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7.久しぶりと初めまして

 やった、やった、やったー!

 ニーノに抱えられたまま、両手両足をがちゃがちゃ動かす。

「お骨さまー――!」

 お骨さまは首をかしげて、きょろきょろする。

 ――おおっ!

 浮かんでるニーノと私に気がついて、驚いたみたいに羽を広げた。

 ――これは、ニーノじゃ! あと、これは……これは……、エー……エー……エーゼじゃ!

「そうだよ! エーヴェだよ! お骨さま!」

 お骨さまが羽を震わせる。


 きょきょきょきょ……


 ――ちゃんと覚えておったぞ! エーヴェ!

「はい! お骨さま! エーヴェも覚えておったー!」

 ニーノが砂丘に降りたので、両手を上げてぴょんぴょん跳ねる。お骨さまも、ひょいひょい跳ねた。

 お骨さまにまた会えて、嬉しくてたまらない。

「会えてうれしいです! びっくりしました!」

「お骨さま、ご無沙汰いたしております」

 ――おお! びっくりしたか! わしも驚いたのじゃ! ニーノ! エーヴェ! 友だけでなく、ニーノもエーヴェもおるのじゃ!

 ――うむ。久しぶりである。

 竜さまが見つけたのは、骨じゃなくて、お骨さまだったのか。

「あたしもいるぜー、お骨さま!」

「お骨さま、お久しぶりです」

 システーナとジュスタに、お骨さまはまた驚いたみたい。

 ――友の背中から、シスとジュスタが降りてきたのじゃ! 一、二、三、四、五! 五じゃ!

 お骨さまはすっかりうぉほっほになってる。

 システーナの腕でお屑さまがぴこんぴこんした。

 ――よく見るのじゃ、骨よ! わしがおるのじゃ!

 お骨さまはきょろきょろして、システーナの高く差し上げた腕に顔を寄せる。

 ――おおお! お主は()()()()じゃな。たくさんもおるのじゃ! 五とたくさんじゃ!

 お骨さまは後ろ肢でぴょんぴょん跳ねて、竜さまの周りを回り始めた。とっても嬉しそう。

 お屑さまは、激しくぴこんぴこんした。

 ――このあほうめ! わしはお屑さまじゃ! たくさんなどではないのじゃ!

 ――わしは骨じゃ。わしは、たくさんがたくさんおるのを知っておる。おお、そうじゃ。わしもたくさんになれるのじゃ。

 言うが早いか、お骨さまはバラバラになって、砂漠に散らばった。

「ぎゃー! お骨さま!」

「何回見ても、おもしれー」

 ――うむ。

 竜さまが骨を一つくわえ上げる。

 ――あや! 友! 止めるのじゃ。変なのじゃ。

 ――なんと無礼な! わしの木の葉のような身体と、骨を一緒にするでない!

 頭蓋骨が浮かび上がって、竜さまがくわえた骨を取り戻そうとしてる。竜さまはすいっ、すいっとかわしてる。

 ――ふむ? ……おお! その通りじゃ!

 頭蓋骨だけのお骨さまは、お屑さまを振り向いた。

 ――ふしぎじゃ。なぜ、ここにずっとおるのじゃ? いつも、遊ぼうと言うてもすぐにどこかに転がって行くのじゃ。つまらないのじゃ。

 頭蓋骨がシステーナの目の前に落っこちて、お屑さまを噛もうとする。

「うわ」

 思わず、声がもれたけど、大丈夫。風の流れなのか、お屑さまは噛まれない。

 ――お主が()(もの)ゆえ、止まっておられぬのじゃー!

 ――たくさんは分からぬ。わしは骨じゃ。

 ――止めよ、止めよ。お主らの話は(うず)を巻いておる。

 竜さまがそっと骨を砂漠に置いたので、お骨さまは元の姿に戻った。口を開けて竜さまを見る。嬉しそう。

 ちょっとほっとした。

 竜さまが割って入ってくれなかったら、きっと頭の中が渦を巻いてた。

 ――何にせよ、会えて嬉しいぞ。

 ――おお! 友に会えて、わしも嬉しいのじゃ!

 竜さまとお骨さまが、首をぶつける。二人で羽をバタバタした。お骨さまのあの変な音が響き渡る。

 ……これは、二人のあいさつかな?

 お屑さまがぴこんっと伸びた。

 ――なんじゃ! わしも嬉しいのじゃ!

 ――おお! わしも、たくさんに会えてうれしいのじゃ!

 がぶっと噛もうとするけど、お屑さまはふわっとなびく。

 ――わしはお屑さまなのじゃ!

 なーんだ。竜さまたちはみんな、会えて嬉しいんだ。


「そうだ! お骨さま! まだいるんだよ!」

 周囲を見回して、荷物のところにいるスーヒとツボを見つけた。

 スーヒはさっきまで元気だったのに、砂丘崩落のせいか、荷物の陰に入ってる。鼻先しか見えない。仕方ないから、ツボを抱えた。

 ジュスタが「運ぶよ」と手を伸ばしてくれたので、パスする。

 ――なんじゃ、それは?

「これ、ペロです!」

 竜さまはずむずむ歩いて、お骨さまの側に来る。

 ――わしにゆかりの者である。

 ――おお! 友のゆかり!

 鼻先を寄せたお骨さまによく見えるように、ジュスタがツボを(かか)げる。

「ペロー! お骨さまですよ!」

 しんとしてた水が、ざわり、と波立ち、ツボの口に向かう。蓋が持ち上がり、うようよ出てきた。

 ――ほう? 動いておるのじゃ。

 ペロは伸び上がって、お骨さまの歯に触った。

「うわっ!」

 ――おおっ! 冷たいのじゃ!

 一瞬のできごと。

 ペロはツボから飛び出して、お骨さまを伝っていく。すごい速さで、どこに行ったか分からない。

「あわ……ペロー!」

 ――友! ちょっぴり冷たいのが、動いておるのじゃ。

 ――うむ。お主のことが気に入ったのであろう。

 ――水玉は竜が好きなのじゃ! ぽはっ! 骨ならば熱がないゆえ、存分に遊べるのじゃ!

 そうか、ペロは、竜さまの身体だと蒸発するから爪にしかくっつけなかったけど、お骨さまならどこでも行けるんだ。

「でも、どこに行ったか分かりません」

「お骨さま、大丈夫ですか?」

 空っぽのツボを抱えて、ジュスタがお骨さまを見上げる。

 ――分からぬ。喜んでおる小さいのが、わしの身体を走り回っておる。妙な気分じゃ。

 お骨さまは、身体をあちこち見回してる。

 ――じゃが、小さいのが喜ぶのはよいことなのじゃ。大きいのが喜ぶのもよいことなのじゃ。分かったのじゃ! わしはよい竜なのじゃ!

 だんだん嬉しくなったのか、お骨さまが羽を振るう。


 きょきょきょきょきょ……


 ジュスタは眉を下げた。

「砂漠の上では危なかったから、お骨さまの上なら安心かもね」

「でも、お骨さま、ときどきバラバラになりますよ!」

「……そうだな」

 二人でうなる。

「ペロのことはペロに任せろ。それより、そろそろ夕食の支度だ」

「竜さまが三人もいるなんて、サイコーだな!」

 システーナがぴょんっと跳ねて、荷物をほどき始めた。

「最高です!」

 これから、絶対楽しい時間だ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三人の竜さま、最高ですね。 竜さまがたの会話が威厳全面というよりも悪友よりなのが楽しいです。お骨さまとお屑さまと竜さまなら、竜さまが話の調停進行役になってしまうのが、いつもとまた違う竜さま…
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