表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/300

おまけ ふくふくの午後

 ニーノの話には分からないことがいろいろある。

 質問しようとしたら、竜さまが目を細めた。


 ――今日は、ニーノはもう話さぬ。ここで遊ぶのじゃ。

「竜さま?」

 肩口辺りに移動してきたニーノを、竜さまは鼻先で背中に押し戻す。


 ――戻れ。ニーノはわしの首を登ったり、尾を滑ったりするのがよい。夕陽を見てから帰るのじゃ。

「……しかし、エーヴェの昼食が」

 竜さまがぶんぶんと(かぶり)を振った。


 ――システーナもジュスタもおる。ニーノは遊べ。皆もニーノの遊びの邪魔をするでない。(やしき)に戻るのじゃ。

「いや、待て、エーヴェは鍛錬を……」

 また肩口の辺りに来たニーノを、竜さまは押し戻し、そのまま頭でニーノを押しつぶした。


「おお……」

 ぽかんと見上げていると、ジュスタがふふっと笑う。

「ニーノさんはつぶされちゃったから、戻ろうか、エーヴェ」

「ニーノ、つぶされた!」

「昼飯はあたしが作ってやっから」

 跳ねるように立ち上がったシステーナが、隣に立って頭に手を置いた。


 ――ぽはっ! 山の言う通りじゃ! 身が細まる話であったゆえ、ニーノは遊ぶのがいちばんじゃ。ぽはっ!


 お屑さまはとっても愉快そう。

 邸に戻るなら、もう一人声をかけなくちゃ。

「ペロー、帰ります!」

「戻るよ、ペロ」

 ジュスタが声をかけると、ペロは一瞬、固まる。

 竜さまのほうによろよろ。ジュスタのほうによろよろ。また竜さまに近づいたけど、すささっとジュスタのほうに寄ってきた。

 本気を出すと、ペロはびっくりするくらい速い。

「竜さま、ニーノのこと頼みますー」

 あっけらかんと手を振って、システーナがゆうゆうと歩きだした。


 邸への道を歩きながら、起こったことを整理する。

 ときどき見ていた夢は、まどろみどきと呼ばれる場所。普通、竜さま以外はまどろみどきに入れない。

 まどろみどきのことと出入りする方法を学ばないといけない。それで、竜さまが飛んだあと、みんなで古老の竜さまに会いに行くことになった。

 ニーノは前の世界で、まどろみどきに何かして寝てる人に楽しい夢を見せる役目だった。でも、あんまり幸せじゃなかった。

「ニーノ、りゅーさまに会えてよかったね」

 口にして見上げたジュスタとシステーナは、表情が柔らかい。

「そうだな。俺も、竜さまに会えてよかった」

「あたしもー!」

 ――わしもじゃ!

 お屑さまがぴこんっと伸び上がる。

 思わず、にこっとなった。

「エーヴェも! おお! みんな、りゅーさまに会えてよかった!」

 先を進むペロにわーっと駆け寄ったら、ペロは驚いたみたいにすささっと逃げた。


「しかし、えらいことになったな。あたしは竜さまがいれば何でもいいけど、ジュスタは工房どうすんだ?」

「んー、ニーノさんと相談するつもりでしたけどね。あの様子ですから、慌てるなってことでしょう」

 そうか。旅に出たら、道具を作るいろんな物を持って歩くのが大変なんだ。

「ま、そーだな。――おちび、腹減ったか?」

「はい! お腹空いたよー!」

 元気になったばかりで、たくさんややこしい話を聞いて、さっきからお腹がぐーぐー鳴ってる。

「そーかそーか! うまいの食おうな!」

 システーナが作ってくれたのは、サーラスサンド。トウモロコシのパサパサパンの上に焼いた干しサーラスの肉をのせて、干したクレの実二、三粒。薄切りのラオーレをのっけてパサパサパンをのっける。

 サーラスの干し肉は焼くとまだまだ脂たっぷりで、クレの実とラオーレが組み合わさってあまじょっぱおいしい!

「エーヴェ、鍛錬行きますか?」

 頬張ったサンドを噛みくだいて聞くと、システーナは首を振る。

「元気になったばっかだからな。邸にいるこった」

 ――まだ安静なのじゃ! シスのように跳ね回らずに遊ぶのじゃ! ぽはっ!


 安静が似合わない二人から言われる。

「じゃあエーヴェ、お絵かきする! おくずさまをかきます!」


 ――ぽ! (わつぱ)は絵を描けるのか! いったいどうやって描くのじゃ!


 久しぶりに砂絵板を取り出す。お屑さまやペロの絵を描く。思い出しながら、おどろさまやルピタ、お泥さまの座のみんなも描いた。

 ――童はいろいろ思いつくのじゃ! 面白いのじゃ。ぽはっ!

 お屑さまは砂絵板に大興奮だ。絵にもいちいち反応してとっても賑やか。

 ペロは鉢をかぶったり、脱いだり、ガラス球を転がしたり……。とってもマイペース。


 何度も絵を描いては消して、夕陽の時間が近づいた。

 お屑さまと一緒に洞へ向かう。


 カラカラカラ……


 聞こえた音に背筋が伸びた。

「あ! 鳴り竹です!」

 竜さまが鳴らしている!

 洞に駆け込むと、竜さまが鳴り竹に鼻を寄せていた。

 竜さまの頭には、ニーノが姿勢良く座っている。

「……お? りゅーさま、ふくふくしてます!」

 たてがみがふわっと豊かで、きらきらして見える。


 ――エーヴェか。うむ。ニーノが毛並みを()いたのじゃ。


 ふわっと鼻息が上がる。竜さまの頭の上にいるニーノは無表情だけど、ちょっとふくふくして見えた。

 遊ぶはずが竜さまのブラッシングをしているニーノは、とってもニーノ。

 おかしくなって、お屑さまの真似でぴこんぴこんした。

 ――およ? なんじゃ! 童が怪しい動きなのじゃ!

 お屑さまがぴこんぴこん叫んだ。

次話から新章です。


評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。

是非、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 竜さまはニーノを甘やかしたり、遊ばせたりするのが上手。手慣れている感じがします。 ニーノがまだ小さかった頃にああやってふくふくさせたりしていたんでしょうね。ニーノも竜さまのたてがみをすいて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ