表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/16

件名:12人の転送が確認されました。あなたは無事ですわ


 ポチ、ポチ、ポチ――。

 

 砂漠の夜風が、私の長い鼻先をかすめる。

 足元には乾いた砂がひそやかに流れ、遠くでは異国情緒漂う楽器の音がかすかに聞こえておりました。


「まさに砂漠の夜街らしい風情」


 そんな静寂の中、私はガラケーを優雅に開き、ポチポチとボタンを押し続けております。


「ふふ……すでにターゲットへはメッセージを送信済みですのよ?」


【送信済みメール】

件名:「あなたの魂を狩りますわ」

送信先:◯◯亭(ターゲット確定)


「では、次の標的に参りましょうか」

「ちょっとボルゾイ御夫人⁉︎ まだ街の情報も集めてないのに、もう行くの⁉︎」


 リアンさんが慌てて私の後を追いながら、スマホの画面と私の顔を交互に見つめております。まるで「せめてもう少し慎重に行動しようよ⁉︎」という目をしておりますわね?


 私は静かに夜の砂漠を見渡しながら、優雅に歩を進めました。


「計画なら、すでに立てておりますわ」


 さらりと告げると、リアンさんが困惑の表情を浮かべた。


「え? いつの間に⁉︎」

「先ほど、カウンターで紅茶をいただきながら」

「……いやいやいや⁉︎ そんな短時間で⁉︎」


 リアンさんが驚愕の表情で、スマホを握りしめる。しかし、私はフフッと微笑みながら夜空を仰ぎ、星の輝きを眺めました。


「転生者というのは自ら情報を漏らしてくださる方々ですもの。対処法など、最初から決まっておりますわ」


 彼女はスマホの画面をまじまじと見つめた。


「まさか……もう情報を入手してるってこと⁉︎」


 その問いに、私はつぶらな瞳を輝かせながら、ニコリと優雅に微笑む。


「ええ。そして……」


◆ 一方、その頃――「転生者の反応」

 

【スレッド:ヤバい、12人に転送しろってメールが来た】


匿名1:「おいおい、また来たぞ……件名が変わってる」

匿名2:「12人に送れって……え? 今回は助かる系?」

匿名3:「誰か試したのか?」

匿名4:「えっと……俺、一応12人に送ったけど……まだ来るんだけど⁉︎」

匿名5:「あーあ、終わったな……」


 ――ポロン。(新着メールの音)


匿名6:「待って、誰か返信したらしい……!」



◇◇◇


 

「なるほど……転生者たちはすでに"信じて"おりますのね」

 

 私は夜空に広がる無数の星々を仰ぎながら、静かに言葉を紡ぎました。


「私の手の中にあるのは、ターゲットの魂だけではございませんのよ?」


 この世界の理は、ただの噂話を"偶然の戯言"で済ませるほど単純ではございません。


 転生者たちが恐怖と不安を募らせ、それを語り継ぐほどに……その噂は呪いの力――「呪力」を帯びて実体を得ていく。彼らが「オオアリクイのメールは呪いだ」と囁けば、それはいつしか呪詛として根を張り、彼らが「返信した者は消える」と怯えれば、それは次第に現実を歪めるのです。


「そして、それを可能にするのは……」


 私の手の中にある、このガラケーという呪具ですわ。復讐を願い続けた一年間、その思念がこの道具を染め上げたのですもの。


 もはやこれは、ただの通信機ではございません。私の憎しみと怨念を宿した、呪詛を届ける"媒体"に過ぎません。転生者たちが自らの噂に怯え、恐怖を糧に怪異が育っていく様子を……ただ私は静観するだけでいいんですもの。

読者の皆様のブックマークやイイね、レビューは、作者にとってとても大きな励みになります。また、感想などもいただけると、次回以降の執筆に一層力が入ります。ぜひお気軽にコメントをお寄せください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ