫魔側に対して精気を提供し、淫魔側がそれを受け取るだけで良い。
ひとくちに精気と言っても色々な意味を含むが、この場においての精気とは"精液"そのものである。
行為のプロセスを楽しむことももちろんできるし、ヤミ子もそれを好むタイプだが、究極的には世羅が勝手に振る舞っても構わない。
彼女の中を満たすことで、彼女は十分に満足できる。
だからこそ、淫魔を愛人に、手元に起きたいと願う男は多い。
精気をエネルギーとして消費するかぎり妊娠の心配はなく、食事の必要もないため性器も非常に衛生的……男にとって、これほど都合の良い存在はない。
世羅もクールを気取ってはいるが、結局はそんな魅力に惹かれる、ありふれた俗人のひとりに過ぎない。
キュ……。
蛇口を捻る音がバスルームに響き、水音が止んだ。
ギィー……プラスチック製の折りたたみドアが開く。
ヤミ子が顔だけ室内に向けると言った。
「マスターはシャワーあびんの?」
褐色の頬が、ほんのりと赤みを帯びている。
「私はいい」
「ほいほい、んじゃ、あーしもあがるね〜」
ヤミ子はそう言いつつ、顔を引っ込める。
代わりに左手を残していき、その手のひらをヒラヒラと波打たせる。
「はやいな? いつものオマエなら後1時間は出てこないのに?」
その問いに、再度、ニュッと顔だけ出してヤミ子は答える。
「髪の毛は洗ってねーし、こんなもんじゃね? マスター疲れてるし、はやく済ませたいよね?」
「……別に」
世羅の本音としては、ヤミ子の言う通りだった。
たが、それを口にするのは優しくない気がして、世羅は否定した。
「そかっ! 身体拭くからまっててね〜♪」
世羅とヤミ子はまだ出会ったばかりだ。
それでも、世羅が時折みせる優しさはヤミ子に十分伝わっていた。
月乃や氷室にはない、人に寄りそう感性。
これは淫魔としての資質か、ギャルのコミュ力か、本人の性格か、どれなのか――あるいは全てか。
世羅はコタツ兼テーブルの前に座っていた。
水気と蒸気をまとったヤミ子が、軽い足取りで歩いてくる。
狭い室内、何かを蹴飛ばさないように慎重に。
ヤミ子はバスタオル1枚を、褐色の肌に巻き付けている。
下着は履いていない。
頬もほんのりと赤みがかったまま、化粧はすべて落ちている。
それでも、ヤミ子の魅力が削がれることはない。
華やかな外行きの表情ではなく、彼女の素顔。
特別な相手にだけ捧げる無垢感。
ヤミ子はハッキリとビッチだ。
ただし、同性限定の百合ビッチ。
このあられもない姿を知る者は多いだろう、だが、男に限定すれば世羅以外の例はない。
個人個人の趣向によって同性であれども浮気は浮気、そう考える者もいるだろう。
だが、こと世羅悠希に関してはそうではない。
むしろ、ご褒美。
そういう性癖であった。
仮に女に本気になったなら、連れてこい。
そいつも一緒に囲ってやる。
それが、世羅悠希の考え方だった。
「……」
ヤミ子は冷蔵庫を開けると、ボトルを一本取り出した。
ふたをひねって、指を立てたまま「ごくっ、ごくっ」と喉を鳴らして飲む。
食事も飲み物も必要ない淫魔だが、水だけは摂取する。
「ぷっはぁ~~!」
ボトルを口から離すと、喉元から鎖骨にかけて汗が伝っていく。
「っく~~~……この為に生きてる!」
世羅は、そんな彼女の顔を静かに見つめていた。
整った美貌と年齢不相応な幼さ――ヤミ子の顔には、その相反する要素が共存していた。
輪郭はシャープだが、頬は柔らかく、目元は華やかながらもどこかあどけない。
グラビアで見かけるような“作られた可愛さ”ではなく、最高級の天然物。
それに加えて、表情がいちいち小悪魔だ。
口角、視線、すべてを狙って刺してくるのに、やってる本人にその意識があるかどうかは定かでない。
あえて言うなら、生まれついての“他人を狂わせる顔”。
“変異型:淫魔”の特徴を、そのまま極限まで研ぎ澄ました存在。
美人というカテゴリでも、可愛いというカテゴリでも、もはや収まりきらない。
ヤミ子というジャンルそのもの。
どの属性にも属さず、それでいて、すべてを塗りつぶすだけの完成度がある。
いきなりてっぺんを叩いている――。
黒ギャルという“山脈”で相対できる存在はいないだろう。
「どしたんマスター、あーし可愛いっしょ?」
次の台詞を世羅が、自らすすんで口にすることはない。
だが、聞かれたなら答えることに決めていた。
ストレートに真っすぐに。
「……そうだな」
すこしだけ言いよどんだ理由は明確だった。
照れ――それだけが理由。
「へへへへ〜♪」
ヤミ子は世羅の肩を叩きながら笑った。
この笑顔で何人の男を女を狂わせてきたのだろう、世羅はそんなことを考える。
「じ〜〜♪」
彼女はそう口にしながら世羅を見つめる。
「……なんだ?」
「何って……」
ヤミ子はニヤッと笑いながら、テーブルの向こうからぬるっと這い寄ってきた。
動きに無駄はなく、まるでこの狭さに慣れているかのよう。
四つん這いになった体勢のまま、タオルの下で胸がつぶれて溢れ出している。
大胆なのに、本人にその自覚はない――いや、ワザとやっている。
湯気がほんのり褐色の肌に残り、彼女の体はまだ火照っている。
顔を近づくにつれ、ほんのり甘い息が耳にかかる。
この距離感。
誘っているのか――?
「さそってんのよ? ……しよ♪ ますたぁ♪」
「!」
世羅の腰元から背中にかけて熱いものが巡った。
半分は比喩で、もう半分は物理的な生理現象だ。
「ん〜〜!」
世羅はヤミ子の唇を強引に塞いだ。
舌で薄桃色の扉を強引にこじ開け、そのまま容赦なく侵入した。
果実の蜜にも似たぬめりが世羅の舌を覆い、甘い吐息が彼の舌に触れると、舌先に残るのは、甘く、どこか懐かしい――ヤミ子の味だった。
「!?」
世羅はヤミ子の頭越しに、人影を捉えた。
玄関口、蛍光灯に照らされて立つ男がひとり。
その背後には、無数の気配が潜んでいた。
(多湖……?)
ガッシァアーーーーーン!
世羅の行動は早かった、迷いなど微塵もない。
ベランダ側の窓ガラスをぶち破り、そのまま外へ飛び出した。
バスタオル1枚のヤミ子を抱えたまま。
「ぎゃあああっ!? なにしてんのますたぁーーっ!!」
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