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異世界症候群は死の夢さえも殺せない  作者: 凡人a
一日目 狂おしいほど、血が欲しい
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07:00 またここで

 カチ


 ナミダは目を覚ます。

 今日は目覚まし時計がないはずなのに、止めた気がする。いつもの癖が抜けていないのだ。彼は腕を伸ばし、目覚まし時計が本来あるべき場所にむにゅん――


「「んぇ」」


 爆発した眠気から目覚めるこの感触。柔らかくもどこか懐かしい――いや、間違いない。ナミダがカッと目を見開くと、カエナの持つ双極の泡沫をつかんでいた。


「おおぉ!! すげええええぇ!!!」


 いつ練習したかもわからない『跳ね起き』を披露しながら、ナミダは起き上がった。ダン、としっかりと着地も成功し、半身を回転させながらカエナに向けて手刀を向けた。


「んん……? お~カンフー映画なの? 体操選手じゃなくってー?」

「なんでそんな無防備なんですかね!? 寝ぼけながらアーマープレート脱ぐ習性でもあるのかよこの距離感0女は!!」

「あははは、タナトスくん顔まっかっかだね、今流行りの激辛韓国料理食べたの? トッポギ?」


 まったくこの女は! 寝る前はちゃんとプレート着たままだったのに、朝起きたら一枚脱いでたってアニメのヒロインか何かかよ。いや、ただ単に脱ぎ上戸なだけだったかも知れないし、もしこの人とお酒を飲むときは気を付けないとな……。

 うんうん、と勝手に納得するタナトスを尻目に、カエナは転がっているプレートに手を伸ばした。がっちゃんこがっちゃんこと音を立てながら、彼女は味気のない鎧を着こなした。


「がっかりしてもいいんだよ、なんならこの下にあるシャツも脱いでやろうか、げへへへ」

「僕はね、18歳を過ぎるまではアダルトビデオも見ないし、コンビニで売ってる表紙に『清純派アイドル○○、カメラの前で脱ぐ!』とか『40歳美熟女、夜の街で蝶となる』みたいに書いてある週刊ホニャララみたいなやつも読まないような純粋無垢なキャラでいたいの!」

「ああ、あの裏面にこの電話番号に電話するとエッチな人妻が出てくれるよ~ってやつ?」

「そうそう、あとは男性の勃起力を上げます!! っていう怪しい薬の紹介とかしてるやつね」

「だいたいあれだよね、大人のおもちゃ紹介コーナーみたいなのもあるよね。このローションが今熱い!! みたいなやつ!」

「ってかなんでそんなに知ってるの!? 読んだの!?? 週刊〇〇!!」


 朝からこんな話で盛り上がれるほどに二人が思春期だったのか、それとも繁殖の季節だからなのかは分からないが、もし後者だとしたのならやはり今の時期は4月なのだろうか。


「はー、そんなことはどうでもいいんだけどさ。カエナさん、今日はどうする? このまま夜11時まで待つっていうのもあれだし、探索とかする? この辺とかさ」


 そういえば全く考えていなかったが、この世界にはクリーチャーのような存在があるのだろうか?

 ナミダは周辺を見渡すが、人畜無害そうな鳥たちの捕食相手は虫や水中にいる稚魚だけだ。


「寝てる間、スライムや吸血コウモリにも襲われることなかったし、この世界にモンスターは存在するのかな?」


 カエナは思いついたことはとりあえず言ってみるタイプなのか、はい! と勢いよく挙手した。


「アタシたち普通に一夜を超えられたんだよね。たった4時間くらいだけど。村に行く途中もそういうのに遭遇しなかったし――」


 カエナは、視線を落とす。一息入れて、こう言い放った。



「アタシたちの敵は、アタシたち以外の195人。そうでしょ?」



 その言葉にナミダはう、と言葉を詰まらせる。そうか、199人のうち4人が次の世界に転生することができる……。ナミダとカエナ、そして巡り合う残りの二人以外は全員敵らしいが。

 一番に考えなきゃいけないのは、誰もここで手を掛けることなく帰宅することなのだ。一般人にはあまりにも急展開すぎるし、そんなデスゲームを異世界で繰り広げようなど毛頭もない。


「よぉし行こうーっ我らが道に光あり! わぁーっはっはっは」


 カエナが背を向けて、歩を進める。昨日よりも冷たい風が、川の向こうからやってくる。それを追い払おうとしてナミダは髪をかき上げた。


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