表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

282/300

12.ただいまのルーティン

 システーナが船をぴょんと飛び降りて、船の側面に当てる器具を動かす。竜さまが頭で船を押して、水平に船が固定された。

 ――うぉっほー! 友の座なのじゃ。戻ったのじゃーー。

 お骨さまが滑空して、森の上をかすめ、そのままばたばた走り始める。

 ――友、大事ないか?

 滑空の勢いのまま森の木を飛び移るお骨さまを、首を巡らせて眺めつつ竜さまが聞く。

 ――うむ! 大事ないのじゃ。

 ようやく勢いが止まったお骨さまが、羽をバタバタ動かしながら方向転換してる。

「ここがお山さまの座……」

「わーすごい。木が増えたねー」

 縄をまとめながら、プラシドが辺りを見回す。

「そうか、プラシドは来たことあります」

「変わった?」

 ルピタが首をかしげると、プラシドはびっくり眼で大きく頷く。

「変わったよー! もっと岩や地面が見えて、木も細くてまばらだったなぁ」

「へー」

 プラシドが来たのはいつのことかな。私が来るよりずっと前なのは間違いない。

 うーん、ちょっと複雑。邸のことはいっぱい知ってるはずなのに、プラシドが知ってる景色は知らない。


「エーヴェ、案内するよ!」

 気を取り直して宣言する。

「そうだね、まずは積み荷を下ろしちゃおう」

「水や食材は後でいい。楽器だけ持って邸へ来い」

 いいタイミングで甲板に顔を出したニーノが、言い放つとさっと船内に戻る。

「ニーノ、早い」

「……まぁ、そうか。暗くなる前に邸に行ったほうがいいよね。じゃあ、エーヴェちゃんにお願いしよう」

「よろしくね、エーヴェ。俺はもう少し船の始末をしてから行くよ」

 ジュスタに言われて胸をそらせる。

「はい! お任せです!」

 ――わしは洞に戻るぞ。

 竜さまがほわぁっとあくびをして、大きく羽ばたくと空に舞う。

 ――おお、友が飛んでゆくのじゃ。……む? ントゥなのじゃ。

 チガヤの原っぱに戻ったお骨さまはバタバタ飛ぼうとしたけど、走ってきたントゥに気がついて飛ぶのをやめる。ントゥが登ってくるのを見届けると、わーっと走り始めた。

 ――ントゥ、友の洞に行くのじゃー。

 走るお骨さまの頭の上で、ントゥは上手にぴょんぴょん跳ねてる。


 お泥さまの座のみんなを案内して、まずは藁のベッドの層に寄る。みんなの荷物――着替えや楽器を取ってから、船を出た。スーヒは姿が見えないけど、ガイオが世話を焼くはず。地面に降りて振り返った船は、ドックに入ったみたいに木の枠で固定されてる。

「すごいな、こんな風にしてるのか」

 ナシオやハスミンがしげしげ見てる。

「はいはい! みんなこっちですよ!」

「みんな、エーヴェちゃんについて来てー!」

 ルピタと二人で呼ぶと、ドミティラがにやにやする。

「はーい、ついて行きますよー」

 目印にチガヤを一本折って、掲げて歩く。

 ドミティラが弦をはじいて、ナシオが太鼓で調子を取ってくれるから、お祭りみたい。

「右に行くと工房、左のほうが邸に近いです」

「工房? ジュスタの?」

 ハスミンがすぐに反応する。

「ニーノが作ったのや竜さまの鱗とたてがみの倉庫もありますよ。でも、今はこっちです」

「はーい」

 太鼓が元気よく鳴ったので、またみんな歩き出す。

「ここが菜園です。ふつうはいない草がだいぶ生えました」

「あー、これがガイオさんが言ってたやつだね」

「はじめまして、ルピタだよ!」

「俺、プラシドー」

 数日離れただけで、いろんな草が入り混じって込み入った菜園で、お泥さまの座のみんなが口々にあいさつする。音楽付きだから、植物たちもびっくりしてるかも。


 のんびり菜園を案内して石のくぐり戸を抜けたところで、遠くに邸の姿が見えた。

「え、あれ、何?」

 ルピタが伸びあがって、邸を指す。

「あれが邸? 思ったより大きい!」

「そうです。空から見ると何でも小さいよ」

「高さは工房と大体おんなじだけど幅があるね」

 ハスミンも小手をかざして、邸を眺める。

「石でできてる?」

 太鼓をたたきながら、ナシオが首をかしげる。

「うわー! すごーい、こんなの初めて見たよー!」

「え、前来たとき、なかったの?」

「なかった、なかったー! いつ作ったのー?」

 ドミティラと話してたプラシドがこっちを見る。

「えーっと、シスが来てから石を掘ってくるようになって、邸が石造りになりました」

「へー、シスが。すっごいなー!」

 ドミティラが感心してて、ちょっと嬉しい。

「そうです、シスはすごいですよ!」

「あれ? 邸の前に、ニーノさんがいるね。何やってるんだろ?」

 ルピタが目を細めてるので、私も隣で目を細める。

 大きな鍋と火が見える。

 ……おや? もしかして。

 風に乗って、ふわっと鼻に匂いが触れた。

「おわー! お風呂ですよ!」

「お風呂?」

 チガヤを振り回して走る。

 手伝わなきゃ!

「わ! なんか、変な匂いする!」

 後ろから走ってくるルピタが鼻の頭にしわを寄せてる。

「うっふっふー! ニーノのお風呂ですよ! よかったねー!」

「え、何々ー? なんで走るのー?」

 プラシドたちも慌てて走ってくる。


「――貴様ら、何をやっている」

 息せき切って邸の前にたどり着いたみんなを、ニーノが冷たい目で見る。

 腕まくりして、ニーノは風呂桶にお湯を注いでた。

「えー、エーヴェちゃんが走ったから」

「お風呂! 手伝います!」

 チガヤを振って宣言する。

 興味津々なみんなの視線を浴びながら、ニーノとお風呂を準備する。薬草の香りたっぷりのお湯ができるにつれ、みんなの目の輝きが消えていった。

「何これ、どうすんの?」

「みんな、これに桶に入ります。すると、体がすっきり!」

「えー――?」

 む? 信用されない。

「風呂桶の数に限りがある。交替で頭までつかれ」

「はい!」

 私以外は、しぶしぶ風呂桶に近寄る。

「本当にこんなくさいのに入って大丈夫なの、エーヴェちゃん」

「大丈夫ですよ。すっきり!」

 交替でお風呂に入ったルピタは、くさい、汚いと嫌がってたけど、外に出てびっくりする。

「なんか軽いね! とっても跳べそう!」

 たたんたん、とその場でステップを踏む。

「そうです。ニーノはすごいよ!」

 しばらくすると、他の風呂桶からも感心する声が聞こえてきた。

「ニーノちゃん、すごい―! 前来たときはこんなのなかったじゃーん!」

「帰りに持たせる。お泥さまの座に着いたときもやれ」

「わー! ありがとー!」

 おお、すごい。邸の文化がお泥さまの座に伝わる瞬間です。

評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] かなりの重量のある船を持ち上げたり、頭で水平に戻したりを軽々やってのける竜さまはやっぱり凄いですね。力持ちだ。 ントゥはお骨さまの頭のてっぺんが定位置なのかな。エーヴェも竜さまの頭の上に登っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ