表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

215/300

16.たくらみ顔の大人たち

 森はすっかり真っ暗だけど、木の上だと葉っぱの間からちょっとだけ星明かりが見える。

 ――友のたてがみは、ふわりと光ってきれいなのじゃ。

 ――友の骨も白くてきれいである。

 ――むーふっ。わしも友もきれいなのじゃ!

 枝のはるか下から、お骨さまと竜さまのお話が聞こえてくる。とっても仲良しな会話で、システーナとにこにこだ。

「すごいですねーお骨さまが邸に来ます!」

「すげーなー! んで、嬉しいな」

 システーナはにーっとしながら、大きくなった火で湯を沸かし始める。

 ぽこぽこ泡が出始めた湯に、何かを折ってぱらぱら落とした。

「それ、なんですか?」

「いろんな粉と塩を混ぜて固めたやーつ。簡単にスープができんだよ」

「おお」

 携帯食料。確かに、システーナはいちばん使いそう。

「あたしはいろんなとこ行くかんな。簡単に食えっもんニーノと考えたんだぜ」

「ほー!」

 ニーノ、そんなこともしてたんだ。

「ジュスタとニーノ、はやく帰ってくるといーね」

「飯ができるまでには、戻ってくんだろ」

 二人の姿を探して、きょろきょろ見回す。

 すぐ近くで、蓋をのせたペロがリラックスモード。スーヒがコケの匂いをかいで、ちょっとかじってる。そういえば、穴の中ではコケを食べてたんだっけ?

「スーヒ、コケ食べませんよー! また光るかもしれません」

 ――ここのコケは光っておらんのじゃ! じゃが、食べないほうがいいのじゃ!

 スーヒは高速で口に入れたコケを、高速で吐き出す。

 ……美味しくなかったのかな?


「甘ーい匂い! スープできました!」

 スープはとろみがあって黄色くて、コーンスープみたい。

「パンをひたして食べんだよ」

「おお! 美味しそう!」

 早く二人帰ってこないかなー。

 ――シス、二人は何を探しておるのじゃ?

 お屑さまがぴこんぴこんしたとき、ペロがぷるっと動いた。

「……あ! ペロのぺちょです!」

 久しぶりにペロが跳ねた。そのまま、すささっと走り出す。

「ペロー?」

 目で追ったら、暗い枝の先へ消えていく。

「――わ? ペロ?」

 声が聞こえて、その場で飛び上がった。

「ジュスタです!」

 暗闇の中から、ゆったり誰かが姿を現す。

「おおおー! ジュスタ!」

「ただいまー」

「おかえりー!」

 駆け寄って、ジュスタの背中にある物にビックリする。

 ジュスタよりも背が高い大きなトウモロコシ。(じゆつ)(ふさ)くらいある。あと、その上にペロ。

「とーもろこし!」

「そうだよ!」

 ジュスタが明るい笑顔になった。

「おー見つかったかー」

「はい、なんとか」

 ジュスタが枝の上にトウモロコシを積み上げた。ペロはトウモロコシの上を行ったり来たりしてる。

 ――大きなトウモロコシじゃ! これを探しておったのか! 大きいのじゃ!

「これ、どうしますか?」

「もう一つが見つからないと、できるかどうか分からない。――でも、ニーノさんが戻る前に、皮をむいておこう」

「おお! エーヴェもやるよ!」

 ジュスタがトウモロコシの房をつかんで、私は皮を逆向きに引っ張る。普通のトウモロコシと同じで、何重もの皮の下に、つやつやの実が現れた。

 実の一粒も大きい。アメリカンサイズのハンバーガーみたい。食べたら顎が外れちゃう。

「トウモロコシも大きくなります」

「ホント、変な森だよなー」

 システーナもトウモロコシをむきながら、ゆったり笑った。

 トウモロコシの皮はけっこう固い。むき終わって、とってもお腹がすいたので、夕ご飯を食べた。

 それから、しばらく待ったけど、ニーノは戻って来ない。

「まー、ニーノは心配要らねーから、寝ちまおうぜ」

「はい! おやすみー、りゅーさまー!」

 ――うむ、よく休むのじゃ。

 竜さまの声を聞いて、毛布でぐるぐる巻きになって眠った。



 何か声が聞こえる気がして、目を開ける。

「よかった。見つかりましたか」

 ジュスタの声。もぞもぞ体を起こした。

「見つかったが、何も保証はできん。……起きたか」

「ニーノです! おはよー」

 周りは薄暗いけど、鳥の声が聞こえる。きっと朝になってるはず。

「ニーノは何見つけましたか?」

 毛布をバサバサしながら側に寄ると、ニーノが無表情に見下ろしてくる。

「岩だ」

「岩」

 何に使うのか、さっぱり分からない。

「ニーノは夜通し動いて腹減ってんだろー? 飯食いながら話そーぜー」

 昨夜の残りで朝ごはんになる。

 煮詰まったスープがシチューみたいになって、パンにぴったり。

 ――何を作るのじゃ? ジュスタ、早う説明するのじゃ!

 ご飯に関係ないお屑さまが、ぴこんぴこん急かす。

 ジュスタはにっこりした。

「はじけ菓子を作ろうと思うんです」

「はじけ菓子!」

 ――わしの軽やかなボールじゃ! 皆でボール遊びなのじゃ!

 お屑さま、大興奮。

「いいえ、ボール遊びはしません」

 ――なんじゃと!

 お屑さま、がっかり。

「じゃー食うのか?」

 システーナが首を傾ける。

「いえ。竜の骨は空洞があるでしょう? 端をはじけたトウモロコシでふさいだらどうかと思って」

「なんと!」

 ポップコーンで、穴をふさぐ! (ざん)(しん)

 システーナがパンにスープをぬって、口に運ぶ。

「はじけ菓子は()りぃけどよー、雨にぬれたらしぼみそーだぜ?」

「雨よけと虫よけはするつもりです」

「ほーわー! 面白いです!」

 発泡スチロールみたいな感じかな?

 ――ボール遊びがないのは全然面白くないのじゃ! じゃが、ちょっと面白いのじゃ! トウモロコシは、はじけ菓子になるのじゃ! む? ならば、岩は何じゃ?

「トウモロコシをはじけさせるには、熱を加える鍋が必要です」

 ニーノが言って、システーナを見た。

 一つ瞬きして、システーナがにやっとする。

「なーるほど、あたしの出番か」

 ――なんじゃ、なんじゃ?

「なんじゃ?」

 お屑さまと一緒に、みんなの顔を見渡す。ニーノはいつも通りだけど、システーナとジュスタはにやにやしてる。

 何の(たくら)みか分からないけど、ワクワクしてきた。

評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 竜さまとお骨さま、思ってた以上に仲が良いですね。お骨さまが頭を竜さまに乗っけたり、ひっついたりするのも仲が良いなと思ってましたが、それ以上でした。ほのぼのします。 めったと見れない童心にかえ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ