16.竜とポップコーン
あいかわらず、スローペースです。
スキップしたいけど、雨が降っているから、要注意。
カゴもぬれないように、雨よけで覆う。
「はじけ菓子、ぽんぽんぽんっ」
――はじけ菓子、ぱんぱんぱん!
「あ! お屑さま、ぬれます!」
お屑さまの長い身体は、幅広の笠からはみ出してる。
――雨は良きものじゃ! ぬれても構わぬ!
「お屑さま、風邪引きませんか?」
お屑さまはぽはぽは笑った。
――痴れ者め! わしは童のように安易に邪気を取り込みはせんのじゃ!
「おお! お屑さま、風邪引きません」
もしかしたら、竜さまたちは病気にならないんだろうか?
「竜さまに病気はありますか?」
――病か。あるとは聞くが、見たことはないのじゃ。とても珍しいが、見る気はせぬな!
おお、確かにその通りだ。
「竜さまたちは元気がいいです!」
お屑さまとはじけ菓子を歌いながら、慎重に洞への道をたどった。
洞の入口からのぞくと、ジュスタは竜さまに寄りかかっておしゃべりしてるみたい。
「よかった、ジュスタ元気です」
ペロもいる。ぶよぶよに大きくなった身体を揺すって、洞をあっちに行ったりこっちに行ったりしてる。
「りゅーさまー! ジュスター!」
駆けつけると、ジュスタはゆったり笑った。
「やあ、エーヴェ」
「あれ? ジュスタ、乾いてます」
雨の中を出て行ったのに、ジュスタの髪はふわっとカールしてる。
「竜さまが乾かしてくださったよ」
――うむ。
あ、竜さまドライヤーだ!
「よかったです! エーヴェ、はじけ菓子持って来たよ!」
お屑さまがなんじゃなんじゃと言い出す前に、ポップコーンを差し出した。
――童は一つ弾けたのである!
「弾けてないよ!」
お屑さまのよく分からない言い分に、ジュスタはにっこりした。
「ああ、エーヴェ、強くなったんだね。おめでとう」
「はい!」
――巣立ちに近づいたか。
巣立ち! すごいけど、ちょっとさびしい響き。
ジュスタははじけ菓子をとって、ボリボリ食べる。
竜さまも顔を近づけてきたので、差し出した。
「りゅーさまも食べますか?」
――食ったところで、露のように消える。
――ほう、口にしてみたのか!
――うむ。口に入ったかも分からぬが。
――ぽはっ! 山は大きすぎるのじゃ! ぽはっ!
竜さまからすると、ポップコーンなんて芥子粒だもんね。
ジュスタが呼ぶので、もう一回カゴを差し出す。呼ばれたと思ったのか、ペロもやって来たので、頭に一粒のせてみる。
「おいしいです!」
「うん。おいしいな」
ペロはぷるぷるして返品してきたので、そのままパクッと食べた。
「ニーノさん、はじけ菓子を作るところ、見せてくれただろ?」
「はい! ぽんぽん賑やかでした!」
――途中は怒っているようじゃった! 次から次に弾けるのじゃ!
――ほう、そのように愉快か。
「愉快です! りゅーさまは見たことないですか」
竜さまは首を傾ける。
――記憶にない。
「じゃあ、今度みんなで作ります!」
「そうですね。ぜひ竜さまにもご覧いただきたいです。賑やかさもお祝いの一部なんですよ」
「――お祝いの一部!」
お菓子だけじゃなくて、作るところから全部、お祝いなんだ!
ジュスタが蜂蜜色の目を細める。
「弾けるのも、エーヴェ、おめでとうってことだよ」
「おお!」
その場でうぉほっほをする。
――はじけ菓子は祝い菓子なのじゃ!
「ジュスタもしましたか?」
「うん。はじけ菓子を作るのって、楽しいだろ? 自分でも何度か作ってみたけど、この味付けはニーノさんしかできないんだ」
「なんと! 秘密の味!」
ニーノブレンドのハーブ味だ!
「秘密の味でお祝い! すてきです!」
なんでニーノは言わなかったのかな?
特別なはじけ菓子はとても嬉しい。
カゴの底から、ごそごそはじけ菓子を出してたら、ぽろっと一粒こぼれ落ちる。
「あ」
――ぽ!
お屑さまが頭でポップコーンを弾いて、カゴに戻した。
「お!」
――およ?
お屑さまと顔を見合わせる。
「お屑さますごい!」
――ボール遊びじゃ! わしの遊べるボールじゃ! 童! もう一度投げるのじゃ!
「はい!」
一粒摘まんで、投げる。お屑さまは、頭で弾き、あらぬ方向へ飛んだポップコーンをジュスタがぽんと上に叩いた。もう一度、お屑さまがヘディングする。今度こそ、カゴにポップコーンが戻った。
――見たか! ボール遊びなのじゃ! わしの軽やかなボールじゃ! ぽはっ! ぽはっ!
お屑さまは激しくぴこんぴこんする。
「すごいすごーい!」
「お見事です、お屑さま」
ジュスタと拍手すると、お屑さまは伸び上がった。
――山よ! 見たか! これがボール遊びじゃ!
――うむ。なにやら素早かったな。
――ふふん! ふふん! お主にはできぬ軽やかさじゃろう! ぽはっ!
お屑さまは大得意でぴこんぴこんする。
――さあさあ、次のボールを投げるのじゃ!
「食べ物だから、遊んじゃダメです」
――なんと! もう終わりか!
うーん。
「じゃ、お屑さまが上に上げたら、エーヴェが食べます」
お屑さまにパスをして、打ち上がったポップコーンをぱくっと口でキャッチする。
一回目と二回目はお口キャッチがうまくいかず、通りすがりのペロの頭上に乗ったけど、三回目でうまくいった。
――おお! 童、よく食べた! 面白いのじゃ! ぽはっ!
お屑さまも私も、うまくいってにんまりだ。
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