24. はないちもんめ
投稿開始から1年経ちました。……あれれ? 365話ないぞ??
のんびりぼちぼちしか進みませんが、そろそろ第一部が終わりそうです。
これからもお付き合いいただければ幸いです。
みんなで帆を彩った後、竜さまたちと遊んで日が暮れた。
――明日帰るのか! 早いのじゃ!
お骨さまはびっくりして、水面でうねうねする。この数日でお骨さまはずいぶん水と仲良くなって、水の上で動けるようになった。手足も羽も全部広がってるところが、なんとなくアメンボみたい。
お泥さまが広場を荒らさないように早々に水に入ったから、みんなで岸近くの水辺で遊ぶ。竜さまは足先だけ水につけてる。
――ふーむ。短いのじゃ。しかし、ニーノたちの都合もあろう。
――わしはまだ帰らぬぞ! 見ていないものがいろいろあるのじゃ!
お屑さまはルピタの腕で、不満げにぴこんぴこんする。
「お屑さまはどこにでもいて何でも知ってます。何を見ますか?」
――ヒトが動くのについて行くのは、格別に面白いのじゃ! ヒトは順番が大事なのじゃ! 泥の座を順番に見るのじゃ!
そうか。風と一緒に動いてたら、物がどう変わっていくのかは見られないのかも。
「おお……、じゃあ、邸はもういいですか?」
――む! むむ! よくないのじゃ! 空飛ぶ船がまた変わるのじゃ! 邸にも戻るのじゃ!
空に選択肢が浮かんでるみたいに、お屑さまはあっちにぴこん、こっちにぴこんする。
世界にあまねくいるのに、迷ってるお屑さまは面白い。
――みんな、帰る。
お泥さまがぽそっとつぶやいた。ぱちりと右目だけ瞬いて、しばらくしてぱちりと左目だけ瞬く。心なし、周囲の水が暗い色になった。
竜さまは岸から水中のお泥さまの頭をちょいっとつっついた。
――また来よう。友の羽の約束もある。
――そうなのじゃ。これは待ち合わせなのじゃ。
お骨さまが水面をくるーっと回って滑りながら、竜さまに応じた。
丸い屋根の家に戻ると、作業が終わったみんながくつろいでる。夕ご飯の後でエステルが、竜さまの座に行く人を選ぶ話を伝えた。意外にも、誰が行くかでざわざわする。クールなのはエステルだけで、それぞれ船に興味があったり、工房に行きたがったり、木に登りたかったり。フィトとノエミでも、ロペと一緒に行けないかなと相談してる。
ずーっとお泥さまと離れるのは嫌だけど、期間が決まってる旅なら話は違うみたい。
「竜さまの座に来たことないのって誰ですか?」
「プラシド以外、来たことがない」
ニーノの答えにびっくりする。
「みんな、あんまり旅しませんか?」
「崖と砂漠を足で越えるのは、とても大変だ」
確かに大地の裂け目みたいな崖はどうやって越えるのか想像もつかない。でも、システーナもジュスタもお泥さまの座に来たことがある。
「あたしは砂漠に興味があったかんな。空がどこまでも広れーのがおもしれー」
「俺はニーノさんに勧められたんだ。いろいろな技術に触れる機会だって」
視線を察して、二人が理由を話してくれる。
「ガイオサは? いろんなところ旅しますか?」
「砂漠は水も食べ物もないぞ!」
つまり、ガイオはあんまり竜さまの座から出なかったみたい。
「私、行きたい! エーヴェちゃんの住んでるところ見てみたいもん!」
ルピタがさっと手を上げた。
「そうだな。ルピタは子どもだから優先だ」
「やったー!」
エステルの言葉にルピタとハイタッチする。
「船の話なら、カジョかナシオ。あとはハスミンかカンデを出したいが、帰り道を考えるならドミティラが行くのも悪くないだろう」
「ドミティラ?」
「軽くなれるから、崖を越えるのには便利かもね」
そうか、特性も旅には関係あるもんね。
「ド、ドミティラは狩りもうまい」
マノリトがにこにこしてる。
「帰りの道案内が要るから、プラシドは行ったほうがいいな」
「え! うそ!」
急に話を振られて、プラシドがびっくりする。
「そうだな、膝の具合を見るにもちょうどいい」
「ニーノちゃんまで!」
ちょっと青くなった。
膝が心配なのかな? でも、ニーノがプラシドに入れた膝の原料は邸にあるから、痛みの対処もできるかも?
「プラシドが行くなら俺は残るよ。畑の手が足りなくなる」
「じゃー、後は私とカンデだね!」
きらきらわきわきしたハスミンに、カンデが首を振る。
「私はいい。いろいろ片づけたいことがある」
「ほんとにー!?」
「本当に」
生真面目に頷いたカンデと対照的にハスミンが手を叩く。
邸に来るのは、プラシドとドミティラとハスミンとナシオ、そしてルピタに決まり。
なんと、五人も来る!
「船、五人乗りますか?」
「重さは大丈夫だよ。本当は水をもっと積む予定だから」
「寝るとこがねーよな! ま、スーヒと藁で寝りゃーいいだろ」
ジュスタの答えにほっとしたのも束の間、システーナがからから笑う。
「なんと!」
「なんだ、お前。藁で寝るのは気分がいいぞ」
「わー! スーヒとおんなじだ!」
ガイオのとんちんかんに首をかしげてる間に、ルピタが嬉しそうに笑った。
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