前編
ある日、とてもしずかな森の中で、こぐまのクマンがわるいキツネたちにさらわれてしまう事件が起きました。森の中はおおさわぎで、おさるさんやうさぎさん、クワガタさんやからすさんがいっしょうけんめいに辺りを探しましたが、クマンは見つかりませんでした。たぬきのポンチは友だちのクマンがいなくなったことを悲しみ、彼を取り返すために旅にでることにしました。
「よしっ、待っててねクマン。ボクが、かならず助けにいくからね」
ポンチは小さなリュックサックを背負うと、まず村の長老のところに向かいました。長老のかめきちさんは今年で85才になります。
「ほうほう、そうかそうか、キツネたちのすみかへ、いきたいんじゃな?そうかそうか」
かめきちさんは同じことを2回くりかえすくせがあります。
「そうなんです。でも、ボクひとりでクマンを取り返せるかしんぱいで……」
「そうじゃろうなそうじゃろうなぁ。ではでは、クマンを取り返すために、ちーむとやらをつくるひつようがあるな」
かめきちさんがとてもとてもゆっーくりとうなづいていると、すぐそばの草むらからねこのニャーコが出てきました。
「あたしならやくにたてるわよ」
ニャーコは鼻からまっすぐ左右にのびたヒゲを手でチョンとさわると、のどのおくをコロコロと鳴らしました。
「ニャーコ、手伝ってくれるの!」ポンチはおどろいてピョーンと飛び上がりました。
「ええ。いつもポンチには助けてもらっているから」
「ありがとう!」
ポンチはふかくおじぎをしました。その時、ポンチの前足に、とても小さなクモが1匹ひっついているのに気がつきました。
「オレもまぜてくれよ、そのたのしそうなぼうけんにさ!」
クモのクモスはすばやいうごきでポンチの耳元まではいあがると、そう言いました。
「クモス!きみも来てくれるのかい!」ポンチはまんまるな目をさらに大きく開きました。
「もちろんだぜ、オレにまかせてくれよぅ」クモスは胸を張って言いました。
「あなたそんなに小さい体で、本当にたよりになるのかしら?」
ニャーコはよく分からないといったように首をかしげました。
「おい、ニャーコさんよ、小さいからってオレを見くびってもらっちゃあ困るぜ」
クモスは8本ある足のうち、前の4本を高く上にかかげました。
「あらごめんなさい。いっしょに、がんばりましょ」
ニャーコは前足をそっと上げると、クモスの足に軽く当ててハイタッチをしました。
「じゃあ、ポンチとニャーコ、そしてオレの3匹でいくか!」
クモスはまたすばやいうごきでニャーコの頭に移動すると、大きな声をだしました。
「そうね」
「ちょっと待ってほしいんだ」ポンチはニャーコとクモスの方を向きました。
「あと一人、しばいぬのレオをつれていきたいんだ」
「……ポンチが言うならかまわねぇけど、レオで大丈夫なのかよ?あいつ、かなりのおくびょうものっていわれてるだろ?」
「レオもキツネの森なんてキケンなところ、行きたがらない気がするわよ」
「でも、レオは必要なんだ。レオはふだんは少しだけおくびょうなところもあるかも知れないけど、いざという時にはやってくれるんだ」
ポンチはニャーコとクモスに向かって強く言いました。ニャーコとクモスはお互いに顔を見合わせました。
その時、よこで眠ったようにしずかに話を聞いていたかめきちさんが、ゆっくりと口を開きました。
「ちーむのなかまは多い方がよい。そうじゃとも、そうじゃとも」
「かめきちのじいさんが言うならまちがいねえな」
「そうね」ニャーコとクモスはなっとくしたようにうなずきました。
「じゃあ、レオを呼んでくるね」
ポンチがそう言ってレオの家の方に向かおうとした時、草むらの中からレオが出てきました。
「話は、だいたい聞こえてたよ……」
「レオ!」ポンチはレオの元へかけよりました。
「あんまり自信はないし、足をひっぱるかもしれないけど……」
レオは耳をぺたんと後ろに倒したまま、つぶやくように言いました。
「ぼくなんかでよければ……がんばってみる」
「ありがとう、レオ」ポンチはレオに抱きつきました。レオは少し照れくさそうにしていました。
「てことは、」クモスが8本の足で体を起こしました。
「ええ、そうね」とニャーコ。
「「このちーむで、クマンを助けにいこう!」」
そうしてポンチたち4匹のちーむは、キツネたちのすむ森に向けて出発することになったのです。
ポンチたちはどのようにしてキツネたちに立ち向かうのでしょうか。
そしてぬいぐるみはどこで登場するのでしょうか。
後編へ続く!