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マリアナの七面鳥撃ち
マリアナ沖海戦は、日本軍にとって絶対に引けない、勝利が求められる戦いであった。
しかし、米国の新兵器によりその目標達成はならなかった。その名もVT信管(近接波信管)がその兵器であった。variable-timeの略で、高角砲弾の弾頭内に装着されたレーダーは、目標の数十メートル以内に到達すると、感応して自動的に砲弾を炸裂される。
従来の高角砲に使用されていた信管は、日米同じ様な構造であり、あらかじめ何秒後かには爆発する様に設定されているので、確かな測的技術と、時間設定を信管に与えない限りは、目標に対して効果を発揮する事が出来ない。
これに比べてVT信管を装着した砲弾は、目標が至近してくると、それだけで感知して炸裂するのだから、その威力は絶大であった。
この兵器の登場により、アウトレンジ戦法に固執する事で、日本海軍航空機隊が面白いように打ち落とされていた。まるで飛べない七面鳥のように撃墜された。米軍はこれをマリアナの七面鳥撃ちと揶揄された。




