24:01 出会い
ナミダはもう一度振り返ったが、さきほどの少女はすでにその場にはいなくなっていた。
「きみ、大丈夫? すっごい顔色悪いよ。保健室でも行く?」
代わりに、繊細とは真逆そうな女の子が手を差し伸ばしてきた。
手相占いは女子の手に触れられる絶好の機会ではあるが、ナミダは「誰?」ってそっけなく対応した。
「うわつめたー! そっけないのに実は優しい男はちょろい女の子すーぐ沼っちゃうよ?」
「……あなたがそういう女性じゃないって分かってたからそっけなくしたんですよ」
「え、ちょ、アタシそんな風に見える!? 意外と沼りやすいよ~、優しくされただけで好きになっちゃうのだ」
見えるよ、だって手相にそう書いてある。そう言いそうになったが、「てかなんで僕が優しい男だって知ってるの? 初対面のお姉さん」と、得意そうなウィンクを見せる女に尋ねた。
「きみ、真っ先にさっきの男の人助けようとしたじゃん。なかなかできることじゃないよ」
少女はにこっと笑いながら、もう一度ナミダに手を差し伸ばした。少し悩んだ後に、手をつかんでゆっくりと立ち上がった。
「アタシの手の感触をオカズにしちゃダメだよ、帰ってちゃんと手を洗ってよね」
「中学生か! アイドルの握手会じゃあるまいし、ちゃんと重曹を使って洗いますよ」
「中学生じゃないの? ぼさぼさ髪の田中タナトスくん」
「おい変な名前付けるなよ、日曜に古着屋巡りとか好きそうなお姉ちゃん」
ぎゃははは、と周囲の注目を一身に浴びるくらいのバカでかい笑い声。見た目に反して見た目通りな性格のこの女だが、釣られて笑いそうになってしまうのは人間の欠陥か。それか、不思議なことを目の当たりにしたせいでナミダ自身もおかしくなってしまったのだろうか?
お姉ちゃんとは言うが170前半のナミダに対してカエナの方が身長は小さい。背伸びしてようやく同じ寄り少し下くらい。朝5時の駅前に落ちてるゲロみたいに汚い金茶髪がかなりのインパクトだ。
「アタシは涼風加惠奈ね。カエナさんって呼んでいいよ」
「はいはい、よろしくお願いしますねカエナさん……」
「ねえ、これからどこ行くのー? アタシも付いて行っていい?」
「ええー……あんまりうるさくしないならいいけど」
「うん! あんまりうるさくないようにずっと喋ってるから大丈夫!」
この女は、今の話を聞いていたのだろうか?
前世では歩く騒音機なんてあだ名を付けられていそうだな、と想像してナミダはため息を吐く。
人間はとりあえず群れる生き物だ。その習性はネクストでも変わらないし、今は情報収集が先決だろう。
カエナと名乗る少女は仲間になった! とでも言えばいいのだろうか。