47/50
口をつぐむ男達
戦後の日本軍人のタイプは二つに分けられるだろう。一つは米国に媚びを売り口を簡単に開いてしまうタイプ。もう一つは一斉に口をつぐんで何も語らないタイプ。小沢治三郎は口をつぐむ後者のタイプであった。
彼曰く、
「戦争の事は、話す事はおろか、聞くも読むも御免だ。まぁ、そうだな、このままソッと消えていきたい気持ちだよ。」
と、語っていた。
口をつぐむには、それなりの理由がある。少なくとも、小沢治三郎の場合は、多くの若くて将来有望な人間を死なせてしまった、後悔や自責の念があった事は確かである。
自分の経験や体験を後世に伝えるのは大切な事かもしれない。しかし、人間と言う生き物は、頭で理解していても、行動が伴わない事がよくある。
目先の利得に泳がされ無い芯の強さが口をつぐむ日本軍人にはあった。それが日本人の武士道の中核を為すものである。少なくとも、小沢治三郎には簡単に戦争の事を振り返りたくないと言う気持ちがあったのは間違い無い。




