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無力化
本来、情報は目的達成の為の最高に貴重な"武器"とすべきものである。広い海域で、囮部隊と突撃部隊が統一行動をとる為には、精密な機器と緊密な連絡システムが何より必要であったが、情けなくも帝国海軍はそれらを十全に備える事をしなかった。
しかし、それを備えたとしても、情報の整理や精査や分析は可能な限り行わなければならない。例え、戦闘状況が大混乱の中にあろうとも、情報収集と分析とそこから導き出される判断は、冷静に行わなければならない。
ところが、そうした事を全くせずに栗田健男中将は、どこから飛び込んだかのかも分からぬままに、ある一つの情報を反転の判断材料にしてしまう。これにより乾坤一擲、連合艦隊が総力を挙げて戦っていたものが、無力化されてしまった。
何も知らず奮戦していた小沢艦隊を思えば、
「栗田よ。どこから出たのかも分からぬ情報にすがって、目的放棄を合理化したのか?」
と、こんな酷な言い方をしたくなるのも、無理はない事であった。




