水鏡
わたしは夢の世界で あなたと巡り会った
あなたは魂のつがい わたしの無二の半身
夢ではどんなに焦がれても
目覚めれば現実 圧倒する生活感
全ては何もないのだと 突きつけられる
夢と現実の境はどこ? 壁はどこ?
あなたは確かに存在する
ねえ あなたの現実はどこにあるの?
ねえ あなたの世界はどこにあるの?
どうやって わたしたちは巡り会えたのだろう?
閉じた瞼の 深き闇の 海の底
夢をどんなに重ねても どんなに見ようとも
開いた瞼の 起きた光の 空の果て
現実にはつながらない
わたしの願いは叶わないの?
柄にもなく 神社の神様に願う
神様 神様 お願いです
あの人のいる世界に行きたいのです
あの人に会いたいのです
あちらにわたしの居場所があるのです
こちらのわたしが消えても構いません
なぜか雨が降った 小さな水たまり
水の音 泡の音 波紋の揺らぎ
脳裏に水が弾けた
その日の夜はいつもと違った
あなたとのつながりを強く求め ただ願う
お互いをつなぐは ただ一つ 眠りの楔
わたしの意識 あなたの意識
重なる意識 交わる心 焦がれる魂
神に通じたのか すべてが融けて沈み
泡沫の底に 水鏡が浮き上がる
わたしとあなたは向かい合う
手を伸ばせば あなたも手を伸ばし
お互いに頷きあう
きっとこの機会は二度とない
おいで こっちにおいで
行きたい そっちに行きたい
差し伸べられた手が 鏡から伸ばされ
わたしの腕を強く引っ張った
ごぼりと水の音 ぶわりと水の泡 ゆらぐ波紋
存在は曖昧となり わたしはついに あなたに辿り着く




