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ピンぼけの記憶
きみの顔 きみの姿 色鮮やかに
きみの言葉 きみの声 音鮮やかに
私の心に精緻に刻まれ
劣ることを知らず
思い出は美化され
瑞々しく若々しく
老いることを知らず
されど
きみを想いし景 相愛に定まらず
きみを忘れし影 悲嘆に定まらず
きみの記憶 そのものが 定まらない
少しずつ 焦点がずれていく
カメラのピンぼけのように
私の記憶から
きみそのものが消えてしまう
思い出すこともなくなる
それが──何よりも怖い
何よりも恐ろしい
でも――でも――
忘れてしまう忘れていく
私の頭から無情にも
きみがこぼれていく




