90
ロイドの町役場に六人の冒険者風の男女が訪れた。彼等は役場に入ると周囲を見渡した後、カウンターに座る職員に話し掛けた。
「済みません、この町の冒険者ギルドって何処に有ります?あちこち見て回ったんだけど見つからなかったもので」
「ああ、この町と言うか、この国には冒険者ギルドは無いんですよ。来る時に見たと思いますが、国境の防壁から内側には魔物も危険な野生生物も居ないんです。討伐以外の仕事でしたらここ、町役場で請け負ってますけど・・・受けて行きます?」
「い、いえ、いいです・・・あの、それじゃあこの町を拠点にしていた冒険者達は・・・・・」
「殆どの方は衛士に志願しましたね。後はやってみたかった職に就いたりとか・・・あ、何方かお知り合いをお探しですか?」
「いえ、そう言う訳ではないです・・・有難う御座いました・・・・・」
彼等は聞きたい事を聞いた後、役場を後にした。
「この手の問い合わせ、増えましたよね?イステリアからの交易商が増えたからですかね?」
「多分護衛の仕事で来たんだろうね。帰りまで数日有るから近場で討伐の常時以来でも受けるつもりだったんじゃないかな?」
「・・・・・これってうちに来る護衛の依頼が割に合わないから受ける冒険者が居なくなるんじゃ・・・・・」
「それは商人次第じゃないかな?うちの鉱石類は他よりも安く手に入るし、持って来た塩は若干高めで買い取ってる。依頼料を少し上げれば受けてくれると思うよ」
「だと良いですけど・・・・・」
「まぁ来なくなったら、うちから行けば良いだけだし、今から心配してもしょうがないよ」
う~ん、やっぱりキースには独立して貰いたい所だな。まぁ最悪塩は俺が転移で買って来るってのも有りだけど、俺が居る事が前提で成り立ってもなぁ。
*
*
*
「ロレンツ、ちょっと二人きりで話したい事が有るんだけど良いか?」
「勿論ですとも。ではこちらへ」
取り合えず直接キースを問い質す前にロレンツに確認しておきたい事が出来たんだよね。
「え~っと、最初に知らない、話せないなら無理に聞くつもりは無いから正直に言って欲しいんだ。お前、キースが売っていた‶薬〟の事詳しく知ってるか?」
もしかしたらだけど、キースは以前自分がしていた悪事のせいで自分には幸せになる資格がないとか思ってるんじゃないかなと。
「ああ、それでしたら戴した物ではありませんよ。彼が扱っていたのは手の施しようの無い方の苦痛を和らげる物に手を加えた物ですから」
かなりヤバい物で知ってても話してくれないかと思ってたらあっさり話してくれて拍子抜けした。
「は?何だそれ?それなら何であいつは衛士に隠れて売ってたんだ?別に後ろめたい事なんて―――」
「違法ですから。薬の売買には許可が必要です。それも治療院、『教会』のです。彼は手に入れた薬を酒で十倍に薄めた物を売っていましたから、二重の違反ですね。まぁ火に掛けて酒精を飛ばした物ですし、原液からしたら副作用も殆ど出ない無害に近い物ですけど」
「そうか、なら・・・ん?・・・・・ちょっと待て、ロレンツ。って事はだ、治療院で売ってる物は副作用が有るって事なんだな?」
「ええ、聞いた話ですが常習性が高い上に数回使用すれば自分が何者だったか忘れる位効くそうですよ」
「あ?何だよそれ・・・何でそんなモンが薬として売ってんだよ!そんなの毒以外の何物でもねぇだろうが!!ッ・・・すまん、怒りを向ける相手が違ったな・・・・・」
「いえ、お怒りはごもっともです。が、最初にも言いましたが、売る相手は『手の施しようの無い者』です。死への苦痛と恐怖を無くす『慈悲の薬』なんだそうですよ。私は飲みたいとは思いませんが」
「そいつは俺も同感だな。で、キースは何処で手に入れてたのか知ってるか?」
「勿論ですとも。ですがブレッド様はもうお気付きなのでは?」
「治療院・・・いや、教会からの横流しか・・・・・」
「です」
ロレンツの話を聞いて今直ぐにでも都市国家アデルを襲撃して生臭坊主共を根絶やしにしたくなったわ。やらんけど。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




