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15.はじけ菓子、ぽん

「はじけがしー――ぱん! ぱん! ぱん!」

 ――はじけ菓子ーぽん! ぽん! ぽん!

 手拍子ができないお屑さまは、三連続ぴこんぴこんを決める。

「ぽんぽんぽん」

 ぱんぱんぱん!

 ――ぱん! ぱん! ぱん!

 ぱんぱんぱん!


 手拍子しながら、テーブルの周りでお屑さまとはしゃいだ。

 干し草をもぐもぐしてるスーヒが、こっちを見てる。


「はやく手を洗って来なさい」

「はーい!」

 裏口から駆け出して、お屑さまに急かされながら手を洗い、駆け戻った。

「洗ったー!」

 ――準備は良いのじゃ!

 ニーノは鍋を(とう)(ばん)の上にセットしてる。

「そこの椅子を持って来い」

 低い椅子を持って来て、ニーノの隣に置いて立つ。

 鍋の横には袋がある。

「見ます!」

 袋を引き寄せて中を見ると、丸くてつやつやのトウモロコシの粒がたっぷりだ。

 ――トウモロコシじゃ! 樹液のように甘い色なのじゃ!

 触ると、軽くて固い。

 ……これは、あれだ!


「始めるぞ」

 鍋の上に手をかざしていたニーノに、袋を奪われた。

 油を回し入れ、鍋を傾けてまんべんなく広げる。

「油ですよ! 珍しい!」

 大風の時以来の油だ。

 ニーノはトウモロコシの粒を鍋に入れた。

 ころんころんころん、こん、ころん……

 鍋がいい音を響かせる。

「わー――」

 ――ころんころん! ころんころんなのじゃ!

 鍋の底に敷き詰められたトウモロコシの上に、塩が振りかけられ、かき混ぜられる。

 ニーノは鍋を動かして、全部のトウモロコシに熱が伝わるようにする。

 最後にぱらぱらとハーブをちりばめて、蓋をした。

 ――(はじ)けるのか? ニーノよ、弾けるか?

「もう少しお待ちください」

 ニーノはときどき鍋を揺らす。

 お屑さまと固唾をのんで見守った。


 ――ぽんっ


「お!」

 ――ぽ!

 控えめな音がした。

「弾けましたよ、お屑さま!」

 ――弾けたのじゃ! (わつぱ)、はじけ菓子じゃ!

 お屑さまと盛り上がっていると、次の「ぽんっ」が聞こえた。


 ――ぽんっ……ぽんっぽん…………ぽんぽんぽんっ


 鍋に当たるいい音が、どんどん賑やかになってく。

 あっと言う間に、弾ける音が高くなる。

 ひっきりなしに鍋が鳴って、ちょっと怖じ気づくくらい。

「わー! 大変な勢いです!」

 ――ぽ! ぽ! ぽ! 怒っておらぬか? とても元気なのじゃ! ぽはっ!

 激しかったのは一瞬で、また音は静まりかえっていき、おそるおそる鍋に近づいた。

 ニーノが蓋を開ける。

「ぅわー!」

 ――なんと! 真っ白じゃ!

 鍋いっぱいのポップコーン!

 ころんと(いく)(つぶ)か転げ落ちた。


 鍋からお皿に移されて、ポップコーンの山ができる。

「温かいうちに食べろ」

「いただきます!」

 丸くて白いポップコーンを取って、口に放り込む。

 塩味で、かすかにいい香り。ところどころ甘い。

 ニーノが入れてたハーブのおかげかな?

 ――どうじゃ? まだはじけるのか?

 お屑さまは、興味津々。

「はじけません! かりかり! でも柔らかいです!」

 口いっぱいに入れて、もぐもぐする。

「気に入ったか?」

 ニーノにこくこく頷く。

「おいしいです! ときどき甘い」

 ニーノも一つポップコーンを食べる。

「竜さまが飛べるまでヒナが成長したら、はじけ菓子を食べることにしている」

「お! ――じゃあ、はじけ菓子、お祝いです!」

 いつも食べない特別なお菓子なんだ。

 ――童は一つ弾けたのじゃ! ぽはっ!

「おお! 弾けました!」

 ぴこんぴこんするお屑さまに、両手を上げて叫ぶ。

 ……あれ、弾けてはないぞ?

 ニーノが小さなカゴにポップコーンを小分けにしてる。

「ニーノ、それ、どうしますか?」

「ジュスタに持って行ってやれ。きっと竜さまのところだ」

「おお!」

 渡されたカゴを受け取る。

「あちらに、笠と雨よけも用意してある」

「おお!」

 雨よけの大きな笠が、いつの間にかちゃんと置かれている。

 もう一回、ポップコーンを口いっぱいにもぐもぐしてから、椅子を降りた。

 ジュスタにはじけ菓子を届けなきゃ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなに楽しいポップコーンはこれまでなかったかもしれない。エーヴェとお屑さまもポップコーンのように踊っているみたいです。 なんといってもニーノからのお祝いが嬉しい‼️ 成長を見守り、こんな…
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