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あなたを忘れない
あなたを忘れるくらいなら
感情を失ったほうが
どれだけマシだろうか
薔薇の棘をとって
無事なままよりも
突き刺して
流した血と痛みを
刻みつける
しかし今は
流した涙の意味が
分からなくて
あなたを見つめても
私の恋人だという
事実はわかっていて
でも知っている他人
というような
奇妙な乖離が襲う
それでもあなたは
私にいつも微笑み
愛を告げキスしてくれる
名前を呼んでくれる
だから……なのだろうか?
微かに私の胸がうずくのだ
記憶の片隅で
やさしい温もりがする
心の奥底の私は
必死に叫んでいる
あなたに向かって手を伸ばし
私は完全に
あなたへのすべてを
失ってはいない
いつか──
呪いが解かれるのならば
それはあなたの愛が呪いに
勝ったということ
私は心の奥底で
あなたを忘れない




