12.ルピタのアティッカ
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いつも読んでくださる方、ありがとうございます。
ガイオのところにマノリトとナシオが駆けつけて、お膳の前に引っ張ってくる。
「もう! エステル、待たせすぎてご飯が怒り出すよ」
「そうだな、アラセリ。食べよう、演奏も後だ」
わっと人が動いて、みるみるうちに、目の前のお膳に食べ物があふれる。
「いただきまーす!」
見たことのない食べ物がたくさんあって、目移りするけど、まずはお魚! 指くらいのお魚と粒炒め。粒は雑穀かと思ったけど、植物の種で、嗅いだことのない香ばしさ。端がカリカリになったお魚と、とっても合ってる。
「あ、これがご飯だよ、エーヴェちゃん!」
ルピタが焼けて色あせた竹筒をとって、上の端をとんとんと打つ。それから、くるっとひねった。中央の切れ目から竹が分かれて、柔らかいご飯が顔を出す。
「すごーい!」
私も竹筒を手に取る。思ったより熱いので、端っこを持った。上の方をとんとん叩いて、竹の切れ目の上下に手を置き、くるっとひねる。
「おお!」
竹の形になったご飯が顔を出す。かじると、もっちり。
「おいしー!」
もしかして、もち米かな?
ご飯だけでもおいしいけど、小魚炒めと一緒に食べるととっても合う。
もうすっかり幸せだ。
この上、お膳の上には山菜の煮物や煎った細かいエビ、干した瓜の煮付けに味噌を添えたものが並んでる。蒸籠からたっぷりの湯気と現れたのは、蒸し魚。体が長いコイみたいな体の上に、キクラゲや赤い実が散ってる。あったかくて、いいにおいがいっぱいでうっとりだ。
「すごいねー! 大きい魚!」
「昨日、ハスミンとカンデが捕りに行ったんだよ」
「おお、ありがとう」
向こうにいる二人に手を振ると、ハスミンが手を振り返してくれる。
「お、俺たちも、か、狩りと思ったけど、に、ニーノが肉嫌いだから」
マノリトがにこにこしながら、とろとろしたスープを飲んでる。
「スープ! おいしそう!」
山芋かなと思ったけど、干したキノコみたい。細かく砕けてるのに、欠片の何倍ものとろとろを生み出してる。
「ふわー! 不思議!」
口に含むとちゃんとキノコの味がして、体がぽかぽかする。
ここで、ずっと気になってた物に手を伸ばした。
お膳の上で、いちばん大きい。サイズはカリフラワーくらい。多肉植物の葉っぱみたいなのが重なって、一つの大きなかたまりになってる。ゆでたのか蒸したのか、ほんのりあったかい。
「タタン、これ、お花?」
「そう! 大きいでしょ! 開くとここから白くて細長い花がいっぱい出てくるんだ」
葉っぱ――花びら? が開くと細い花がたくさん出てくる。どんな花なのかな?
「ほう」
「こうやって食べるんだよ」
ルピタが花びらを前歯でむしり取る。すこし口をもごもご。魚に小骨があったときみたいに指でつまんで、丸くてうすい繊維を吐き出した。
「下の方に、こういう固いところがあるんだ。そこは捨てていいからね」
竹を割った殻入れに放り込む。
「はい!」
口で花びらをむしってみる。中はまだしっかりあったかい。花びらは肉厚で柔らかく、ほくほくしてる。花びらの内側には、大きくなる前の細い花が順序正しく並んでて、シャリシャリする。甘い。トウモロコシみたい。
シャリシャリの中に固いのが出てきたので、ついっと口から引っ張り出した。
「甘い!」
「そう! アティッカって言うんだ」
「アティッカ!」
ルピタが煎ったエビをちょっとアティッカにまぶす。
「ちょっとしょっぱくなって、おいしいよ」
「おお」
さっそく試す。黄緑色の花びらとエビの赤がきれい。香ばしくてほくほくする。甘さはあまり感じなくなるけど、これもおいしい。
「アティッカ、おいしい!」
「ねー!」
次の花びらをはがして、固いところを吐き出す。ルピタも私もすっかり無言。食べるのに時間がかかるのが難点だけど、ほくほくシャリシャリの歯触りと、ほの甘さが癖になる。
「どうだい? 満足しそうかな」
穏やかな声に顔を上げる。マノリトやナシオが場所を空けて、エステルが座った。
「エステルさん! エーヴェ、大満足!」
「よかった。今は草木が芽吹く時期だ。普段の食料は干し野菜ばかりになるが、この時期しか食べられない物も多い」
「アティッカ! おいしいです」
もう三分の一くらいになったつぼみを掲げる。
エステルがうっすらと微笑む。久しぶりの深い紫色の瞳に、吸いこまれそうな気分になった。
「がんばったかいがあったな、ルピタ」
「うん!」
ルピタはきらっきらの笑顔だ。
「もしかして、ルピタが取りに行きましたか?」
「そうだよ! カジョとドミティラとナシオで行ったの!」
「アティッカは、この時期だと、ここから二日かかる崖でしか見られない。そんな遠出は初めてだったな、ルピタ」
「そうだよ! ……もう! 私が話すから、エステルは黙ってていいよ!」
「はい」
微笑んで、エステルは黙る。
「あのね、最初は筏で行って、途中から森を歩いたんだよ! 木があんなにたくさんあるの、初めて見た! 根っこが絡まってすごい森なの! 色がたくさんあるすごくきれいな鳥がいたよ」
ジャングルみたいな感じかな?
ルピタは身振り手振りで、アティッカを取る旅について話してくれる。
「アティッカは花が咲いたら食べられないから、花が咲かないように冷たくして、周りにたくさん柔らかい草を詰めて運んできたんだよ」
「おお、大変なのです。タタン、ありがとう!」
ルピタがにかっと歯を見せて笑う。合わせた足を両手でつかんで、体をゆらゆらしてる。
はっとした。
「エーヴェ、何も持って来てないよ! お土産!」
なんと! 何かルピタを喜ばせる物がほしい。
慌ててると、一瞬きょとんとしたルピタがぶんぶん首を振った。
「大丈夫だよ! エーヴェちゃんがいるもん! エーヴェちゃんが来て嬉しいから、それがお土産だよ!」
「おお――! タタン!」
思わず、両手を上げる。
「優しい!」
「そうだよ!」
ルピタも手を上げたので、えいやっとハイタッチする。
「アティッカ、好きなのです!」
「やった!」
「――ふふっ、仲良しだな」
つないだ手をゆらゆらしてたら、エステルが笑った。
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