表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/300

5.大きな羽の船

「でも、今回は竜さまの背中に乗って旅というわけにはいかないですよね?」

 ジュスタの言葉にきょとんとする。

「そうだな」

「そうなの?」

「おちびはまだ、竜さまの背中にしがみつけねーからな」

 笑いながら、システーナが頭をぽんぽんする。

「りゅーさまの背中、風強いですか?」

「んー、ゆー――っくり飛んでくださったら違えけど、それじゃいつまでもたどり着かねー」

「付き人に合わせていただくなど、とんでもない」

 ニーノが空いた皿を持って、台所に行った。私も食べ終わった皿を持って、後を追う。

「ニーノはりゅーさまの背中に乗ってたのにー!」

「ニーノは竜さまに合わせて飛んだっつーこった」

「なんと!?」

 皿を受け取るニーノは当然だ、みたいな顔だ。

 むー! ニーノはすごい人です!

「竜さまは偉大だ。乗せてくださることもある」

「――! おおー、すてきです!」

 うぉほっほをしながら、食堂に戻る。


「水や食料を運んで、道具を持ってって考えてたら、俺一人じゃ(つぶ)れちゃうなって悩んでたんですけど、楽しくなるようにって竜さまが教えてくださったんですよね」

「ははっ、ジュスタらしいし、竜さまらしいな!」

 システーナが、ガラス玉を壁側に転がした。音に気がついたのか、ペロはのそのそガラス玉のほうへ寄っていく。

「それで、船を作ったらどうかなって」

「お? エーヴェ、(いかだ)見たよ!」

 そういえば、お泥さまの座で船は見なかった。

「空を飛ぶ船ということか」

「すげー! 飛ぶもんなんて作れんの、ジュスタ?」

「いや、船自体初めてで」

 ニーノが人数分温かな飲み物を持ってきた。花の香りがする。

「こんな感じで考えてますけど……」

「えー? 羽はー? 竜さまみたいに羽がいんだろ」

「羽ですか」

 カップを握ったまま、みんなの顔を代わる代わる見た。

 みんなジュスタの案について考えてる顔だ。

「お? なーにー? エーヴェ、分かりません!」

「ああ。そっか、ごめんな」

 蜂蜜色の目がふわっと笑って、掌を出してくる。

 ……は! これは!

 すちゃっと手をのせると、大きなものがぶわっと押し寄せてきて、思わず目をつぶった。

 でも、目を閉じても、映像はそのままだ。注意して呼吸すると、ゆっくりじわじわ離れて、全体が見える。

「おー船! 船が見えます!」

 底が丸っこいデザインの船。()(さき)がぐいっと持ち上がってバイキングの船を思い出すけど、ずっと小さい。たぶん、四、五人で定員いっぱい。

 一本マストに大きな三角帆。船尾側に舵になりそうな四角帆が張られている。船尾の下に出っ張ってる舵は、魚の尾びれみたい。

「もしかして、ジュスタが前いた世界の船ですか?」

 漁や島との往来に使うのかな。

「そう。もちろんこれじゃ飛べないけど、元にしたらどうかと思ってる。物と人を運ぶ道具なのは間違いないからね。これでも七日の航海には出てたんだぜ。もっとも、道中釣りをしてたろうけど」

 は! そういえば、ジュスタは前の世界で女の人だったから、船を作れなかったはず。

「ジュスタ! 飛ぶ船、作ります! エーヴェ手伝うよ!」

 拍手して宣言すると、ジュスタは不思議そうに首をかしげた。

「そうだね。エーヴェも力を貸してくれ」


「……空を飛ぶならば、羽は水平に向けたほうがいいだろう」

 熟考していたニーノが口を開く。

「上空になればなるほど寒くなる。船に部屋を作って中で過ごせるといい。重い物を運ぶから、羽が大きくなければ支えられない」

 ニーノの言葉で、ジュスタが船に変更を加えてるのか、見える船の形が変わっていく。

「俺はあったかい空気を溜めて、船が浮かばないかなと思ってたんです」

 袋の下に(ともし)()を置いて飛ぶ道具がふわっと目の前を通り過ぎ、思わず追った。

 アジアの国で似たようなランタンがあった気がする。

「重さ次第だが、空気を溜めておく袋が難しくはないか? 穴が開いたときの対策も考える必要がある。竜さまの速度について行くとなると、飛び出しを竜さまに手伝っていただいて、滑空するのはどうだ」

「かっくうってタカみてーな?」

 システーナがぽかんとしてる。お屑さまが起きてたら、絶対怒られてたな。

「そうだ。大きな羽で長く滑空できるようにする」

「おおー!」

 竜さまと一緒に飛ぶ船、わくわくする!

「とにかく、まず、小さな船を作るといい」

 ニーノの言葉に首をかしげる。

「船でいーの?」

「船もきちんと作るのは難しい。構造を理解して、飛ぶ船を作っても遅くない」

「ほぉー」

「なるほど、確かに」

 納得してる横で、システーナが腕組みした。

「うーん、分かんねーけど、なんっか気になるなー。うーん」

「シス、何が気になりますか?」

 システーナは答えずにうんうんしてる。机の上に置いてた抜けた歯をコマみたいに(はじ)いて回した。

「分かんねーな。……まぁ、そのうち分かんだろ! ジュスタは作ってみりゃいいさ」

 にかっと笑われて、ジュスタは頷く。

 ペロは部屋の隅で鉢を下にして、もう寝る準備ができたみたいだ。

評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 竜さまの飛翔についていくニーノ、純粋に凄い!ってなりますね。きっとそうなる前に気の遠くなるような鍛錬を重ねたんでしょうね。 空飛ぶ船!!まさかこうくるとは思いもしませんでした。ピーターパン…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ