パパの場合
「あ、ちょっと待ってください」
僕は、ズボンの後ろポケットに入れていた財布に手をかけてひらく。いつまでも取ってあるクシャクシャのレシートやらどこで発行したか覚えてないポイントカードをかき分け、タヌキカードを探し出し店員に渡した。
「ありがとうございますー。牛乳1点で160円になります。レジ袋の方はどうしますかー?」
「あーお願いします」
しまった!また言ってしまった。ついつい、お願いしますと軽率に返事をしてしまった。レジの店員は、慣れた手つきでレジ袋を取り出して会計の1点につけ加えた。
「お値段変わりまして、163円になりますー」
こうなっては、断りにくい。今更、やっぱなしでは言えない。たかだか、牛乳1本入れておくには大きいレジ袋に
素直に財布から163円を取り出し渡す。
会計を済まし、コンビニから出てすぐにママにミッションコンプリートのラインを送る。
すぐに既読がつき、ありがとうの文字と一緒にハートマークがついた返事が返ってきた。
お気づきだろうが、前半の話のくだりは全て嘘である。
名前の帝城院以外は、妄想。自分が、もしああだったらこうだったらと隙あらば妄想をし仮想世界によく入り浸るのが僕の日課、というより癖。
「さて、帰りますか」と呟き、中古車の軽に乗り込み我が家を目指す。