13.謎の部屋
お泥さまの座のみんなは初めてのお風呂で、ほやほやしてる。
「ふふー、体軽ーい」
「寝っ転がるところないの?」
「その辺に座っておけ」
「ござ敷いてー、ござ!」
みんなは自前のござを敷いて、夕涼みを始めた。
ニーノと一緒にジュスタたち用お風呂の準備をして、結局、夕飯を用意する時間がない。ジュスタが船に残ってた材料で、簡単な夕食を作って持ってきてくれた。
「先に食べてていいよ」
「ぃえー――い、風呂、風呂!」
――久しぶりなのじゃ! ぽはっ!
システーナの腕でお屑さまがぴこんぴこんする。
「お? お屑さまもお風呂好きですか?」
――好きではないぞ! 毎度かいだこともない匂いなのじゃ! しかし、気分が良くなるのじゃ!
「ほー……」
ニーノのお風呂は竜さまにもいい効果があるみたい。
「貴様は皆を食堂に案内しろ」
「はい!」
遠くにガイオとスーヒが戻ってくるのが見えたので、みんな集合だ。
お泥さまの座のみんなは、邸に大はしゃぎ。
「石造りの建物ー!」
「外との壁が厚い」
「この上にも部屋があるの?」
マノリトとハスミンが壁と天井に手を伸ばす。
「これが石のかまど! 使い方、分からない!」
「棚に道具がいろいろ置かれてる!」
プラシドとドミティラが見知らぬ道具にきゃっきゃしてる。
「わー! テーブルでご飯を食べるんだね、エーヴェちゃん!」
「そうです! おお、椅子が足りません」
「エーヴェ、運ぶのを手伝え」
後から来たニーノに呼ばれて、他の部屋に椅子を取りに行く。
食堂が人でいっぱいだ。気のせいじゃなく、いつもより暖かい。今日のご飯は船の続きだから、明日は邸のご飯を用意して、みんなに食べてもらいたい。
にこにこ食事してる間に、ジュスタ、システーナ、ガイオが入ってくる。
「おー、人が多いなー」
システーナがほかほか顔。ガイオもお風呂に入ったみたいで、髪がぬれてる。
「食事が終わった者は寝るぞ」
「はーい」
お泥さまの座のみんなはとっても素直。
「タタンはエーヴェの部屋に来たらいいよ!」
「行くー!」
「待て。使っていない部屋がある」
「お? そうなのですか?」
ニーノが一階の端へ向かう。普段入らないところだけど、寝台が一つある部屋が一つ、寝台が二つある部屋が二つ。
「おおー、お客さん用?」
「まぁ、そうだ。ときどき掃除はしているが、窓を開けろ」
「窓! これ、ガラス!」
ハスミンとドミティラが大騒ぎで窓を開けてる。そういえば、ガラスが入った窓はお泥さまの座にはない。
「掛け布を持ちこめば、皆寝られるだろう」
「私、一人で寝てみたい!」
ルピタがぴょんぴょん飛び跳ねて、大人たちは一つ寝台の部屋をルピタにあてがう。
「タタン、一人の部屋初めてですね!」
「そう! あ、でも、エーヴェちゃんの部屋も行きたい!」
「明日は一緒に寝ましょう!」
ハイタッチして二人で踊ってるうちに、掛け布が用意されて寝床が準備される。
「貴様らも、準備をしてこい」
「はい!」
ニーノから掛け布を受け取って、ルピタの寝台の準備を手伝いに行く。
「大きな寝台ですね!」
寝台は編んだ籐にシーツを敷く形だから、お泥さまの座の床と似た感じかも。
「なんでこんな部屋があるのかな?」
「お、そうですね?」
邸の探検のとき、一応この部屋も見た気がするけど、何も考えてなかった。
「お客さん用か、エーヴェの次の人用かもしれません」
でも、私の部屋にある寝台よりこの部屋の寝台は大きい。
「うーん。ニーノさんはお山さまの座にお客さんが来るのを楽しみにしてたのかな?」
「ぶふっ! そうかもしれません!」
お客さんを楽しみにして、部屋をたくさん用意したニーノは面白い。
掛け布をちゃんと敷いて、寝る準備完了。
「じゃあ、おやすみなさい!」
「おやすみー!」
手を振って、部屋に戻る。
明日からみんなを案内するのが楽しみでうぉほっほしながら部屋に戻る。途中で、ニーノが来た。
「おお、ニーノ! 質問です!」
「なんだ」
「ニーノ、お客さん楽しみでしたか?」
「何の話だ」
ルピタと話してたことを説明する。
「そうか。……まあ、どの考えも正しい」
「ふがぁああああ!」
大きなあくびをしながらシステーナが通りかかる。お屑さまも一緒だ。
「シスー! ニーノ、お客さん楽しみにしてましたよ」
「へー、そっかー」
――何の話じゃ? きちんと説明するのじゃ!
「お屑さまのおっしゃる通りだ。きちんと話せ」
もう一回、ルピタの寝床を準備する手伝いをしたところから話す。すると、システーナがケラケラ笑った。
「あの部屋、ガイオ用じゃねーの?」
――なんじゃと!
「なんと!」
ばっと確認したニーノは無表情だ。
「ガイオさんが邸に暮らすこともあるだろう」
「おおー!」
――ガイオは山と一緒に暮らさぬのじゃ! 吹き飛ばすのじゃ!
お屑さまは相変わらず、ぴこんぴこん憤慨してる。
「そーそー。だから、食堂で寝てんだろ」
……おお、そうか。
「ふっふん! じゃあ、これからガイオサの部屋になるかもしれません!」
「……何のことだ?」
――そんなことはないのじゃ! 吹き飛ばすのじゃ!
もう一回、うぉほっほをしながら、部屋に入った。
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