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ぼくのおもちゃはどこに?

作者: 無名で無意味な僕

「パパもっとあそんでぇ」

「ごめんな。すこし休ませてくれ」

「いじわる」

「パパはいなくなったりしないから、すこしおもちゃで遊んでてくれ。あのおもちゃすきだろ?」

「わかった」

 ぼくはおもちゃとあそんだ。


 めがさめるとおもちゃがなくなっていた。

「ねぇ、ぼくのおもちゃしらない」とぼくはママにきいた。

「もしかしてなくしたの?ちゃんと探しなさい」

 ぼくはさがした。

 いろんなところをさがした。

 おもちゃのはこも、タンスのなかも、おふろのなかも、せんたくもののなかも、ソフォのうらも、ふとんのなかも、トイレのなかも、さがした。

 いえのなかぜんぶさがした。

 けれどみつけられなかった。

「ねぇパパ。ぼくのおもちゃしらない?」

「それはどんなおもちゃだ?」

「ぼくのたいせつなおもちゃだよ。いっしょにさがしてよ」

「ちゃんと探したのか?」

「うん」

「じゃぁ、いつか出てくるよ。見つかるまで他のおもちゃで遊びなさい。たくさんあるだろ?」

「パパきょうつかれている?」

「ああ。朝早かったし、今日は大切な仕事だったからね。とても忙しかった。パパ凄いんだぞ?大きな仕事が成功したんだ。だから、パパ偉くなるかもしれない。」

「すごいね。どれくらいえらくなるの?」

「うーん。おもちゃを毎週買ってあげられるくらいかな。」

 パパはぼくのあたまにてをおいた。

「よし。じゃぁ、おもちゃがみつからなくても同じものを買ってやろう。ママには内緒だぞ?」

 パパはつぎのおもちゃをかってくれた。

 ぼくのおもちゃはみつからなった。


 ぼくはすこしおおきくなった。

 ともだちができた。

「カズマくんはいえでなにのおもちゃであそぶの?」

「おもちゃ?ゲームのことでしょ。タブレットでファイトチームをやってる」

「それってどんなゲーム?」

「おもしろいゲームだよ」

「カズマくんはおもちゃをなくしたりしないの?ぼくなくしちゃったんだ。」

「なくさない。つかいおわったらじゅうでんきにさすからなくさないんだ。いつものところにおいておけばなくさないよ」

「いつものところにおいたけどなくなったんだ。どうすればみつかるとおもう?」

「おかあさんがそういうのはまてばでてくるっっていってた。」

 おもちゃはでてこなかった。


 ぼくはすこしおおきくなった。

 小学生になった。

 ようちえんにいたときよりも、ともだちがふえた。

 ぼくはいろいろなあそびをした。

「タケシは家でなにしてあそぶの?」

「マイケルてゲームであそんでいる。めちゃめちゃおもしろい。」

「サッカーとどっちがおもしろい?」

「うーん。ひとによる。じょしとサッカーするよりはおもしろいよ。おまえはなんのゲームであそぶの?」

「ぼくゲームはしないんだ。おもちゃであそぶ。」

「うわ。おまえこどもじゃん。おかしいよ。」

 つぎの日ぼくはみんなにからかわれた。

 とてもはずかしかった。

 もうおもちゃであそべなくなった。


 小学四年生になった。

 女子とあそばなくなった。

 女子と遊ぶとへんたいといわれる。

 へんたいといわれたくないし、女子と遊んでもおもしろくない。

 女子はなかであそぶから面白くない。

 ぼくは外であそぶのが好きだ。

 ほうかごは友達とサッカーとか、おにごっことか、缶けりとかをしてあそんだ。

 まいにちあそんだ。

「なぁ君たち。うるさいんだよ。すげー近所迷惑。どこの学校?」

 だれもなにもいわなかった。

「黙ってねぇで早く答えろよガキ!!殴るぞ。それとも蹴られたいか?ああ!」

 知らない人はすごく大きな声を出した。

 ぼくたちは学校と自分の名前を行った。

 次の日先生にすごく怒られた。

 ぼくは外で遊べなくなった。

 

 小学校を卒業し僕は、中学生になった。

 あの日、ぼくが遊んで怒られた公園の遊具は撤去されていた。

 けれど、僕はもう公園では遊ばないから関係ない。

 僕はサッカー部に入った。

 サッカー部は朝と放課後に毎日練習がある。

 練習はとてもつらい。

 楽しくない練習もある。

 けれど、試合は毎回楽しかった。

 僕は試合に出るために一生懸命に練習して、自分の代の時のレギュラーになることができた。

 サッカーは楽しい。

 けれど、毎日休みたいと思った。

 それに勉強もしなければいけないから、とても大変だった。

 空腹は最高のスパイスという。

 それと同じように、僕はたまの休みをすごく楽しむことができた。

 僕はアニメを観るのが好きだった。

 休みの日は、まだ見たことなアニメを一クールまるまる観たり、シリーズを通して観たりした。

 お菓子を箱買いしたときのような特別感があった。

 ジャンルを問わずに観た。

 深夜にやっているアニメは、漫画やライトノベルを元につくっているということを知った。

 たまたま本屋で、ちょうど観終わったアニメのライトノベルがあったので、買って読んでみた。

 今まで本をほとんど読んでこなかったけれど、一日で読み終わった。

 僕はアニメ以外のものも観るようになった。

 僕は朝の学校での読書の時間にライトノベルを読むようになった。

 今までずっと、教室の後ろにある学習漫画や短編集をてきとうに読んでいたので、クラスメイトであり、同じサッカー部の奴に話かけられた。

「自分で本持ってきてどうした?何読んでいる?」

「小説」

「いや、そりゃそうだろ。どんな本?」

「ライトノベル」

「それってあれだろ、オタクが読むキメェものだろ。おまえオタクだったのかキメェ。」

「いや、別にキモくはないだろ。なんでキモいんだよ」

「はぁ?何言ってるのお前?普通の人はそういうの読まないんだよ。読むからキメェんだよ」

 そう言ってそいつは僕の本を取り上げた。

 ページをパラパラめくり、本が破れそうなほど乱暴に挿絵のページをひらいた。

「お前こういうエロい小説読んでいるんだ?マジきめぇ死ねよ。」

 どういう展開でそうなったのかわからないけれど、ヒロインの裸のイラストだった。

 凄くイラッとした。

 本を乱暴に扱われたし、ネタバレをされた。

 そいつは本を持ち出し、裸のページをいろんな人に見せ、それを僕が読んでいたことをクラス中に伝えた。

 そいつのことを蹴りまわしたいほど、怒りが沸々と湧き出た。

 授業が始まってもそいつは僕に本を返さなかった。

 クラスメイト全員がクスクスと僕を笑っているような気がした。

 その日の授業中に三回紙を投げつけられた。

「死ね」

「キモイ」

「病院に行け」

 と書いてあった。

 本は部活が終わった後に返してくれた。

 本はグチャグチャになっていた。

 僕は家で泣いた。

 

 僕は高校生になった。

 僕は完全なオタクになっていた。

 僕が通う学校はスクールカーストとか、陰キャと陽キャとか、そうやって人間を区別する人間が非常に多い。

 当然僕は陰キャに割り振られている。

 僕は陽キャが嫌いだ。

 無駄に五月蠅い上に、自分達中心に世界を回っていると考えている。しかも、意味もなく学校に高級なものを持ってくる。値段が高いだけで機能性なんてものはない。ロゴに金を払う人間を世界で一番愚かな人間だ。全く理解することができない。けれど、少し理解することができた。あれはクジャクの羽と同じだ。高級品を身に付けたり、それに近いモノ―最新のスマートフォンやゴツゴツしたベルト、ブランドの靴を履いている人は、僕のような人とほとんど関り合いをもたないような人間にもわかるくらいモテていた。面がよくて、スカートを短くする女にモテていた。ブランド品をつける=彼女ができる、ではないにしろ、まったく機能性がないわけではなかった。少なくとも、僕の高校、いや目に見える範囲では。

 それに僕はそういう奴のことを馬鹿で、クソみたいな奴-人の本をグチャグチャにするような奴だと買ってに思っていたけれど、必ずしも全員が全員そういう奴ではないということを知った。

 言いかえれば、そういう奴もいるということだけれど。

 高校一年の二月末、僕は陽キャが僕に話かけた。そいつは僕の中ではチャラチャラしていて、ロクでもない奴だったけれど、話がわかる奴だった。

「ねぇ、いっも何読んでいるの?おもろい?」

「うん。面白いよ。」

「なんて本?」

「さあ、素晴らしきこの世界で」

「何系?」

「シリアス系」

「それ今度読ませてくれない?」

「なんで?」

「読みたいから?」

「アニメがあるから、それから見る方がいいよ。それに、映像をイメージできる方がおもしろいと思うから。」

「へぇそっか。じゃ、アニメから観てみるは。サンキュー。」

 次の日、そいつは朝一番に僕のところにきて、アニメの感想をいった。

 放課後、僕とそいつは本屋に行き、僕のおススメ本を買った。

 しばらくするとそいつは陽キャからハブられるようになった。

 二年生の時、僕とそいつは別のクラスになった。

 そいつがその後、どのような高校生活を送ったのか僕は知らない。

 僕はそいつのことを何も知らない。

 連絡先も、名前も知らない。

 どうでもよかった。


高校二年生の時に初めてのガールフレンドができた。

 その子とはバイト先が同じで、その子から僕に告白をしてきた。

 筋肉のおかげだと思った。運動しないとデブると思って始めた筋トレのおかげで、高校生にしては僕はいい身体をしている。それに、自分でいうのもあれだが顔もいい。

 高級品の気持ちがわかった。

 高級品とは、つまりステータスであり、値段が高くなくても、所有者を価値のある存在だと周囲に知らせるものであればなんでもいい。なんなら、自分が満足できればいい。限定グッズと同じだ。陽キャだろうが、陰キャだろうが、オタクだろうがなんだろうが、みんなステータスが欲しいのだろう。

 女子高校生にとって、彼氏がおり、顔がよく、しかも筋肉質、というのはお金では買うことができないステータスだ。さぞ欲しかろう。

 僕の性格があの時から、捻くれてしまいこんなことを考えてしまっていると一瞬思ったけれど、直ぐにどうでもよくなった。

 僕はオーケーを出し、三か月後に初めてのセックスをして、大学を進学すると同時に別れた。

 悲しくなかった。


 僕は大学生になった。

 大学生の時、僕はガールフレンドが沢山できた。正確に言えば、沢山の女性とセックスをした。酒も覚えた。沢山本も読んだ。たったそれだけの大学生活だった。

 僕は大人になった。


 僕は就職して働いた。

 トニカク沢山働いた。

 そして、鬱病になった。


 僕は自分の人生を振り返った。

 何もない人生だった。

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