あなたを待っているの
駅のイルミネーション 大きなツリーの下
私はあなたを待っている
ねえ あなたはどうして来ないの?
周囲のカップルたち とても楽しそうだよ
私は独り ここに立ち続ける
あなたが来るのを 待ち続けているの
ずっと待っているの
ここから動くことはできなくて
駅から来るはずの あなたを待ち続けている
あの日『電車に乗ったよ』のメールが最後で
あなたに会うことはできなかった
なんでなのかわからない
だけど私はここにいる あなたを待っている
もう限界だよ 本当に寂しいよ すごく怖いよ
聖夜の明るさは遠ざかり 影と闇が迫ってくるの
私を狙っているの
闇に囚われれば 二度と戻れない
きっと温かな光には たどり着けない
私も漂うのだろう
だれかさえも忘れて なにかさえも分らなくなって
お願い お願いだから
私に会いに来て 私をたすけて
もう怖い思いも 寂しい思いもしたくない
ここで動けないことも もういやなの
初めて── 初めて──
なぜか涙が溢れて 何度も何度も こぼれ落ちていく
涙は光となり弾けて 私を包みこむ
あたたかな光は 道筋を描き 私の身体は動く
駅へ向かって走って走って
その先にあるのは──あなた
ようやく……ようやく……会えた!
待ち続けていた私の待ち人
大好きな私だけの愛しい人
あなたは確かに 私を見つめている
大人びてしまったけれど やさしい瞳は変わらない
あなたは 何度も私に謝り
ようやく会えたと告げてくれた
あの日 会えなかった理由を聞けば
電車が遅れて『動かなくて』とメールしたのに
私から返事はなかった
電車が着いて あなたが見たのは 人だかりとパトカー
女性が刺された聞いて それが私だと知った
病院に駆けつけても間に合わなくて
私は死んだのだと告げられた
あなたは私を抱きしめる
何度も謝って 強く抱きしめてくれる
ようやく思い出す 失われていた記憶
自分が死んだことさえ 本当に気づかずにいた
あなたに会いたい 心だけが残り
私はここに佇んでいた
私が死んだのは
もう五年も前の話
あなたはその事実を告げる
私はまた泣いて 大声で泣いて叫ぶ
あなたに会いたかったこと
あなたを待ち続けたこと
独りは寂しくて 闇が怖くて
動けないことがつらかった
感情のすべてを
あなたにぶつけることができた
影と闇は遠ざかり 熱と光で満たされていく
あなたの温もりを この全身で感じたよ
あごに手をかけられて 気づけば口づけされて
あなたの熱い眼差し
深く深く口づけられて 私も強く抱きしめる
きっと一番望んでいたことは この瞬間
あなたの愛の瞳 口づけの深さ この抱擁だったのかもしれない
されど再会の抱擁は 別れの抱擁でもあるの
別れの時が迫ってきた
私は逝かなければならないの
身を離して お互いに見つめあう
不思議と寂しくなくて悲しくなくて
お互い微笑みあう
天の光が見えてきた
私の姿は少しずつ光になっていく
本当の別れの時──
私の代わりに幸せに生きて
苦しくても こっちにきちゃだめだよ
あなたが来るのは
自分の人生を幸せに生きた時
それまでさようなら
私の大好きなあなた




