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夢幻の花よ・稀な毒の花は
【夢幻の花よ】
夢幻の花よ 咲き誇りて
散ることはなく 遊び揺らぎ
かぐわしき香り 引き寄せて
見るものを 魅せし惑わし
捕らえて 絡めて 離さず
気づけば 逃げられない
すべてを吸い 食らいて
夢幻の糧に 快楽与え
新たなる餌を求めて
夢幻の花は 無限に咲き誇る
【稀な毒の花は】
茨の棘に咲く 稀な毒の花は
この世界にある──
どの花よりも美しい
どの花よりも香しい
どの花よりも猛毒で
まるで傾国の美女 悪しき女たちの化身
鮮やかな色 鮮やかな匂いをまとう
誘い込むのは人間である
近づいた者は 茨の花の本性を知る
だが気づいた時には もう逃げられない
茨は仮の姿 毒花は囮
本性は化け物である
人を喰らうために 擬態する異形である
『茨』に『毒の花』
見た目は危険極まりないというのに
誘い込まれる人間は後を絶たない
それほどまでに『美しい』からである




