15.いい一日の決め手
お骨さまが木の上から降りてきて、みんなで水遊びをした。沢くらいの水だと滑らずに水遊びができるみたい。水しぶきを上げて、はしゃぐ。そのうち、ニーノが届けてくれたお昼ごはんを食べて、邸へ戻る道に入った。
邸も屋上から案内する。大人がシステーナからニーノに交替。高い建物とその上からの眺め、干してあるトウモロコシ、石の階段。そんな全部に、みんな大喜び。当たり前の景色なのに喜んでもらえるのって、とっても嬉しい。邸がもっと素敵な場所になるみたい。屋上にいる間はお骨さまも一緒にいてくれたので、お骨さまの顔が近づいて、みんな大興奮だ。鍛錬室に行ったら行ったで、大きな窓から見える竜さまに、見たこともない測定器と、歓声が途切れない。
「タタンも測ってみますか?」
前にニーノがはじけ飛ばし壊した測定器を渡す。いつの間にか新しいのが用意されてた。
開いてる場所を上に、ひじを伸ばして持つ。ニーノが手をかざして、頷いた。
「なになに?」
「貴様も触ってみろ」
開いてる所に手を入れようとしたけど、何かが邪魔してるみたいに入れない。
「固いよ!」
「そーなの?」
「ルピタの特性だ」
「へー――!」
ニーノ以外全員の声が重なる。
「私、自分の特性知らないです」
「まだ幼いからだ。遠からず、はっきりする」
「おおー!」
ルピタの特性、どんなのかな? なんだか強そうな予感!
「私も測りたいー!」
「俺も」
我も我もとなったお泥さまの座の大人から、ニーノが素早く計測器を取り上げた。
「だめだ。貴様らが測るとはじけ飛ぶ」
「ええー! はじけ飛ぶの見たい!」
「だめだ」
ニーノは一言でおしまい。
「これ、りゅーさまの爪です。壊れたら作るの大変なのです」
「え、お山さまの爪?」
おお、逆にみんなの興味が増した。
「エーヴェ、明日にでも倉庫を見せてやれ」
「はい!」
ニーノがこの話は終わりの空気を出した。みんな他の物に興味を移すのに、プラシドだけぶうぶう言ってる。さすがニーノと友達です。
他の部屋を回る途中、ニーノ暦の部屋に着くと、みんなぽかんとした。
「ニーノはエーヴェたちがこの世界に来た日を記録してますよ。エーヴェ、ここに来てから何日ですか?」
「今日で二,八八六日だ」
「おお」
ニーノはさらっと言うけど、仕組みを知ってても数えるのは大変。
「へえー」
「あー……それ、私たちはモモで数えてるよ」
ドミティラが了解した顔になった。
「モモですか?」
「モモまつりするから、モモの季節で一巡り、二巡りって数えるんだー」
ルピタの説明にほーっとなる。
「じゃあ、タタンはここに来てから何巡りですか?」
「八巡りと半分くらい!」
「おお! 分かりやすい!」
……お泥さまの座はモモ暦です!
そろそろ夕陽の時間になるので、竜さまの洞へ向かう。ここはもう大人は必要ないってことなのか、ニーノは邸に残った。
「スーヒも一緒に行きますか?」
食堂で声をかけたら、通じたかどうか分からないけど、とことこついて来た。
「エーヴェ、毎日夕方にりゅーさまに会いに行くのです」
「毎日お山さまに会えるんだ!」
「それは素敵だね」
お泥さまの座、いつでもお泥さまに会えるわけじゃないのか。筏に乗って行かなきゃいけないもんね。
「でも、みんなはお泥さまと一緒に泳げます」
「そうだね。ありがと、エーヴェちゃん」
プラシドがにこにこ頭をなでてくれた。
「りゅーさま! みんなと来ましたよ!」
洞の入口でぴょんっとアピールする。スーヒがとことこ駆け込んでいって、ぴゃっと鳴く。首をあげた竜さまは目をパチパチさせた。眠ってたのかな?
――皆、なにゆえ入らぬ?
振り返ると、みんなが洞の入口で固まってる。
「どうしました?」
駆け戻ると、ルピタはおずおず洞の天井を見上げてる。
「こんなところ見たの初めてだよ」
おお。洞窟はお泥さまの座にはないのかも。
――ばぁ! なのじゃ。
「わぎゃぁ!」
突然響いた声に、みんなが驚いて洞に駆けこむ。
「お骨さま!」
――うぉっほ! みんなとっても驚いたのじゃ。とってもうまくいったのじゃ。
ひょいひょい跳ねるお骨さまを見て、竜さまが体を起こした。
――うむ。友の声にびっくりしたようである。
「うわー、大丈夫? 落ちてこない?」
「すごい、広い、岩の穴」
ハスミンとナシオが洞を見上げてる。
――友の寝床なのじゃ。頑丈ゆえ、壊れないのじゃ。
――うむ。わしが上に乗ってもびくともせぬ。
みんなの雰囲気がちょっとゆるむ。
――む。見よ、今日も日が沈む。
「おお! 見ましょう!」
久しぶりの邸の夕陽。森を赤く染める光に、みんなうっとりする。
「いいねー! いつも竜さまと夕陽見るんだ」
「そうです! 今日もいい一日!」
ルピタににっこり言われて、にっこりを返した。
評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。
是非、よろしくお願いします。




