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車窓
ガタンゴトン 電車が揺れる
車窓に流れゆく 誰かの郷里
胸に抱くは父母への怒り
一人暮らしを反対され
ケンカ別れして飛び出し
独り電車に乗り 宛なき都会へ
不安と解放が渦巻いていた
一人暮らし 仕事探し
離れて知るは 父母の愛と生活の苦労
涙を流して 今更のように気づいて
故郷が恋しくて
たが ここで戻っては何の意味もない
踏ん張るのだと強く決意し
ガタンゴトン 電車が揺れる
車窓に流れゆく 誰かの郷里
胸に想うは父母への緊張
愛しい人ができ 結婚の挨拶のために
二人電車に乗り 懐かしき故郷へ
手紙で報せてはいたものの
久しぶりに出会った父母は
本当に驚いていた
真っ先に あの時飛び出し
連絡しなかったことを謝る
父母は許してくれた
結婚も許し祝福してくれた
隣にいるあなたと見つめ合い
安堵と喜悦を抱き 心から笑う
帰りの車窓 映るは私の郷里
胸に抱くは 不思議な気持ち
見送る両親に手を振り──
電車は出発する
また帰ってくるから 今はさようなら




