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一目惚れは一時の夢
あなたとの出会いは一目惚れ
他の殿方は一切映らなくて
瞬時にあなたに魅せられる
心が湧いて 胸が熱くなって
鼓動が鳴って 息を飲み込んで
独占する
お願い私を見て 私だけを見て
その瞳で虜にさせて
一心に願ったら
あなたは私を見てくれた 微笑んでくれた
もうそれだけで夢のよう
けれど紛れもない現実で
途端に私は己を恥じいた
私は男爵の小さな令嬢
この日のために
がんばって着飾ったドレス
メイドが丹念に施した化粧に繊細な結髪
どれもみすぼらしい
地味で華やかさのない女
周りの御令嬢は
爵位も作法も容姿も文句なし
誰もがあなたに釣り合い ふさわしい淑女
己の美を熟知 気品と富のある会話を
盛んに弾ませている
私はそこに入り込めない
会話に花を咲かせることもできない
それでも
あなたの隣に立ち ともに過ごせたら
どんなに幸せでしょう
一曲だけでいいから あなたと踊れたら
どんなに楽しいでしょう
けれど あなたへの一目惚れは 一時の夢
あなたの隣には 相応しい婚約者がいるから
だからね 微笑んでくださったことで 満足なの




