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『孤月』四詩

1、


冬の夜 極めて零下

窓から月を眺める

極めて白く 淡い光を放つ

切なき思い浮かぶ

過去が揺らいで 涙が零れる

静寂(しじま)(かいな)が わたしを包む



2、


夜空に漂う月よ

雲に隠され 姿を消しても

風に流され 再び現る


静かな水面に映り

揺れる波間で 形を変えても

輝きは失われない


傷ついた光も 欠けた輪郭も

静けさの中で ひとり抱きしめる

それでも夜を照らす ただ在るために



3、


やさしい月の光

いつも見上げていた

窓辺から照らす影は寂しげで

心の奥に揺らぐ波紋は 薄く遠く

脳裏に何か浮かべど 輪郭はぼやけたまま

胸がただ静かに痛む

涙こぼれど理由も原因もわからず

漠然とした喪失のみが漂う


それでも――

月はいつでも

私を静かに見守っている



4、


遠い月の記憶 遥かな旅路

漂白の旅人 永久の不死者


移ろう時代 変わる人々

常に流れゆく国々と争い

歴史の脈動の中

奇跡を灯し 英知を授け

人に神を唱え 国に文化の種を


人間の発展の裏に

彼の者が関わっていることは

誰も知らない


彼の者は

大地を歩き 月を見上げ

出会った人々を想う

終わった国々を思う


いつしか途絶え

いつか忘れられ


誰にも知られぬまま

彼は砂漠の上で最期を迎えた

ただ 月だけが静かに見つめていた

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