表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

212/300

13.思いつきから素晴らしいアイデアに変わるまで

 本格的に暗くなると、ントゥはお骨さまから降りて、砂丘の向こうに消えた。

「ントゥ、どこに行きましたか?」

 ――エネックは夜に狩りをするのじゃ! ントゥも獲物を探しに行ったのじゃ!

 ――ついて行くと怒られるのじゃ。

 ――戻るなら、待てばよい。

 ちょっとしょんぼりしたお骨さまに、竜さまが声をかける。

 ――そうなのじゃ。今日は友と待つじゃ。

 お骨さまは竜さまの頭の上に、頭を乗せて嬉しそう。

 ――わしもおるのじゃ!

 お屑さまもぴこんぴこんする。

 ――たくさんもひっついておるのじゃ!

 お骨さまは喜んで羽を震わせた。お屑さまがふがーっと怒ってる。また、頭が渦を巻く展開。

 にこにこしながら竜さまを見てて、ふと気がつく。

「りゅーさまとお骨さま、お骨さまのほうが大きいです!」

 竜さまの頭の上にすっぽり頭を乗せると、お骨さまのほうが一回り大きい。

「そうだ。お骨さまは竜さまと大きさが変わらない。つまり、本来、竜さまより体の大きな竜さまだ」

 あぐらをかいたニーノの横にはスーヒがいる。ニーノに背中をかかれて、やっと機嫌が直ったみたい。

「お骨さま、大きくて、銀の鱗です!」

 その頃から二人は友達で、一緒に遊んだり飛んだりしたんだろう。

 お骨さまの骨しかない羽を見て、ちょっと悲しくなる。

「お骨さま、空、飛びたいですか?」

 お骨さまは首だけこちらに向ける。

 ――ふむ。よく分からぬ。砂漠を泳ぐのは楽しいのじゃ。

 お骨さまは飛ぶことにこだわりがないのかな?

 ――じゃが、友と一緒に飛ぶなら、飛ぶのもよい!

 お骨さまは頭を竜さまの上に戻して、こそばゆがってる。


 お骨さまには立派な羽の骨があるけど、骨だけじゃ飛べない。

「――あ。あー!」

「うわ、なんだおちび!」

 ぴょんっとその場で跳び上がる。

「いいこと思いつきました! お骨さまが、りゅーさまの上に乗っかればいいです!」

「何の話だ」

 ニーノの目が冷たい。でも、この思いつきにはビックリするぞ。

「竜さまの背中に、お骨さまが乗っかります。お骨さまは骨だけだから飛べないけど、竜さまの羽があれば飛べます!」

「……どういうこと?」

 首をかしげたジュスタの背中に、ひょいっと張りつく。

「こうやるのです!」

 ()(にん)()(おり)

 ――ぽはっ! 分かったのじゃ! 骨が山にぴったりくっつくのじゃ! そうすれば、山の羽が骨の羽になるのじゃ!

「そうだよ! さすが、お屑さま!」

 伝わったのが嬉しくて、拍手した。

 二人は大きさがほとんど同じ。きっとぴったり重なるはずだ。

 竜さまは首を傾けて、頭上のお骨さまを見る。

 ――友は、こそばゆうないか?

 ――たぶんこそばゆいのじゃ。じゃが、面白そうなのじゃ!

 ――きっと面白いのじゃ! 早うやってみるのじゃ!

 お屑さまがぴこんぴこん急かした。


 竜さまの体にお骨さまが重なる。お骨さまはバラバラになれるから、ちょっと骨をゆるめて、竜さまが収まる空間を作る。

 ――うぉっほ、うぉっほ! こそばゆい!

 ――友よ。動くでない。わしまで動く。

 ――本当じゃ! 不思議なのじゃ!

 お骨さまの骨付き竜さまの羽が、バタバタ揺れる。

 ――うむ……。わしは周りが見えぬぞ。友は見えるか?

 お骨さまの頭蓋骨で目が覆われ、竜さまはあちらこちらと首を動かした。

 ――見えるのじゃ。わしが友の目になるのじゃ。

 竜さまはよろよろ砂漠を歩き、砂丘の上に登って行く。

 ――ぽはっ! なんともおかしな光景なのじゃ! ぽはっ!

 お屑さまはシステーナの腕に止まって、大興奮。

「おお……思ったより、難しそうです」

 付き人みんなで竜さまとお骨さまを見守る。

「難しーけど、できたらすげーぜ」

 システーナは目をキラキラさせてる。ニーノは難しい顔。

「竜さま、頑張ってー!」

 ジュスタの足下で、ペロも様子を眺めてるように見える。


 ――よし。見え方がだいぶ分かってきたのじゃ。

 ――さすが友じゃ! わしはこそばゆうておかしいのじゃ。

 お骨さまは羽をバタバタしたいのを我慢してるんだろうけど、口はぱかっと開いてる。

 あっちこっちに引っ張られるマリオネットの動きで、竜さまは砂丘の上に立った。

 ――砂丘の上に着いたな?

 ――着いたのじゃ!

 ――よし。では走るぞ。

 ――走るのじゃ!

 竜さまが砂を蹴って砂丘を駆け下りる。

 ――今じゃ!

 お骨さまの合図で羽を広げ、舞い上がった。


 どっざー――ん


「わー――!」

「竜さま!」

 竜さまが近くの砂丘に突っ込む。砂丘が壊れて、砂が舞上がった。

 砂煙の中から、ぶるぶると首を振るわせて竜さまが顔を上げた。

「りゅーさま、お骨さま、だいじょうぶ?」

 ――面白いのじゃ!

 お骨さまが後ろ肢でひょいひょいしたのか、竜さまが左右に体を揺らす。

 ――うむ。面白いが、なかなか難儀である。も少し長く、走ってみよう。

 ――うむ! よいのじゃ!

 今度は砂丘の前から走って、砂丘の頂上に着いた瞬間、飛び出した。


 ど、どー――ん


「ぎゃー!」

「今度のが長く飛びましたよー竜さまー!」

 ――山よ! ヒナのように情けない姿じゃ! ぽは、ぽはっ!

 システーナもお屑さまも楽しそうに声をかけるけど、私ははらはら。

「りゅーさま、なんども砂丘にぶつかります! エーヴェ、良くないこと思いつきました」

 ちょっと悲しい。

「そんなことないよ。竜さまにも練習のチャンスを上げなくちゃ」

「その通りだ」

 ジュスタは優しく言ってくれたけど、ニーノは同意しつつも難しい顔。やっぱり、竜さまが砂丘に突っ込むのを見るのはいやだ。

「りゅーさまー! お骨さまー! がんばれー!」

 今度は両羽を広げたまま、竜さまは尾根(づた)いに走る。

 お骨さまのナビゲートがうまくいってるみたい。

 ――今じゃ!

「飛べー!」

 だっと頂上から飛び出し、尾っぽで砂丘を軽く打つ。

 ふわっとうまく飛び上がって、竜さまは宙を舞った。

 ――おお! 友よ、飛んでおるぞ!

 ――うむ。周りの様子をよく見るのじゃ、友よ。

 竜さまは、せまってきた砂丘を体を揺らしてよける。

「おお!」

 ――友よ! よけたのじゃ! よいぞ、よいぞ! 飛んでおるのじゃ!

 竜さまとお骨さま、一緒に飛んでる!

「やった! やりました、りゅーさま!」

 付き人の頭上を竜さまが滑空して見せてくれた。

 ――おお! よくやったのじゃ! 骨も飛んでおるのじゃ!

「すっげー!」

 さっきまで良くない考えだと思ってたのが、一転、素晴らしいアイデアに変わった。

 しばらくして遠くの砂丘でまた、ぼんっと砂煙が上がる。

 竜さまのばっばっと笑う音と、お骨さまのあの変な音が聞こえてきた。

評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お骨さまが飛んだ‼️ めちゃくちゃ熱くて、跳び跳ねたくなる展開。 羽があってももう翔ぶことができないお骨さまに胸が痛くなってたけど今は胸がいっぱいです。よかった。ホントによかったです。 それ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ