表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/300

3.タタンのステップ

 おやおやとプラシドを見送り、室内の人が立ち始めた。

 ――ととん。

 軽い音に首を巡らせると、すらっとした足が目に入る。

「こんにちは、エーヴェちゃん! 私、ルピタ! すっごく待ってたよ!」

「おおお!」

 わっと立ち上がる。よく通る明るい声。並ぶと、私よりちょっと背が高い。

「エーヴェだよ! ルピタたん」

 勢い余って、かんだ。

 ルピタは黒曜石の目をきらっと光らせて、あはは、と笑う。

「ルピタターン、ルピタターン、タタンタンタンタン!」

 歌いながら、その場でステップを踏む。

 部屋を出ようとしていたカジョやナシオがこっちを見て、笑いながら同じリズムを踏んだ。

「タタンタンタンタン」

 ルピタがもう一度ステップを踏む。

 見事な連携と足さばきに拍手をした。


「すごい、上手」

「そうなの? ここではみんなやるんだよ」

「すごーい、みんなすごーい」

「えっへっへー」

 ルピタはとっても嬉しそうだ。

「ホントは、昨日エーヴェちゃんと会いたかったんだよ! でも、興奮しすぎて、いつの間にか寝ちゃってた! ごめんなさい!」

「今会ったから、大丈夫だよ! ルピタたん」

 あれ、やっぱりうまく言えない。

「あっはっは! おもしろーい! じゃあ、エーヴェちゃんは私のことタタンって呼べばいいよ!」

「おお、タタン! でも、ルピタもかわいいよ」

「ルピタもいいよ!」

「ルピタ、タタン!」

「エーヴェちゃん!」

 二人でぴょんぴょん跳ねる。


 隣のニーノが立ち上がった。

「私はエステルの所へ行く」

「あ、はい!」

「はーい!」

 二人して背筋を伸ばした。

「ニーノ、エーヴェはエステルさんに会えませんか?」

「――そうだな。エステルに確認しよう」

 病状が深刻そうだけど、ニーノのお友達には是非会ってみたい。

 ニーノの(せい)(はく)()の目がルピタを見下ろす。

「ルピタ。エーヴェは座もお泥さまもよく知らない。案内を頼む」

「はい、もちろんです」

 おお、ルピタしっかりしてる。

「エーヴェ、貴様は落ち着け」

「はい!」

 いつも通りの言葉をもらって、ニーノを見送った。


「ニーノさん、かっこいいねぇ」

 ニーノの姿が見えなくなって、ルピタがくるっとこちらを向く。

「お?」

 ルピタは目をキラキラさせている。

 すごい、ニーノがほめられてる!

「プラシド怒ってたけど、言わなくちゃいけないことをちゃんと言ってた。自分の考えを口に出すのは、かっこいいんだってドミティラが言ってたよ!」

 なるほど。見た目じゃなくて、行動をかっこいいって表現するルピタに感心する。

「ドミティラ――、水色の髪の人」

「うん。たぶん今は畑に行っちゃったね」

 見回すと、室内にはルピタと私しか残っていない。

「エステルは心配だけど、エーヴェが来てくれたのは嬉しい! 竜さまに会いたいなら、さっそく行こうよ!」

「行くー!」

 二人で部屋を駆け出した。


「私、寝ちゃってたから、白いお山さま見なかったんだ。見たかったなー」

「エレメントだよ。竜さまじゃないよ」

「え? そうなの?」

 ルピタは渡り廊下を右に折れ、左に折れ、魚の骨みたいな形の階段を駆け下りる。

「エレメントは竜さまの力のぶっしつかなんだよ。意思はないのです」

「でも、羽があって飛ぶんだよね?」

「はい」

「かっこいいなー。見たかったー」

「タタンも竜さま好きですか?」

「好きだよ。エーヴェちゃんは?」

「大好き!」

 ルピタがむっと唇を尖らせた。

「私も、竜さま大好きだよ! とっても大好きだよ!」

「エーヴェも! 竜さまとっても大好き!」

 お互い顔を見合わせて、にんまりした。

 とってもお友達になれそうだ。


 土の上を走って、竹の(さん)(ばし)に着いた。水は暗くて中は見えない。のぞき込んだ顔が、よく映った。

 ルピタは長い竿をつかんで、(いかだ)に飛び乗る。

「エーヴェちゃんも乗って、乗って!」

「これ、タタンは動かせますか?」

「とーぜん! 竜さまは水の中にいらっしゃるもん」

 すごい。竜さまとは全然違う竜の予感。

 筏に乗る。竹を連ねて作った筏で、竹が二層重なってるけど、水が浸みることは気にしてない構造。

 座るとお尻がぬれそうなので、ルピタの近くに立った。

 揺れないといいな。

「行くよー」

 ルピタが竿で、岸をぐいっと押した。

評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 目新しく、はじめてのことばかりで、エーヴェの浮き立つ気持ちがよくわかる。あっちこっちを見て回りたい。水場の暮らしはどこか自由な気風と解放感を抱かせますね。あと涼やか。ニーノの「貴様は落ち着…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ