パパの場合
時刻は午後8時頃。
大都会の街の中を黒い煌びやに輝く車に乗る、ある1人の男が優雅に運転していた。
彼の名は、帝城院。
この大都会の文字通り帝王。生まれながらにしての帝王。帝王になるべくして生まれてきた男。
陽が昇っている間は、大手エリート会社の若きホープとして名を馳せ彼を知らないものはいない。
しかし、そんな彼には裏の顔がある。彼は、今から重要な任務を任されており決して失敗はできない。いや。彼に、失敗などありえないのだ。
しばらく車を走らせた後帝城院は、車を停め目的の場所に着いた。
指定された目標の位置は把握している。後は、ソレに向かってゆっくりと歩を進めていけばいいだけ。
ソレは、逃げれない。逃げることなど不可能。
目標を目視。ゆっくりとソレに手が伸ばし、、、掴み上げる。
完璧。文句の付けようのない無駄のない動き。
そして、最後の仕上げにゲートを超えるだけだ。
「いらっしゃいませーこんばんわー。ポイントカードの方はお持ちでしょうかー?」
「あ、ちょっと待ってください」
僕は、ズボンの後ろポケットに入れていた財布に手をかけてひらく。いつまでも取ってあるクシャクシャのレシートやらどこで発行したか覚えてないポイントカードをかき分け、タヌキカードを探し出し店員に渡した。
「ありがとうございますー。牛乳1点で160円になります。レジ袋の方はどうしますかー?」
「あーお願いします」
しまった!また言ってしまった。ついつい、お願いしますと軽率に返事をしてしまった。レジの店員は、慣れた手つきでレジ袋を取り出して会計の1点につけ加えた。
「お値段変わりまして、163円になりますー」
こうなっては、断りにくい。今更、やっぱなしでは言えない。たかだか、牛乳1本入れておくには大きいレジ袋に
素直に財布から163円を取り出し渡す。
会計を済まし、コンビニから出てすぐにママにミッションコンプリートのラインを送る。
すぐに既読がつき、ありがとうの文字と一緒にハートマークがついた返事が返ってきた。