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虚像
絵画のような 大きな姿見
そこに映るのは 私とあなた 小さな軌跡
出会ってから付き合って 両親に挨拶し
結婚式を挙げ 普通の生活をしていた
だけどだけど──
全部それは偽り 嘘でしかなかった
あなたにとって 私との生活は隠れ家
本来の仕事をこなすための虚構
私への愛情は初めからない 騙されていた
いつの間にか 手の中に石がある
結婚指輪を外し
笑顔で微笑む夫婦像に
石とともに 投げつけてやった
衝撃音とともに 私たちに亀裂が入る
消えていく姿見 堕ちていく私
着地した先の暗黒に
一筋の光が差し込んで
そこにあなた──否 お前がいた
お前はこの国にとっての害悪
せっかくの平穏をぶち壊す奴
隣国の内通者
私にとって最大の裏切者
"それ"は なぜか絶対にうまくいく
そして誰にも気づかれない
ならばやることは一つ もう決まっている
手の中にある鋭いナイフを しっかりと握りしめる




