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帰還

「さあ 行きましょう」


 夏祭り にぎわい遠ざかって 夜深く

 浴衣着た狐面の少女と手をつなぎ

 提灯(ちょうちん)持って下駄からころと

 満月照らす山の階段へ 一段一段上がって

 赤い鳥居をくぐってくぐって

 今度は森の道 どんどん奥へ


「まだ先よ」


 光虫ただよう その先はどこ?

 きみは俺をどこへ?

 道の奥に見えてきた建物


「ほら 行ってごらんなさい」


 狐面の少女は立ち止まり 俺の手を放す

 奥へ進めば 大きな社 大きな一本杉

 どこからか鈴の音 どこか懐かしいすべて


 しゃらしゃら しゃらん しゃらしゃら しゃらん

 しゃらしゃらしゃら しゃらしゃらしゃら


 鈴の音は大きく響く 白い光が弾けて


 ──あぁ──俺は──


 本当の自分を思い出す

 

「お帰り」

「おかえりなさい」

「待っていたよ」


 山の精霊 動物 妖たちが 俺を出迎えてくれる


「ご帰還をお待ちしておりました。山の神」


 そして狐面の少女が面を外す 美しい顔 懐かしい顔

 少女は微笑む 俺への変わらない思慕


「お帰りなさい、私の旦那様」

「あぁごめん。ただいま」


 妻を抱きしめる 俺はこの山の神


 はるか遠い昔 人は神を襲った

 肉体はばらばらに 一部を残し信仰に

 肉片や内臓を食べ 自らの力とした

 神の力を利用し 強引なる豊穣に発展 人は不老となる 

 人は山の獣よりおぞましい獣だ

 貪欲で残酷 利己的で凄惨


 だが今 俺は戻った

 人に巡った一切を消滅させる

 代わりにまき散らす呪詛 瘴気 腐敗

 俺は二度と人と関わらない

 この一帯を結界で覆う

 妻と山の者たちと 静かに暮らすだけだ

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