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帰り道

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

「歩いて帰る?」


 ヤミ子が世羅の顔を覗き込んだ。

 彼女の銀髪は、夜の街灯の光を受けて(きら)めいている。


「そのつもりだが?」


 世羅は無表情で答える。


「その下手な変装で見バレがイヤか? アイドル」

「下手じゃねーし! まぢ完璧だしっ!」

「タクシー拾うか?」

「ううん! 歩こっ!」

「いいのか?」

「マスター、スコア厳しいっしょ?」


 世羅はわずかに目を細め、短く息を吐いた。


「……」

「んじゃ、あーしが払う?」

「ダメだ」

「ねっ♪ 歩こっ! マスターと一緒に歩きたいし!」

「わかった」


 二人は歩いた。

 世羅が借りている、月額55000スコアのボロアパートへ向かって。


 背の高い電灯から降り注ぐ光。

 その光を浴びる人影は、どこにもない。


 歩道は整備され、チリひとつ落ちていない。

 ガードレールで区切られた車道にも、車の影はほとんどない。


 バスやタクシーはMONOLITHが運営している。

 だが、自家用車を持てるのは、ごく一部の特権階級。

 あるいは"外界げかい"からの"外交官"。

 一般人にとって、車とは遠い存在だった。


 それでも、街はキッチリと整理され続けている。


 300年前、この島は"東京"と呼ばれていた。

 その名残を、MONOLITHが"維持"している。


 なぜかは、わからない。

 "維持すること"それ自体が、目的なのかもしれない。


(……あまりに時代遅れなインフラ……自分で歩く必要がある、"外界(げかい)"と違って不便が多いな)


 "外"を知る男――世羅悠希はそんな事を思う。


「……あんれえ?」


 数分歩いたところで、ヤミ子が足を止めた。


「どうした?」

「ほら、ここ、昨日ギャング狩りした場所じゃん?」

「そうだったか?」


 世羅は肩をすくめる。

 狩る数が多いせいで、いちいち覚えていない。


 ヤミ子は顎で指し示す。


「ひゅ〜、すご腕♪ んなことより、ほら! もう修復されてるくね?」


 そこには、昨日の戦闘の爪痕がまるでなかった。

 舗装されたばかりのアスファルト。傷ひとつない壁。

 MONOLITHのドローンが夜のうちに修復を終えたのだろう。


 仮に死体があったとしても処理されている。


「月乃っちが暴れまくってたから、ぼっこぼこだったはずなんよね〜」

「ギリギリ学区内だからな。MONOLITHが管理しているんだろ」

「だよねー? ん、でも見てみ? あっちはボロボロのままじゃね?」


 ヤミ子は向かい側の通りを指さす。

 その周辺はひび割れたアスファルトがそのままになっていた。

 崩れたビル。放置された車の残骸。


「あそこは第八の学区だからな……管理が甘い。それに廃棄区が目と鼻の先にある」

「んじゃ、あーしもひとりで近づかないほうがいいかぁ?」


 ヤミ子が軽く笑いながら世羅を見る。

 世羅はわずかに目を細めた。


「……当然だろう? 無闇に近づくなよ?」

「わかってるし〜! んでもさ、昨日あーし連れてったじゃん? アレ何よ?」

ギャング狩り(仕事)だから仕方がない。それに昨日は私が一緒だった」

「なにそれ? オレが守るってこと?」


 ヤミ子はそう言いながら、世羅の肩に頭を乗せた。


「そうだ」


 ヤミ子は怪訝(けげん)な表情を浮かべ、(ほほ)を染める。


「なにそれマスター? そんなまっすぐ……モテようとしてんの〜?」

「思ったことを口にしただけだ」

「いや、そりゃわかってるけどさぁ……少しは手加減しろよぉ」


 ヤミ子は(ほほ)をふくらませる。


「私はガキじゃないからな。大人ってのは、やりたくないことはやらない。やりたいことは自ら決めるもんだ」


 世羅は、ふと夜空を仰いだ。

 過去に置いてきた記憶が、わずかに頭をよぎる。


「……口にする言葉もな」

「なにそれ? 色々経験してます。カゲも抱えてます? ……でもオマエには優しい?」


 ヤミ子は世羅の肩を軽く叩いた。


「だから! モテよーとすんなし!」

「? オマエは何を言ってるんだ?」

「おめぇーだよ!」


 ヤミ子はますます(ほほ)を赤く染め、ぷいっと顔をそらした。

 そして、次の話題を探すように、適当に思いついたことを口にする。


「そうそう! 月乃っちさぁ! 今日、頭抱えて後悔してたの、知ってる?」

「しらん」

「あんだけ暴れといてやり過ぎたぁーって、まぢおもろいんだけど〜あ〜好き! 月乃っち!」

「ひとりふたり死んでても不思議じゃないな」

「いや! さんにんは死んでるね!」


 世羅はため息ながら言った。


「できれば殺すなと命じたはずだ」

「そうだったねぇ〜、んでも弱い奴が悪くね? 死ぬよ。弱いやつは」


 ヤミ子は、変異島の常識を淡々と口にする。

 彼女自身は暴力的な部類ではない。

 だが、この島では強さが全て。


 弱い奴が悪い――その価値観は根強い。

 例え代償が"命"だとしても。


「……やはり"外界(げかい)とは違うな」


 世羅は小さく(つぶや)いた。

 変異体は強い者に従う――そう"(つく)"られている。


 だからこそ――


(私にも居場所がある……)


「ん? なんか言った?」

「気にするな」


 すれ違いざま、カフェのテラス席に目をやる。

 そこでは、女子二人が身を寄せ合い、親しげに(ささや)き合っていた。


 指先が軽く触れ、絡み合いそうで絡まない。

 世羅は何気なく視線を留めた。


(……そういえば)


 わずかに顔をしかめ、夜道へ目を戻す。

 するとヤミ子が、そんな世羅の様子を怪しむように横目で見ていた。


「それで? 月乃に対して……LOVEとLIKE、どっちだ?」

「ラブ多め!」

「好きにしろ」

「うわっでたよ! 百合好きっ! 間に挟まろうとすんなよ?」


「……」


「あの~? もしもし~? マスターってば~?」


 世羅は、夜空を見上げる。

 まるで考えないふりをしながら、それでも頭の片隅で「百合はいいものだ」と認めていた。


「いやいやいや! 肯定も否定もしないのヤバくね? ねぇ、なんか言えし!」


「……」


 世羅は黙って歩を進める。

 ヤミ子は眉をひそめ、ジト目で見つめた。


「いやーあの、委員長って感じそそるんだよねぇ〜、まぢほんと好き!」

「……そうか」

「でも、ガード硬いし怖いからなぁ……むっつりの癖にねぇ?」

「むっつり……あいつが?」

「そだよ? えっ、わからんの?」

「そんなタイプには見えんがな」

「んも〜! マスターはまだまだだねぇ? 絶対にエグいバイブ部屋においてるよ? あの娘!」


 ヤミ子は、いたずらっぽく笑いながら世羅の腕を軽く叩いた。

 世羅は、無言で夜空を仰ぐ。


 そんなものを使われるくらいなら、先に抱いた方が合理的――そんな考えが脳裏をよぎる。

 しかし、それを口にすることはなかった。

 思わず頭に浮かんだ考えを、世羅はすぐに振り払った。


 だが筋は通っている。

 私はクランマスター、月乃は支配下だ。

 "好き"にしていい。それがこの"変異島(しま)"のルール。


 世羅はそんな事を思う。


「魅了してみたらどうだ? 淫魔だろオマエ?」


 世羅が軽く言うと、ヤミ子は肩をすくめた。


「ん~? あーしの魅了は男限定よっ? しらんかった?」

「そうだったのか、オマエの"趣味"と"噛み合ってない"な?」

「でしょ~♪ でもあーし、美しいから♪ それでも全然いけるんよね!」

「何人いるんだ? 女のセフレ」

「百から先は数えてない!」

「ほどほどにしとけよ」

「え~い~じゃ~~ん、あーし淫魔だよ?」


 ヤミ子はクスクス笑いながら、世羅の肩にもたれた。

 直後、遠くから夜風に乗って、微かに警報のような音が聞こえてきた。


「ん? なんか、サイレン鳴ってね?」


 ヤミ子が顔を上げ、耳を澄ます。

 世羅もそちらへ視線を向けた。


「ギャングか。あるいは、学区内で何かあったか」


 この島の人口は300年前の、十分の一だと言われている。

 それでも一日中、どこかで戦闘が起きている。


 この人口には"過ぎた”施設、インフラの数々、奇妙だ。


 繰り返すが、これは"変異島"における"常識"。


「ふーん……ま、あーしらに関係ないならいいか♪」


 ヤミ子はあくび混じりに言い、再び世羅の肩に寄りかかった。


「ん~、なんかさ、眠くなってきたぁ……」

「まだアパートまでは距離があるぞ」

「んー、じゃあさマスター?」


 ヤミ子は世羅の袖を軽く引っ張る。


「なんだ」

「おんぶして♪」

「断る」

「え~! マスター、鬼ぃ~!」


 ヤミ子はふくれっ面をするが、その声には楽しげな響きがあった。

 二人の影は、夜の街に溶け込むように、ゆっくりとアパートへ向かっていった。


最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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